現金一括購入でもディーラー所有権
執筆:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】コワモテ? 新型トヨタ・ランドクルーザーってどんなクルマ【詳細をみる】 全149枚
昨年8月に発売された新型トヨタ・ランドクルーザー300が、最長4年以上の「長納期」になっている。
ニュースなどでも報道されており、ご存知の方も少なくないだろう。
関西地方のトヨタ車ディーラーに聞いたところ、納車まで4年は決して大げさではないという。
理由は周知のとおり、半導体関連部品など、新型コロナウイルス感染拡大等に伴う部品の供給不足によるものだ。
自動車は1つ部品がないだけでも完成させることはできない。トヨタに限らず、国内外多くの自動車メーカーが生産調整をおこなっている。
加えてランドクルーザー300は発売されたばかりの新車であり、超人気車種でもある。
想定を大幅に上回る注文が入ってしまったことも長納期となっている理由だ。
さて、そのランクル300。購入時に「登録から最低1年間は転売しない」という誓約書の提出を必須としている。
これは全国の販社で転売防止対策として実施されていると思われる。
そしてその誓約を確実に実行してもらうため、一部の販社がランクル購入客にお願いしていることがある。
現金でも割賦で買っても「購入から最低1年間はディーラーに所有権をつける」というお願いだ。
一般的に現金一括で購入した場合、車検証の所有者欄には購入者の名前が入る。
「△△トヨタ」「ネッツトヨタ〇〇」などのディーラー名になることはありえない。(※金融機関でローンを組んだ場合も原則として所有権は購入者の名前になる)
なぜランクル300購入においては現金購入でもディーラーに所有権が付くのか?
絶対に転売させないための措置
ディーラーに所有権をつける理由。それは簡単に言うと、「絶対に転売をさせないため」である。
例えばの話であるが、現金で購入した客のAさんが、「転売しない」という誓約を破って中古車店B社にランクル300を売却したとしよう。
所有者名義がAさんであればB社はAさんからランクル300を買い取って代金を支払い、名義変更のための書類(印鑑証明、委任状など)を受け取り運輸支局に出向いて名義変更(移転登録)の手続きをおこなう。
書類上の手続きは30分程度で完了し、ランクル300はB社のものになる。
その後B社は自由にオークションに出したり、海外の業者に転売したりが可能になる。
しかし、ディーラーに所有権がついていれば、名義変更をするにもディーラーの書類が必要となる。
B社が所有権を持つトヨタディーラーに依頼をしても、当然だが、所有権解除や名義変更のための書類を出すはずもない。
つまり、転売して名義変更することは不可能となる。
この販売ルールはどういう経緯で始まったのか? トヨタ自動車に経緯を聞いてみた答えをまとめた。
「転売防止の一手段として販売店がはじめたものです」
「クルマを購入いただく皆様の公平性を保ちたいとの考えでご協力をお願いしています」
「あくまでもお願いであり、強制はしておりません」
「また、正確には把握しておりませんが、(現金、割賦に関わらず最低1年間は転売防止のためにディーラーへ所有権をつける)お願いをしているのは、全国で数社程度かと思われます」
「ほとんどの販売店は実施していません」
実際に出品→落札されたものも
誓約書を書かせたり、所有権をディーラーにしたりという措置をとっても実際にこれまで数台のランクル300がオークションに出品されている。
ほとんどは直前でキャンセルされているとのことだが、2月上旬に開催された業者オークションでは2022年1月登録のランドクルーザー300が、スタート価格1200万円→応札価格2000万円で落札されている。
これまで転売されてしまったランクルの所有権についてはどうなっていたのだろうか? トヨタ自動車に聞いた。
「ほとんどが現金一括購入で、所有権はオーナーについておりました」
「また、割賦の場合でも所有権解除をすれば転売できてしまいます。(残債を全額支払ってローンの支払いを終了すれば所有権は信販会社などからディーラーに移る、という意味)」との回答だった。
つまりオーナーを所有者名義にしていたランクルが転売されていることになる。
なお、これまでもランクル300に限らず、転売防止のための誓約書提出を必須としていたいていたクルマは他にもあった。
トヨタ車がやはり多く、ランドクルーザー・プラド、アルファード、ヴェルファイアなど。他社でも限定車などは販売の際、最低でも1年は転売しないことなどをルールとしてきた。
しかし、現金一括購入であっても所有者をディーラーとする措置はかなりレアケースと考えられる。
誓約を破って転売した場合のペナルティは、今後一切、トヨタディーラーからクルマが買えなくなるという厳しい内容となっている。
そのことはもちろん誓約書にも記されているが、実際に転売している人は最初から高値で転売することを目的しているのだろう。
具体的な「販売ルール」は?
所有者をディーラーにするか顧客にするか、あくまでも「選択制」とのことだが、中には「ランドクルーザー300の販売ルール」として、登録日から少なくとも1年以上は所有者名義を販社名にすることを「前提」としている販社もある。
実際、筆者の知人(自動車販売業などではない一般オーナー)も現金で購入してこの内容の誓約書にサインをしている。
知人の話によると「形としては『選択制』としているものの、実際にはほぼ強制。『サインしないと販売できません』といった雰囲気だった」そうである。
一方で別の販社の店舗でランクル300を買った知人は「転売しない」という誓約書にはサインをしたが、ディーラーに所有権をつける話は全く出なかったとのこと。
全国の販社それぞれに事情は異なるようだ。
ちなみにメーカーが転売を阻止したい主な理由は以下となる。
国内向け
アルヴェルなどのミニバンにおいては暴力団、いわゆる反社勢力への転売にされることを危惧している。
反社は新車も中古車も暴対法で販売が禁止されておりディーラーでの購入はもちろん不可なので、転売された先のブローカーなどから購入することになる。
海外向け
ランドクルーザーやプラド、ハイラックスなどは紛争地域やテロ活動に使われることを危惧している。
また、海外に並行輸出されてそこで何かしらのトラブルが発生した場合、製造物責任を問われて巨額な賠償金を請求される恐れがある。
自動車ディーラー側の事情もある
現金で買っても一定期間、ディーラーが所有……。
やや強硬な措置のようにも思えるがここまでするにはディーラー側の事情もある。
「転売されたランクルがオークションに出品された場合、そのランクルを売ったディーラーが全額負担で出品車を買い戻さなくてはならない」などのルールが敷かれているという情報も入ってきている。
これらが真実なら、やや強硬な転売防止策も、ディーラーにとっては背に腹は代えられない苦肉の策と言えるだろう。
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みんなのコメント
そりゃこんな馬鹿ばっかなら転売無くならないな。
みんな自分さえ良けりゃ良いんだな。
ウケる。