この記事をまとめると
■2次曲線で変化する内燃機関の特性は生物の息吹のようにも感じられて心地よい
「ガソリン」と「ハイブリッド」! 同じ車種に両方あるなら走りがいいのはドッチ?
■起動時に最大トルクが得られる電気モーターの加速性能は内燃機関と比べるべくもない
■自動車を趣味の領域から眺めたとき内燃機関が持つメリハリのある反応は忘れ難い
クルマ好きが内燃機関に魅入られる理由
HV車が普及したことで、自動車の動力としての電気モーターにも馴染みを覚えるようになってきた。さらに、二酸化炭素の削減対策から、自動車の主動力が電気モーター、すなわちEVに移行することも、もはや時間の問題であることを自覚しなければならない。
ひょっとしたら、自動車の有史以来、130年以上も慣れ親しんできた内燃機関との決別も、そう遠くない将来に訪れそうな気配だが、内燃機関の特性にこだわるユーザーも少なくない。とくに、積極的な走りを楽しむクルマ好きにとっては、2次曲線で変化するエンジンの出力変化やトルク変化は、ギヤを切り替え、アクセルを踏み込むたびに息吹のように感じられ、走らせること自体が至福の時、至福の感触と呼べるかもしれない。
ところで、クルマ好きは、なぜ内燃機関に魅入られるのだろうか。話は鉄道の例になるが、蒸気機関車は人間が作った工業製品のなかで、もっとも人間に近い存在と分析する人がいた。それゆえ、蒸気機関車は多くの人から理屈抜き、無意識のうちに愛されるのだと。なるほど、説得力のある言い方だと感心してしまった。シュッ、シュッ、ポッ、ポッと脈動を感じさせる蒸気機関の動きは、まさに生き物そのものの反応なのかもしれない。
そんなことを思いながらクルマを運転してみると、内燃機関が持つ回転数に応じた強弱の感触、息づかいのようなものは、蒸気機関車と一脈通ずるところがあるように思えてくる。クルマ好きが、内燃機関に魅入られる(執着する?)理由は、まさにこの点にあるのかもしれない、と思ってしまう。
とくに、マニュアルミッション車は、エンジンの反応をダイレクトに感じ取ることができるだけに、クルマ好きに支持されるのは当然かもしれない。この場合の内燃機関は、基本的にガソリンの自然吸気エンジンと考えてよいが、よくできたエンジンだと、アクセルの踏み込みに対して素直にエンジン回転が上昇し、中域のある回転域になると反応(加速力)が鋭くなる。そのエンジンが持つ、最大トルクの発生ゾーンに入っている状態だ。
そして、そのままアクセルを踏み込み最高回転数(レッドゾーン手前)まで引っ張ると、加速感が鈍ることも体感できる。低速ギヤでは瞬時のことなので、パワーの盛り上がり、加速感の鈍りはなかなか体感しにくいが、中速ギヤ以上だと、回転上昇にある程度の時間を要するため、誰でも体感できる内燃機関特有の特性だ。
これに対してターボエンジンは(過給機付きという意味だが、スーパーチャージャーは過給方式の違いから加速特性が異なる)、アクセルを踏み込んだ瞬間は、自然吸気エンジンと同じような反応だが、過給効果が現れた瞬間、ブースターに点火されたような力強い加速力に豹変する。エンジン排気量、クルマの性格によっても加速感は異なるが、とくにスポーツタイプのエンジンだと、回転上限に達する時間はアッという間だ。自然吸気エンジンと異なり、過給作用によって加速カーブが急上昇を描くことになるからだ。300馬力級のエンジンでも、全力加速をすると脳貧血(?)のような症状を覚えることがある。自然吸気エンジンは、一直線で素直な加速感だが、ターボエンジンは過給効果が現れた段階で、2段階の加速力を示す特徴がある。
ディーゼルエンジン車(乗用車に限定)の加速感も、基本的にはガソリンエンジンの自然吸気とターボ付きの違いと同じ反応だが、ディーゼルエンジンは回転上昇がガソリンエンジンより遅く、回転上限も低く、トルクカーブも低速寄りとなるため、アクセルを踏み込んだ直後から力強いトルクを感じることができる。ただ、自然吸気のディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンの加速感に慣れた人にとっては、少々物足りなく感じるかもしれない。
しかし、これがターボ付きとなる話は変わってくる。加速感、回転上昇感が鋭くなるのはガソリンターボと同じだが、低速域から強力なトルク特性によって力強さを感じ、また過給効果によってエンジンの回転上昇も素早くなる。
ディーゼルターボは、低~中速回転域で力強さを発揮し、実用エンジンとして扱いやすさを感じさせてくれる。スポーツ性ではなく実用性の点で、自然吸気ガソリンエンジンより優れていると断言してもよい。
実用車の域にとどまっているはずのEVの圧倒的な加速性能
そして、こうした内燃機関に対し、電気モーターによるEVの加速感がどんなものか、気になるところだ。しかし、EVはまだ創生期にあり、内燃機関搭載車のようにバラエティに富んだ車種設定はまだなく、実用車の域にとどまっているのが現状だ。そこで、EVの可能性、ポテンシャルを示す実例として、ニスモが実験的な意味合いで製作したリーフ・ニスモRCの試乗感触を紹介することにしたい。
2018年暮れに発表された第2世代となるリーフ・ニスモRCは、車体前後に120kWのモーター2基を搭載。出力は合計240kW(約326馬力)だが、最大トルクは640Nm(約65.3kg-m)と圧倒的だ。内燃機関は、ある程度回転が上昇しないと最大トルクが得られない特性だが、電気モーターは起動時にトルクが最大となるため、加速特性は内燃機関の比ではない。動き始めが圧倒的なのだ。
また、回転上昇に従いトルクが減少する特性は、自動車の動力として理にかなった特性で、モーターの使用回転域(減速機と組み合わせるかたち)で車両の要求速度域をカバーできる状況では、変速機が不要となる。
電気モーターの持つ可能性がどの程度なのか、究極とは言わないが、相当なレベルにまで追い求めたリーフ・ニスモRCの加速感は、すさまじいのひと言に尽きるものだった。そして、静音にしてスムース。アクセルを踏み込んだ瞬間、巨人に蹴り出されたような感覚で一気に加速する。直線区間が短く、フルアクセルに出来る時間はほんの2~3秒程度だったが、目視による距離感と加速による距離感が一致しなかった。あまりに加速力がすさまじく、時間の経過と目標とした地点への到達タイミングが、大きくズレてしまった。
あまりの強烈さに、リーフ・ニスモRCの加速性能を調べてみたのが、なんと0-100km加速は3.4秒だという。0-100kmが3秒台前半という加速性能は、600~700馬力級のスーバースポーツカーと同等のタイムだ。なんともはや、EV恐るべしである。
電気モーターが持つ性能の高さは、もはや疑うべくもなく、好むと好まざるにかかわらず、早晩、自動車のパワーユニットが電動化するのは確実だ。ただ、自動車を趣味の領域から眺めたとき、内燃機関が持つメリハリのある反応を忘れることが出来るのだろうか、と疑問を抱いてしまうのも、また事実である。
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みんなのコメント
運転する、楽しいドライブなら内燃機関エンジンかも知れない。室内は騒音があるけど良いエンジンミュージックだと思ってます。
バッテリーの進化はこれからもだから
化石燃料で待機します。
昔のバッテリー車はねーって将来語りたい年齢でもないし。