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スーパーGT2018富士スピードウエイ公式テスト すべてのベストパフォーマンスを探し求めていく難しさと面白さ BRZ GT300

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スーパーGT2018富士スピードウエイ公式テスト すべてのベストパフォーマンスを探し求めていく難しさと面白さ BRZ GT300

2018レースカーから探るSTIの先端技術 Vol.11

4月7日、8日の岡山国際サーキットでのスーパーGT選手権開幕戦に先立ち、第2戦が行なわれる富士スピードウエイで、公式テストが行なわれた。そこでテストされたSUBARU BRZ R&D SPORTのテスト状況をお伝えしよう。<レポート:編集部>

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いよいよ、シーズン開幕の迫ったスーパーGTだが、今季のBRZ GT300マシンは設計思想の変更に伴い、キャリーオーバーのマシンでありながら、多くの部分を一新している。そのため、マッチング、熟成させることに時間を必要としてきた。

それは2017年シーズンはトップスピード不足による苦しいレース展開だったというのが記憶に残る。そこでコーナリングマシンでありながら、トップスピードでも引けを取らないマシンづくりというのが今季のテーマだ。もちろんエンジン出力も含め主催者によるBOP(性能調整)が行なわれるため、極端な変更ができず、小さな改良を積み重ねることで全体の底上げをしていくことになる。

■BRZ GT300マシンの底上げ

トップスピードを上げるには空気抵抗を減らすことが重要で、今季のBRZはエアロを変更している。フロントカウル、リヤフェンダーを変更し、その変更にともないウイングやフロントリップ、カナードが変更されている。こうした空気抵抗の低減はダウンフォースの低減ともイコールになりがちで、マシンの特徴であるコーナリングスピードのダウンにもつながりかねない。今季のBRZの最大のテーマがそこにあるわけだ。

トップスピードがもっとも速い富士スピードウエイでのテストでは、今季のテーマが如実に表れるサーキットでもある。また、前回の公式テストの岡山では、マイナートラブルもあり、予定していたタイヤテストの項目が完了できなかったところもあり、今回のテストではその目的も達成する必要がある。

空気抵抗、ダウンフォース、タイヤテストといった項目のすべてを熟成し、直線もコーナーも速いBRZへと導くにはすべての部位がマッチングし、ベストなパフォーマンスを出す必要がある。今回の富士スピードウエイでは、本番用のセッティングを探すことを主眼に、新しい構造のタイヤ、コンパウンド違いをテストし、ロングランをこなすというタスクでテストに臨んだ。

また、今季はエンジンの出力調整方法が主催者のGTAから変更が伝えられ、ブースト圧コントロールされることになった。前回の岡山では新制御プログラムが間に合わず、旧来のエアリストリクターでのテストを行なっていたが、今回のテストでは新制御プログラムを搭載してテストができた。

この性能調整は本来JAF-GT300クラスにはない性能調整の項目で、過給圧制御はFIA-GT3に適用されるものだったが、今シーズンからBRZにも適用されることになった。それは性能調整方法の統一を図る狙いがあり、吸入空気量制限のそれぞれの調整方法による有利不利をなくすことが狙いで、より性能の均衡を図るということだ。

こうして新制御となったEJ20型ターボエンジンは、今回がシェイクダウンであり、どんな状況でもオーバーシュートは違反とする規則が守られているのかというテストも兼ねていた。過給圧オーバーは例えばタイヤの空転、シフトアップの瞬間などで起こるが、そうした瞬間的なものでも違反とされるので、エンジニアには本当に細かい制御プログクラムの作成が要求されているわけだ。

ちなみに、トランスミッションは岡山と富士ではコースのキャラクターが全く異なるため、それぞれのギヤ比に変更する必要がある。今回のギヤ比は実績のある2017年の富士用のギヤ比にしてテストしていた。

■セッション1

さて、土曜日午前中のテストではやはり、ロングランテストがメインだ。特に岡山ではテストができなかった新しい構造のタイヤテストを予定していた。そして空力とダウンフォースの戦いも継続してテストされており、ベストマッチングを探すことの難しさを感じさせるものだ。

まず2月の富士でのシェイクダウンのときからの変更点としては、フロントのカナードを1枚から2枚に変更し、フロントリップに大型のタイプを採用。リヤウイングは2016年に採用していたタイプを装着してのテストだ。リヤウイングは数種類あり、ウイング自体の大小もあるが、見た目で判断するのは難しい。またステーでも2タイプあり、ストレートタイプとスワンネックと呼ばれる曲線のステーの2タイプがある。こちらはひと目で見分けができるほど形状が異なっている。

こうしたセットでのテストでは、トップスピードではGT-3よりは数キロ届かないものの、まずまずの最高速を得、272km/h前後だった。また、タイヤでもある程度の目途がつき、戦略を立てる上での足がかりとなるテストになったという渋谷総監督のコメントがあった。

■セッション2

フロントフェンダー後端の形状変更にトライ。ダウンフォースにもっとも影響するポイントで、ここをフラットしてフロントタイヤに荷重がかかるように変更。また、タイヤハウス内後ろ側のパネルは装着した状態でテストしている。これもタイヤハウス内の乱流でのリフトを避け、接地性を高めアンダーステアを消すための変更だ。

これらはタイヤとの兼ね合いがシビアに影響しあうため、また、摩耗状況でもアンダーステアのフィールも出るわけで、エアロのベストを探す難しさを現している。もちろん、ドライバーはダウンフォースが多ければ多いほど安心感があり、攻撃的な走りができるわけだが、ドライバー自身も自覚しており、マッチングポイントを探すことに注力していた。

また、ここではエンジンの新制御プログラムの確認も行なわれており、マクラーレン製ECUでは、エンジン回転数、燃料噴射、点火タイミング、ブースト制御、バルブタイミング制御、アンチラグなどの制御が可能で、こうしたデータはピットインごとにPCと接続され、データチェックを受けていた。

だが、セッション終了間際にトラブルが発生し、30分を残してテストを終了している。こちらはエンジン本体のトラブルで、翌日のテストにはスペアエンジンに乗せ換えてテストすることになった。トラブルの原因は現場ではわからず、STIの本社工場に持ち込まれ原因が究明されることになった。

ちなみに、トラブルが出るまでにタイヤテストは都合4パターンのテストができており、特性もだいぶつかめてきたという渋谷総監督からのコメントがあった。総監督によれば、「明日は、エンジンは換装しますが、予定どおりタイヤテストをします。特性もだいぶわかったので、レース本番を見据えたロングランが重要で、いくらグリップが良くてもすぐに性能が落ちてしまったらレースでは使えませんから、タイヤの摩耗やグリップ性能の低下レベルなど、細かいところまで確認したいと考えています」

一方空力では「タイムはそこそこなんですが、走行後のタイヤを見るとあまりいい状態とはまだ言えないので、そのあたりを明日はしっかり対応していきたいと思います」というコメントだ。これは、タイヤにかかる荷重が想定している状況とは異なり、「外側(外輪)のタイヤ使えてないんです」という。いずれにしてもメカニカルグリップでもダウンフォースでも改良の余地が残っているということだ。

■セッション3

ドライバーの山内、井口ともに30ラップ以上の走行ができ、目的だったロングランテストができた。乗せ換えたエンジンは18年仕様ではなく17年仕様に18年用の要素をいくつか投入にしたタイプのエンジンということで、耐久性にも問題なくテストをこなしていた。実績のあるEJ20型の底力か。

ドライバーの山内英輝からはニュータイヤのいいところがつかめたというコメントがあり、明るい材料だ。また井口卓人は旧タイプのタイヤでロングランを走り、タイムは安定して各セクションでラップを刻んでいた。そして、午後は違うタイプのタイヤテストをする予定ということで、ひとまずの狙いはクリアした印象だ。

また、外輪タイヤの荷重を増やすためにシャシーの変更を行ったが、山内選手からは「だいぶ良くなったので、こういう感じになるならもっとやってほしいですね。去年は第3セクターで勝負できる場面もあったので」ということだった。つまり、中高速コーナーが続く第3セクターでの挙動が上向きになったということを意味している。もちろん、トップスピードを落とさずに、だ。

一方、井口選手からは「最後のセッションはダンパーを少し柔らかくしてもらうことをお願いしました。アンジュレーションで少しマシンが暴れる状況があったので、お願いしました」ということだ。

■セッション4

渋谷総監督からは「トップスピードは昨年よりはいいです。またダウンフォースはドライバーにとっては、多い方がいいのですが、やはりバランスポイントが難しいですね。今回のテストではタイヤテストが当初の予定どおりこなせたのは良かったです。データも取れましたし、これから開幕に向けてマシンのメンテナンスをしっかりやりたいと思います」という。

こうして公式テストは終了したが、空力パーツはサーキットや四季によっても変化するため、最終的なセットというのは都度変更されて戦っていくのだろう。また、そうした変更に伴い、サスペンションの変更もあり、ギヤ比も変更されていくわけで、スバル/STIとR&D SPORTのタッグでベストなマシンづくりを目指していくことになる。

今週末開幕する岡山国際サーキットでは、こうしたマッチング変更の他にブレーキも変更されてくると想像する。今回の富士でのテストでもAP製の17年と同サイズのローター&キャリパーを使用していた。BRZ GT300ではもう少しブレーキパワーが欲しいという要件は変わらないため、ブレンボ製にトライするもコントロール性などでAP製に戻している。ただ、サイズアップができていなかったので、このあたりも変更されるだろう。ちなみにブレーキパッドはPFC製を採用している。

そしてエンジン制御プログラムは新制御に変更され、従来の空気流入量制限からブースト圧制御への変更で何かが変わるのか?そのあたりも確認してみたい。

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*取材協力:SUBARU TECNICA INTERNATIONAL

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