ヨコハマの2つのスタッドレスタイヤ その特徴は?
SUV人気はとどまることを知りません。
【画像】SUVに装着するスタッドレスタイヤはどれがいい!? 画像で見る(36枚)
2023年のブランド通称名別順位(自販連調べ)を見てみると、11位のトヨタ「ハリアー」、12位のトヨタ「RAV4」など、ベスト20のうち4車種しかSUVがランクインしていないように見えますが、1位のトヨタ「ヤリス」には「ヤリスクロス」が、2位のトヨタ「カローラ」には「カローラクロス」が含まれているので、実質はもっと多くなっています。
その結果、2023年の国産SUV新車販売は87万2788台、前年比で133%と右肩上がりで伸びています。
これからやってくる冬。人気のSUVにはどんなスタッドレスタイヤを選べば良いのでしょうか。2024年2月、北海道・旭川市にある横浜ゴム(ヨコハマ)の冬用テストコース、TTCH(北海道タイヤテストセンター)にて勉強会が開催されました。
SUVは、セダンなどに比べるとクルマが重いという特徴があります。そのため、氷雪路ではスタッドレスタイヤの性能がより重要となってきます。
ヨコハマのスタッドレスのなかでも、「iceGUARD 7(アイスガード7)iG70」と「iceGUARD SUV G075(アイスガードSUV G075)」がSUV対応のサイズを用意しています。
アイスガード7は、2021年9月に登場したおなじみのスタッドレスタイヤです。13インチから21インチ、30シリーズから80シリーズまで豊富なサイズを用意しているのが特徴です。
一方のアイスガードSUV G075は、2016年7月に登場したアイスガードブランド初のSUVスタッドレスタイヤです。こちらは15インチから23インチ、30シリーズから80シリーズまで全102サイズ、LTサイズも用意されます。
こうした結果、ふたつのスタッドレスに重複するサイズが生まれました。つまり10サイズでは、アイスガード7、アイスガードSUV G075を選べるという形になっています。
ふたつのスタッドレスにはどんな違いがあるのでしょうか。今回、同サイズ(225/65R17 102Q)を装着した同じクルマ(トヨタRAV4・4WDモデル)で試走しました。
まずは屋内氷盤試験場で縦方向のブレーキ性能を比べます。
この氷盤試験場は2018年1月から稼働したTTCH自慢の施設で、2020年には表面温度をマイナス10度から0度にコントロールできる国内最大級の冷媒装置が設置されました。普段はさまざまな条件下でテストし、安定したデータを取ることができる施設だといいます。
この日の氷面温度はマイナス3度に設定され、30km/hまで加速しパイロンの場所でブレーキング、ABSを効かせて停止するという形です。
アイスガード7はブレーキペダルの踏みはじめからググッと制動が始まる手応え(足応え?)を感じます。歩くこともままならない氷の上にもかかわらず、実際に「こんな手前で止まる?」と思わず声にしてしまうほど制動力に優れています。
対してアイスガードSUV G075を装着したRAV4は、こちらもイメージ通りきっちりと止まってくれます。ただしアイスガード7のときに感じた「こんなに手前で!?」という驚きはなく、3度挑戦しましたが3度ともアイスガード7の制動距離が短くなりました。
続いて屋内氷盤旋回試験場で、アイス路面での横グリップの違いを体感します。
こちらの施設も2023年1月に稼働をはじめた新しい屋内氷盤旋回試験場で、屋内でアイスバーンでの実車のコーナリングテストが行える貴重な場所となっています。
まずはアイスガード7から。タイヤが氷を掴む感覚があり、加速が進んでいきます。旋回を続けると滑り出しますが、穏やかでコントロールがしやすいというのが感想でした。さすがは、従来品よりも氷上性能を大幅に向上させたアイスガード7だけのことはあります。
続いて同サイズのアイスガードSUV G075を履いたRAV4で挑みます。加速するとどんどんとクルマが外へと膨らみだし、コントロールは難しく感じます。アクセルワークで曲がろうとしても滑りが大きく、滑り出しもスパッと素早く来てしまうので、きれいに1周するのは困難な状況。ラップタイム自体もアイスガード7が19秒台だったのに対し、アイスガードSUV G075は21秒台と大きく差が開きました。
スノー路面ではどちらも優れた性能を見せた
続いて同じクルマで屋外の圧雪路に移動して、スノー路面でのハンドリングやブレーキングを試します。まずは圧雪路で50km/hから停止までのブレーキングを見てみます。
ここで「?」が頭に浮かんできます。先ほど行った氷路面では、アイスガード7の優位性は体感上も結果も明らかだったのに、雪上ではアイスガードSUV G075の良さを感じます。
実際走った感覚だと、アイスガード7と変わらないブレーキングで、制動距離もその手応え感もほとんど違いを感じませんでした。発進時のグリップにも変わらず、なにも気にすることなく普通に走ることができます。雪上スラロームコースでもきちんと曲がり、安定の走りが可能です。
じつはこれまで何度か新スタッドレスタイヤの試走会で走行した経験があるのですが、その際、毎回「タイヤの進化はすごい」と実感してきました。そういう経験から、2016年に登場したアイスガードSUV G075と2021年登場のアイスガード7には、すべてにおいて大きな性能差があるという先入観がありました。
だからこその驚きでしたが、「氷上性能ならアイスガード7、雪上性能ならアイスガードSUV G075」という単純な話ではありません。アイスガード7の雪上性能もしっかりしており、同等以上に走れることを体感しました。
ではどうしてこのような結果になるのか、試走を行ったあとで横浜ゴムの技術者と答え合わせがありました。
採用されたトレッドゴムがアイスガード7は新世代の「ウルトラ吸水ゴム」、アイスガードSUVは「スーパー吸水ゴム」という違いは大きいのですが、トレッドパターンでみると溝深さと溝面積比、エッジ量に違いがあります。
アイスガード7の接地面積は、アイスガードSUVを100とすると109%となっています。このためゴム表面が路面と密着する力=凝着摩擦力が大きく、とくにアイス路面で効果を発揮します。さらにアイスガード7のエッジ量も103%と多く、エッジ効果によりアイス路面やスノー路面での性能を引き出しています。
一方でアイスガードSUV G075の溝深さは、アイスガード7の8.8mmに対し10.5mmと大きく、溝面積比もアイスガード7の84%に対し100%と多くなっています。このため雪柱せん断力という、踏み固めた雪の柱を排出する力がアイスガードSUVは高いため、とくに深雪やシャーベット路面に強いということを教えてもらいました。
また溝深さが大きいというアイスガードSUVは、ライフ性能が高いということにも繋がります。
ほかにもさまざまなプログラムがありました。
まずはEVのBMW「iX3」と内燃エンジンの「X3」の圧雪路でのハンドリング比較。こちらは245/45R19 102Qという同じサイズのアイスガード7を装着した車両重量2トン超え(2030kg)のEV、iX1と、360kg軽量(1770kg)のX1を試します。
どちらも安心してスノー路面を走行できるのがポイントで、iX1の重量を受け止めてきちんと走り、曲がり、止まってくれます。一方軽量とはいえ1770kgのX1ですが、こちらもiX1同様、ふつうにドライブすることができることに好感が湧きます。セダンなどよりも重量が重く、重心高が高いSUVでもきちんとグリップしてくれることが、安心感に繋がります。
最後は日産「フェアレディZ」に装着したアイスガード7で圧雪路を走行。サイズはフロント255/40R19 100Q、リア275/35R19 100Qという超扁平幅広サイズで、トレッドパターンはセンターリブが1本加えられたパターンナンバー「IG70A」というもの。
後輪駆動の大パワースポーツカーはなかなかに手強く、アイスガード7の優れたグリップ力を持ってしても簡単に滑り出してしまい、うまく運転することは難しい。そこをコントロールするのはテクニックよりも「心の強さ」…つまり限界以上にアクセルを踏まない勇気やドリフトをきれいにキメたいという昂りを抑える感情が必要だと感じました。
※ ※ ※
アイスガード7はSUV専用スタッドレスタイヤではありませんが、乗用車だけでなくSUVにもきちんと対応、アイス路面でもスノー路面でも安心感を持って走れるタイヤということを実感しました。
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みんなのコメント
SUV車がいくら流行りとは言え、乗用車向けタイヤの方がSUV車向けより需要が格段に大きいからでしょうが、モデルチェンジ間隔が短くてほぼ毎年マイナーチェンジ。
ここでも絶対的違いの素材の進歩・差異が大きく影響。
なのでメーカーhpでもSUV車専用設計と謳いながら多くは乗用車向けの方が日常使いでは比較性能が上との結果が多い。
雪山ならSUV向けだろうが、降雪地域でも深雪よりシャーベット・アイスバーン多い市街地中心ならSUV車でも乗用車向けの選択が無難みたいですね!
自分はほぼ降雪ない大都市走行ばかりなのに、「SUV車専用設計」の文字につられてエクストレイルに毎回SUV車向けで買い換えしてしまってます。(笑)
サイズ面含めてキチンと専用化してくれれば悩まず済むのに…