1998年から2002年まで販売されていた、日産「R34型スカイライン」。終売から20年以上が経つというのに、いまも圧倒的な支持を集める国産スポーツモデルだ。なかでも「R34型スカイラインGT-R」は、安くとも1000万円オーバーという、驚くような高価で取引されるほどの人気ぶり。なにがそこまでファンを惹きつけるのか!?? R34スカイラインの魅力をいまいちど振り返ろう。
文/吉川賢一、写真/NISSAN
わずか5年で消えた「R34スカイライン」が700万円以上!?!? クルマ好きを惹きつける魅力って何よ
■軽快で俊敏なハンドリングが魅力の反面、弱点も多かった
R34スカイラインは1998年5月に登場。角が丸められたR33型のデザインとは対照的に、R34型では角を強めたボクシーなデザインへと一新された。
R33で伸ばしたホイールベース・全長も見直される(ホイールベースは55mm、全長は75mmそれぞれ短縮)など、運動性能を突き詰めたパッケージングとなって登場した。
エンジンは2.5L 直6ターボエンジンを基準とし、GT-R用には2.6L 直6ツインターボのRB26DETTを用意。
スムーズでトルクフルなエンジンと、ボクシーでスポーティな見栄えで、歴代スカイラインのなかでもこのR34が好きだ、という人は多くいることだろう。
R34スカイライン最大の魅力は、強靭なボディからくる「ハンドリングのよさ」だ。
R34のハンドリングが生まれた背景について、以前取材したスカイラインのテストドライバーによると、R34開発の際、当初の実験車の走りには、超高速での操舵修正やコーナリングシーンでの応答の遅れがあったそう。
土台となる車体剛性の不足が原因だったそうだが、HICASやマルチリンクサスペンションといった、走りのポテンシャルを上げるシャシーアイテムのチューニングで対応できる範疇ではなく、ベースの車体を見直す必要があったそうだ。
そのため、開発メンバーは、さまざまなボディ補強パーツを足しては走ってを繰り返し、ステアリング入力に対して応答遅れのないリニアなハンドリング特性になるまで追求。
その結果、俊敏なハンドリングをもった一級のスポーツモデルに仕上げることができたという。
ベースのスカイラインが、このように鍛えられたことで、GT-Rはさらに俊敏なハンドリングモデルとなり、いまも多くのファンを魅了する名車となったのだ。
しかしながら、R34には弱点も多く、たとえばR34のボクシーなデザインはどこか古臭く、先代のR33スカイラインの滑らかなボディラインのほうが新しさはあったように思う。
また、直6エンジンは高いパフォーマンスの反面、燃費が悪く、内装も、当時のライバルだったマークIIなどに比べると質素。
また、R33に対してホイールベースを短くしたことで、R34はミドルクラスの4ドアセダンとしては後席が狭かった。
4ドアセダンと(GT-Rを含む)2ドアクーペを同じシャシー(セダンとGT-Rは同じ、ホイールベース2665mm)とする「縛り」があったためだが、売れ筋となるべきだったセダンの魅力が少なかったのは、大きな弱点であった。
結果的にR34は、R33に対して、大きく販売台数は落ちてしまっていた。
■排ガス規制と日産の経営改革の波をうけ、わずか5年で販売終了に
R34スカイラインは、2000年の排ガス規制をクリアすることができず、2002年に生産終了となった(総販売台数:およそ6万4000台(GT-Rは11000台))
R34スカイライン(含GT-R)が2002年に廃止となった直接の理由は、平成12年(2000年)排ガス規制をクリアすることができなかったことだ。ちなみにS15シルビアも同タイミングで廃止となっている。
排ガス規制に対応するように、エンジンや触媒等の改良もできたはずだが、当時の日産は、倒産スレスレ。R34スカイライン自体も、人気車ではあったが、会社を立て直すほどの売り上げは見込めなかったのだろう。
日産は、工場売却や人員整理、また国内専売車の統廃合や海外市場を見据えたV6エンジンへの切り替えなどの改革を行うことでなんとか経営を維持することができた。
しかし、前述の排ガス規制も重なったことで、R34はわずか5年間という短いモデルライフとなってしまった。いまとなってみれば大変悔やまれることだ。
このR34の後継として2002年に登場した、V6エンジンを搭載したV35型スカイラインは当時、従来からのスカイラインファンに酷評されてしまっていた。
そのいっぽうで、V35は北米向けインフィニティブランド「G35」として爆売れし、現地では「BMW3シリーズイーター(BMWの顧客をぶんどった)」といわれたほど大ヒットしている。
V35型が海外で売れてくれたことで、日産が苦しかった時代を耐え忍ぶことができたことは、日産ファンとしては忘れてはならないことだと思う。
■アメリカで日本のスポーツカーが人気となっていることに加えて、輸入規制をクリアしたことでさらに人気に
冒頭でも触れたが、R34スカイラインの業者向けオートオークションの相場は高騰しつづけている。
GT-Rでは安くても1000万オーバー、なかには4000万円を超えた落札もあるほどだ。中古車サイトでの売値相場は3000~5000万円や応談となっている。
R34GT-Rがこれほど高額となってしまった背景には、人気漫画「頭文字D」や映画「ワイルドスピード」などの影響で、アメリカで日本のスポーツカーが人気となっていることがある。
また、2023年でいえば、R34がアメリカの25年ルールをクリアした。
25年ルールとは、「アメリカ合衆国の安全基準を満たさないクルマは輸入できない」というアメリカの輸入規制の例外として、「製造から25年以上経過したクルマであれば、右ハンドルでもそのまま走っていい」とされていることだ。
アメリカにおける輸入規制が取り払われて自由に輸入できるようになったため、高額になりすぎたGT-Rだけでなく、25GTターボにおいても、人気が高くなってきている。
日米のバイヤーの間では、むしろいまは、25GTターボのほうにより関心が集まっているそうだ。
25GTターボの中古車相場は、365万円~700万円(フルカスタム車は除く)。GT-Rと比べれば現実的な価格ではあるが、20年以上まえのクルマだと考えるとかなり高額だ。
アメリカにおける日本のスポーツカー人気はまだまだ続くと思われ、R34スカイラインは今後さらにますます手に入りにくいクルマへとなっていくだろう。
日本が誇るスポーツカーが海外で評価されることは嬉しいことではあるが、庶民には手が届かなくなるほど高額になっていくことを考えると、すこし残念に思う。
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