2016年11月に登場し、発電専用エンジンと駆動用モーターによる走りの滑らかさと力強さ、そして燃費の良さで人気の日産の「e-POWER」システム。このe-POWERの発電専用エンジンには、ガソリンエンジンが採用されていますが、ガソリンエンジンよりも熱効率に優れるディーゼルエンジンに置き換えたら、さらなる燃費向上が期待できるのでは、と考えられます。はたして、「ディーゼルe-POWER」が世の中に登場してくる可能性はあるのでしょうか。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:NISSAN、MAZDA、Mercedes-Benz
滅びる前にぜひ検討を!! ディーゼル+e-POWERの組み合わせは最強なのでは??
欧州では、ガソリン車でもディーゼル車でも48Vマイルドハイブリッドが普及
燃費向上のためには最強と考えられるディーゼルエンジンと本格(ストロング)ハイブリッドの組み合わせ。しかし現在、e-POWERだけでなく、トヨタのTHS-II、ホンダのe:HEVなどを含めた、本格的なハイブリッド乗用車のほとんどはガソリンハイブリッドであり、ディーゼルハイブリッドと呼ばれているほぼすべては48Vマイルドハイブリッドです。2011年に発売されたプジョー3008ハイブリッド(日本には未投入)が、ディーゼルの本格ハイブリッドでしたが、これ以降はディーゼル乗用車の本格ハイブリッドは存在していません。
なぜ、ディーゼルエンジンと本格ハイブリッドの組み合わせが、商品化できないのか、それはコストアップと搭載レイアウトの問題の2つの大きな障壁があるからです。
2022年にデビューしたマツダ「CX-60」。3.3L直6ディーゼルエンジンに、48Vマイルドハイブリッドを組み合わせて話題となった
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通常のガソリン車に対して50万円以上コストアップ
ディーゼルエンジンは、ガソリンに比べて圧縮比が高いので頑強につくる必要があるほか、高圧かつ高価なコモンレール噴射システム、パワーアップと排ガス低減のためにVGT(可変ターボ)を装備するなど、ガソリンエンジンと比べると高価な装備が必要となります。さらには、厳しい排ガス規制に適合するため、排気系にはDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)と通常は尿素SCR触媒を装着しなければいけません。これだけで、ガソリンエンジンより15万~25万円はコストアップします。
ここへ本格ハイブリッドシステムを組み合わせると、コストアップは少なくとも標準的なガソリン車に対して、50万以上と予想されます。燃費は当然向上しますが、ディーゼル化による燃費向上とハイブリッド化による燃費向上要因は重複する部分があるので、効果は単純な足し算にはなりません。
搭載レイアウトの難度が高い
コストとともに、大きな問題が搭載性です。頑強なディーゼルエンジンは、ガソリンよりもひと回り大きく、ターボも必須なので、本格的なハイブリッドシステムと組み合わせてエンジンルームに収めるのは困難を極めます。エンジンルームの小さなコンパクトカーであればなおさら。さらに問題となるのは、排気系レイアウトです。
ディーゼルエンジンには、厳しい排ガス規制に適合するために、床下を通る排気系にPMを捕集するDPFと、NOxを還元除去する尿素SCRが必要です。通常DPFは円筒状で、その径はエンジン排気量によりますが、200mm以上必要。しかも、溜まった煤を定期的に800度以上に昇温して除去するので、熱に弱いリチウムイオン電池との距離を確保して断熱を強化しなければいけません。
ディーゼル・プラグインハイブリッドモデル「メルセデスベンツE350 de」。EセグメントのラージFRセダンでエンジンルームが広いことで、ユニットを乗せるパッケージングが成立した
e-POWERなら、課題が軽減できる可能性も
ただ、トヨタやホンダが進めているシリパラ方式のハイブリッドシステムではなく、日産の「e-POWER」やダイハツの「e-SMART」のようなシリーズ方式であれば、市販化できる可能性はあると考えられます。
遊星ギアを使った動力分割機構などで発電用と走行用の2つのモーターを使い分けるようなシリパラ方式に比べ、シリーズ方式は、発電機を回してバッテリーを充電、充電されたバッテリーでモーター走行というシンプルな機構なので、搭載レイアウトの面で有利。
またディーゼルのシリーズ方式(以降、仮に「ディーゼルe-POWERシステム」とよぶ)は、基本的に定点運転ができるので、ディーゼルエンジンの最大の課題である排ガス低減システムが簡素化でき、コスト低減ができる可能性があります。DPFで採取するPM(粒子状物質)や尿素SCRで還元するNOxの排出量は、運転条件によって大きく変動しますが、定点運転であれば、その条件に絞ってエンジンから排出されるPMとNOxを効果的に低減でき、その結果DPFや尿素SCRの負担が減るので、DPFやSCR触媒容量を減らせ、その制御も簡素化できます。
2022年にデビューした4代目エクストレイルは、ディーゼルエンジンの設定はなく、e-POWERとVC(可変圧縮比)ターボガソリンエンジンを組み合わせた革新的なパワートレインとなっている
ディーゼル「e-POWER」が市販化できるとしたら高級SUVか
以上のように、「ディーゼルe-POWER」であれば、レイアウトの課題が軽減され、ある程度コストアップを抑えられる可能性があります。ただし、市販化できるとしたら、コストアップを許容できる車格の高いクルマであり、またDPF+尿素SCRが搭載できる十分なスペースが確保できる、高級SUVのようなモデルに限定されると思われます。
これができるのは、シリーズハイブリッドとディーゼルの両方を開発している日産だけですが、残念ながら日産は現在ディーゼル車からほぼ撤退状態であり、可能性は低いでしょう。ディーゼル車に積極的に取り組んでいるマツダについても、欧州メーカーと同様にディーゼルについては48Vマイルドハイブリッドで対応する方針で進めているので、今後、「ディーゼルe-POWER」が世の中に登場してくる可能性は、残念ながら期待できません。
◆ ◆ ◆
すでに数年前から欧州メーカー、国内メーカー問わずディーゼルから撤退する動きが加速しています。厳しいディーゼルの排ガス規制に対応するためには、新型エンジンの開発や大型投資が避けられないためです。ディーゼルをやめ、一気にバッテリーEVへ向かおうというのが、大半のメーカーの方針のようです。
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みんなのコメント
考えてるのかな?
2000?3000?
e-powerに用いるガソリンエンジンは最大1500cc!
小さな排気量のディーゼルエンジンをわざわざ作って
載せる意味が無い
振動対策も必要になる!
あまりメリット無いと考える!
ディーゼルは燃焼状態を一定に保たないと本領発揮出来ないから、長時間一定負荷で淡々と回してやらないといけない。一定負荷の方は何とななるにしても、街中でこまめに止めるのは苦手だよね。
商品としてはプロ用でないと厳しいだろうな。