フルモデルチェンジしたトヨタの新型「クラウン・スポーツ」の魅力はいかに? 小川フミオがリポートする。
スポーツならではのキャラクター
新型クラウンは大胆にも、4つのバリエーションが設定されている。そのなかで、走りの楽しさを提供しようというのがクラウン・スポーツだ。
2023年10月、クラウンシリーズに追加されたクラウン・スポーツは、先行して発売されたクラウン・クロスオーバーと、基本プラットフォームを共用。フロントエンジンとモーターを組み合わせたドライブトレインも同様だ。
ホイールベースは、よりスポーティ性を追求した結果だろう、2770mm。クラウン・クロスオーバーの2850mmよりは短い。
ホイールベースを持つプラットフォームもクロスオーバーと共用。まず、クロスオーバーと同じスペックスの2.5リッターエンジンを使ったハイブリッドが発売され、追ってプラグイン・ハイブリッドが登場する。
今回乗ったのは、スタンダードなハイブリッドモデル。スタイリングは、クロスオーバー型のハッチバックだ。
クロスオーバーというのは、ちょっとルーフの前後長を伸ばすとともに、リヤクオーターウインドウを設けてステーションワゴン的な雰囲気もだしている。
「ハンマーヘッド」と、トヨタのデザイナーが呼称する縦幅の狭い灯火類と、大きく見えるグリルを中心としたフロントのエアダムによる、2階建てのフロント部分がまず目をひく。
全体を見ると、21インチ径のホイールと組み合わせたタイヤの存在感と、力強く張り出したフェンダーなど、官能性を強く意識させるデザインが、スポーツならではのキャラクターになっている。
ハリアーの兄貴分ドライビングの印象は、たしかに「走りを意識した」と述べる、開発者の言葉がすぐ頭に浮かんだ。
前輪駆動をベースに、後輪を電気モーターで駆動するオンデマンド型4WDシステムは、負荷や走りかたに応じて前後の駆動配分を自動調整する。前輪への100%のトルク配分から、後輪へ80%まで、かなり幅が広い。これで、コーナリング性能などの向上を狙っている。
スポーツにはさらに「DRS(ダイナミック・リアステアリング)」という後輪操舵機構がそなわる。高速道路では前輪と同位相(同じ方向)に後輪が向くことで仮想ホイールベースを長くして、レーンチェンジの際などの走行安定性を高める。
いっぽう市街地の十字路やコインパーキングなど狭めの場所では、前輪とは逆の方向に後輪が向くことで、小まわりが効く。メルセデス・ベンツ車のように極端なほど角度がつくことで慣れないと焦る、ということもなく、操縦しやすい。
スポーツのよさは、安定した走行性にあるようだ。「クラウンというブランドのイメージを飛び越えないような設定にしました」、開発エンジニアが私に教えてくれたとおりで、適度にスポーティなのだ。
ハイブリッドゆえ電気モーターのトルクを利して、発進加速はよい。そこは、スポーツのイメージどおり。そのあとの加速性もいいけれど、すばやく加速するよりも、ジェントルにアクセルペダルを踏み込んでいったほうが、過剰なエンジン音も抑えられ、気持ちがいいと思った。
足まわりの設定はやや硬め。さきのDRSとともに、コーナリング性能はよくて、速度が高めでも不安感はない。というか、楽しいと感じられるはず。
インテリアで目をひくのは、ダッシュボードに設置された大型のモニタースクリーンだ。デザイン的にすぐれているのは、運転席と助手席をはっきり分けた色づかい。
たとえばサンドベージュなる内装を選ぶと、運転席側はブラック、助手席側はそのサンドベージュと色分けされている。「機能に応じて分けました」とは、担当したデザイナーの言葉だ。
全長4720mmと比較的余裕あるサイズの車体であり、ホイールベースは先述のとおり2770mmと、比較的ショートであるものの、それでも十分。パッケージングがうまく、後席も空間的余裕が十分にある。ハリアーの兄貴分というかんじだ。
車体色には、「マスタード」という黄色や「エモーショナルレッド」という赤色も設定がある。ランボルギーニ「ウルス」のように、運転が楽しめるSUVが欲しいひとにアピールすると思う。
このあと、スポーツにはプラグイン・ハイブリッドが登場する。それもかなり気合いの入った仕上がりのようで、価格差は別として、較べてから購入を検討するのも悪くないかもしれない。
いろいろなことが楽しみになるクルマだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
クラウンの名を付けるのは間違いだよ。カローラは従来を超えた質感だからリブランド成功かもしれないけどクラウンは質感落ちている。