■400馬力!スバルの斬新な「スポーツカー」
国内外で開催されるモーターショーなどの自動車イベントでは、発売間近のニューモデルや未来を予感させるコンセプトカーが展示されます。
その中には、発売を求める声が多く寄せられたにも関わらず、様々な事情から市販化の叶わなかった儚いモデルも多く存在。
かつてスバルが発表した「スバルB11S(ビー・イレブン・エス/以下、B11S)」も、まさにそのような一台でした。
【画像】めちゃカッコいい! これがスバルの「斬新スポーツカー」です(29枚)
B11Sは、2003年3月にスイスで開催された「ジュネーブ第73回インターナショナルモーターショー(以下、ジュネーブショー2003)」でスバル(当時は富士重工業)が初公開した、新ジャンルの「グランユーティリィティツーリスモ」と定義するコンセプトカーです。
スバルは同車について「スポーティな走り、快適性、機能性、そして美しさを追求したモデル」と説明。
同社の特徴的なテクノロジー「水平対向エンジン」と「シンメトリカルAWD」による優れた走行性能に洗練されたデザインを組み合わせ、充分な居住空間を確保するパッケージングを実現した4ドアクーペだといいます。
そんなB11Sは、なんと当時のスバルの社長だった竹中恭二氏自らがコンセプトの立案に参画。
さらに、デザイン部門の出身としては初めて執行役員に抜擢されたスバル商品企画本部副本部長兼デザイン部長の杉本清氏がリーダーシップを発揮し開発するなど、相当に気合の入った本気度の高いモデルとなっていました。
パワーユニットには、走りの愉しさと環境性能を両立した新しい水平対向6気筒エンジンを搭載し、ツインターボを装着。
最高出力400馬力・最高トルク56.1kgfmという圧倒的なパワーを発揮しつつ、路面状況に応じて前後間のトルク配分を最適に自動で制御することで、高速走行から低中速域まで扱い易く安定した走行性能を実現します。
エクステリアは、流麗な曲線で構成されたエレガントなクーペスタイルとなっていますが、大人4人がゆったりと乗車することが可能。
フロントマスクには、ジェットエンジンのエアインテークと翼の広がりを表現した存在感のある造形「スプレッドウィングスグリル」が取り入れられ、スバルのルーツが航空機にあることを示しています。
また見どころとなるのが斬新なサイドドアの構造で、前後ドア間に支柱のない「観音開き式」を採用し、後部座席へのスムーズな乗降を可能にすると同時に広々とした室内スペースの演出にも貢献。
さらにこの開放感には、スモークガラスを用いた大型グラスルーフも一役買っており、後部座席からはオープンカー感覚を楽しめます。
スバルはこのグラフルーフのデザインについて「日本の伝統的な“傘”」から着想を得ていると発表。
スバルブルーに統一したインテリアに採用されている、日本古来の室内装飾を思わせる繊細な仕上がりと合わさって、B11Sから醸し出される日本独自の美意識に繋がっているということです。
※ ※ ※
このように、世界の名だたる高性能スポーツカーにも匹敵する走行性能と運転を愉しさ、そして快適かつ実用性の高いキャビンを兼ね備えたB11Sは、ジュネーブショー2003での発表直後から日本のみならず世界各国で話題を呼びましたが、残念ながら市販車として世に出ることはありませんでした。
しかし同車によって、スバル製のスポーツクーペを求めるユーザーが多く存在することが認知されたこともあるのか、2012年にスバルは水平対向エンジンを搭載したスポーツクーペ「BRZ」を発売。
BRZは、B11Sのような特徴的なドア構造や出力などは備えておらず、そのような意味では2台は全く異なるモデルと言えますが、運転の愉しさと4人乗れる実用性の高さという共通点があるといえるでしょう。
なお、BRZは、現在2代目モデルへとバトンタッチしており、多くのスバルファンに愛されています。
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