アメリカ議会の規制が生んだ911 S 2.4
イタリア車とドイツ車。クルマ好きなら、この2種類にはざっくりとしたイメージを抱かれると思う。一方は、美しい容姿や素晴らしい走りを楽しめるものの、製造品質や人間工学が今ひとつ。他方はその逆、といったところだろう。
【画像】面白いほど異なる個性 アルファ・ロメオ・モントリオールとポルシェ911 S 2.4 同時期のスポーツモデルも 全130枚
しかし歴史を振り返ると、そんな概念を少し破ったモデルもゼロではないと発見できる。モントリオールは、アルファ・ロメオが長年生産してきたどんなモデルより快適で洗練されていた。ポルシェは、飾り気のない911の体験をS 2.4で一層磨き込んでいた。
1972年に911 S 2.4が誕生したキッカケは、アメリカ議会。主要市場のカリフォルニア州を中心に排気ガス規制が強化され、有鉛ガソリンの使用量は削減される方向にあり、ポルシェにはパワーを維持する改良が求められた。
そこで、排気量が2195ccだった水平対向6気筒エンジンは、2341ccまで拡大される。圧縮比は9.8:1から8.5:1へ落とされ、窒素酸化物の排出量を削減。必要なオクタン価が
小さくなり、燃え残りの炭化水素も減らされた。
1970年代に入り、大排気量のV8エンジンが馬力を削られる中で、ポルシェは有能なユニットを完成。最高出力は10ps、最大トルクは1.6kg-m追加され、低回転域での扱いやすさは向上していた。
トルクの増大によりトランスミッションの強化も必要になり、それまでのタイプ901ユニットに代わって、915ユニットへ置換。1969年にホイールベースは延長されていたが、S 2.4ではリアホイールも6.0Jへワイドになった。
動力性能と操縦性が大幅に進化した901型
ところが、そんな喜びも束の間だった。更に厳しい排気ガス規制へ合わせ、排気量は2.7Lへ拡大されるが、最高出力は15psダウン。衝突安全規制も強化され、細身のクロームメッキ・バンパーは、無骨な通称「アコーディオン」バンパーへ変更された。
ポルシェは、BMWやMGなど同時期のライバルより、巧妙にアメリカの新基準へ対応したといえる。それでも、1973年までの約2年間に提供されたS 2.4は、901型では最高傑作の1つとしてみなされるようになった。
この911 S 2.4は、エンジン以外にも改良を受けていた。フロントスカートが与えられた、初の量産911でもあった。
ポルシェの技術者は、この頃から空力特性へ注目。ドイツ・シュトゥットガルト大学の風洞実験施設を利用し、模型のバンパーへテープで貼った紐の流れを見ながら、形状を詰めていった。
フロントスカートは後付けではなく、ベース部分のバランスパネルから新規にプレス。空気抵抗を示すCd値は、0.41から0.40へ減っただけながら、フロントのリフト量は83kgから46kgへ大幅に抑えられた。
かくして、既に10年近い歴史を有していた901型は、見た目に大きな違いがなかったとしても、動力性能と操縦性が大幅に進化していた。高い製造品質だけでなく、地味なインテリアと少し不完全な人間工学なども、そのままといえたが。
製造品質に優れる異端的なモントリオール
今回ご登場願った911 S 2.4からも、そんな事実を感じ取れる。ストロークが長く下向きに踏み込む、ブレーキとクラッチのペダルには慣れが必要。ステアリングコラムは固定され、ドライバーに対して位置が高い。
コクピットは広いとはいえず、身長が180cmを超えると窮屈。レカロのスポーツシートが今回の車両には組まれており、そんな印象が強い。筆者はぎりぎり170cm台だが、ダッシュボードを見下ろすような感じ。天井との距離には余裕があるけれど。
対するモントリオールは、アルファ・ロメオの歴史の中でも異端的だろう。デザインが奇抜だっただけでなく、クラシックなイタリア車でありながら製造品質に優れ、美声を響かせるエンジンは低回転域から粘り強い。
大西洋の向こう側で強化される排気ガス規制を、モントリオールは相手にしていない。その頃、アルファ・ロメオは北米市場で大きな存在感を誇っていたが、V8エンジンを載せているにも関わらず、アメリカで正式に販売されることはなかった。
このV8エンジンを開発したのは、同社のレーシング部門、アウトデルタ。製造コストは量産ユニットとしては高く、特性も公道向きとはいえなかった。当初は2.0Lの小排気量で、レーシングカーのティーポ33に積まれデビューしている。
ランボルギーニ・ミウラと似たボディ
チェーン駆動のオーバーヘッドカムと、フラットプレーン・クランクにドライサンプ潤滑を採用。オーバスクエアなシリンダーの圧縮比は11:1と高く、ツインスパークで、点火コイルは4基備わった。排気ガス規制への準拠など、不可能に近かった。
とはいえ、アルファ・ロメオはモントリオールへの搭載に合わせ、賢明な改良を施している。排気量は2.6Lへ増やされ、点火プラグはシリンダー毎に1本へ。滑らかに回るクロスプレーン・クランクが組まれ、機械式燃料噴射システムも新規に開発された。
フロントがダブルウイッシュボーン式のサスペンションは、当時の主力車種、105シリーズのアルファ・ロメオ・ジュリアから借用。同じく、リアはリジッドアクスルだ。ステアリングラックも同様だが、再循環ボール式と、当時でも新しい機構ではなかった。
新鮮味の薄いシャシーを補ったのが、大胆なボディ。1967年のカナダ・モントリオール万博で発表されたコンセプトカーそっくりなスタイリングを手掛けたのは、マルチェロ・ガンディーニ氏率いるベルトーネ社だ。
ランボルギーニ・ミウラとは、Cピラー部分が似ている。後端が立ち上がった、ブルボーン・ドアも、共通する特徴だろう。塊感が強く筋肉質でありながら、官能的で美しい。911 S 2.4と並ぶと、ハッとするほどモダンに見える。
この続きは、アルファ・ロメオ・モントリオール ポルシェ911 S 2.4(2)にて。
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