3月8日から18日にかけて開催されたジュネーブ・モーターショー。2018年も各社から注目のニューモデルが数多く発表され、約66万人の来場者で賑わいました。<レポート:北沢剛司/Koji Kitazawa>
EVや自動運転、コネクティビリティをメインにしたニューモデルが多数を占めるなか、往年の名車が復活したり、レトロ風なニューモデルが展示されていました。今回はそんな懐かしくも新しいユニークなクルマたちをご紹介します。
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小規模なスポーツカー・メーカーが軒を連ねるジュネーブ・モーターショーでは、普段は見られないようなユニークなクルマたちに出会えることがよくあります。今回も世界最高峰の性能を誇るスーパーカーなどがいくつも発表され、大きな話題となっていました。その一方で、往年の名ブランドやちょっと懐かしいデザインを纏ったニューモデルがいくつもあり、コアなクルマ好きが熱い視線を注いでいました。
開幕前に注目を集めていたのが、イタリアのMAT(MANIFATTURA AUTOMOBILI TORINO)による「ニュー・ストラトス」。往年のランチア・ストラトスを現代に甦らせたこのモデルは、数年前にドイツのエンスージアストの依頼によりMATがワンオフ製作したモデルを、25台限定で市販化するもの。ベース車両はフェラーリ 430 スクーデリアで、4.3L V8エンジンは、エグゾーストシステムの変更などにより、オリジナルの510 psから540 psにパワーアップ。軽量なカーボンファイバー製のボディシェルなどにより、車重は1247 kgに抑えられ、0-100 k/h加速は3.3秒と発表されています。
ベース車両は今回もフェラーリ 430 スクーデリアで、MATでは430 スクーデリアのシャシーを短縮してニュー・ストラトスを製作します。そのため、顧客は車両の製作費とは別に、430 スクーデリアをドナーとして用意する必要があるとのこと。フェラーリのV8スペシャルモデルをドナーにしてしまうとはあまりにも贅沢な話ですが、この手のワンオフ車では定番の手法。
思えば、以前イタリアのトゥーリング・スーパーレジェーラがディスコヴォランテおよびディスコヴォランテ スパイダーを少量生産したときにも、ドナーとしてアルファロメオ 8C コンペティツィオーネが必要でした。オートクチュールの希少なスポーツカーを手に入れたいと思うような富裕層にとって、量産モデルのフェラーリ 430 スクーデリアやアルファロメオ 8C コンペティツィオーネをドナーにすることには、特に抵抗感がないということでしょうか。なんともスケールの大きな話です。
2017年のジュネーブでは、新生「A110」を華々しくデビューさせたアルピーヌ。1955台限定で発売されたローンチモデルの「A110 Première Edition」は、発売からわずか5日間で完売。アルピーヌへの期待の高さを改めて感じさせました。今回のジュネーブでは、車重を1100kg以下に軽量化した「A110 Pure」と、装備を充実させた「A110 Légende」の2つの市販モデル、そしてレーシング仕様の「A110 GT4」を発表しました。
「A110 Pure」の価格は5万4700 ユーロ(約711万円)で、「A110 Légende」は5万8500 ユーロ(約760万円)。これはA110と同様に1.8L 直列4気筒ターボエンジンをミッドシップに搭載する、アルファロメオ 4Cと直接競合することを意味しています。日本ではすでにアルピーヌ・ジャポンを設立。2018年6月には詳しい情報が公開される予定のため、名門同士のスポーツカー対決に期待が高まります。
このように今回のジュネーブでは、1970年代にWRCを制したストラトスとA110が新たなカタチで顔を揃えるという、興味深い展開となりました。
50年前の劇用車がまさかのヨーロッパデビュー
フォード・ブースの中央には、特徴的なダークハイランドグリーンに塗られた「マスタング・ブリット」が展示されていました。このモデルは、スティーブ・マックイーン主演の映画「ブリット」の公開から2018年で50周年となることを記念して、2018年のデトロイト・モーターショーで発表された特別仕様車。エンブレムを取り去ったメッシュタイプのフロントグリルとトルク・トラスト ホイールを纏った姿に、映画に登場した1968年式フォード・マスタング GTの精悍なスタイルが重なります。
てっきり北米限定モデルだと思っていたため、ジュネーブでのヨーロッパデビューには驚きました。「マスタング・ブリット」は限定車として過去に2度発売されましたが、50周年記念となる今回のモデルには、最高出力464 ps、最大トルク529 Nmを発揮する5.0L V8エンジンを搭載。性能面においても最強となっています。
原点回帰する高級車ブランド
レトロ志向は特定のスポーツカーだけでなく、高級車ブランドにも見られました。
ランドローバーは今回、「レンジローバー SV クーペ」を初公開しました。最近はBピラーから後ろのルーフラインを変更することで「SUVクーペ」を名乗るモデルがいくつもあります。しかし、このレンジローバーではボンネットとロワー・テールゲートを除くすべてのアルミニウム製エクステリアパネルを一新し、名実ともに2ドアクーペを実現。顧客が豊富なオプションのなかから選択した仕様を忠実に再現すべく、ジャガー・ランドローバーのSVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)が1台1台手作業で組み立てを行ないます。
このクーペ・スタイリングは、初代レンジローバーの2ドアボディの再来といえるもの。しかし、その印象は対照的です。「砂漠のロールスロイス」といわれた初代2ドアモデルにはある種の軽快感があるのに対して、最新の「レンジローバー SV クーペ」には、ロールスロイス・ファントム・クーペにも通じる独特の重厚感があります。いずれにしても、堂々としたボディサイズのSUVを4シーターのクーペに仕立てたという意味においては、非常に贅沢なモデルです。
さりげなく展示されていた「メルセデス・マイバッハ Sクラス」も、原点回帰への流れが伺える一台。同車は2017年フェイスリフトを実施したばかりですが、今回発表されたモデルでは新デザインのフロントグリルを採用。併せて、2トーン・ボディカラーや新たな内装色のコンビネーション、20インチ・ホイールの設定などが行なわれました。
フロントグリルは、コンセプトカー「ビジョン・メルセデス・マイバッハ 6」のディテールを再現したものと発表されています。マイバッハは伝統的に縦基調のグリルを採用してきたため、この変更は原点回帰といえるもの。さらにいえば、2トーン・ボディカラーの設定と併せて、2002年に登場した以前のマイバッハ 57/62に通じるものがあります。マイバッハらしさを際立たせることで、メルセデス・マイバッハのブランド力を強化したい思惑が見え隠れします。
伝統と進化が共存するモーガンの世界
2018年に創業105年を迎えるイギリスのモーガンは、今回ニューモデルを2台発表。クラシック志向の独自路線をひた走っています。
ニューモデルのひとつが、「モーガン・プラス8 50th アニバーサリー・エディション」。その名の通り、1968年に誕生した「プラス8」の50周年を記念した限定車です。プラス8は同社初のV8エンジン搭載車で、これまでに約6,000台ほどが製造された人気モデル。367psを発揮するBMW製の4.8L V8自然吸気エンジンを搭載し、車重はわずか1100kg。0-62マイル(0-100km/h)加速4.5秒、最高速度249km/hの実力を誇ります。価格は10万7500ポンド(約1,612万円)で、50台が製作されます。
もう一台のニューモデルは、「モーガン・エアロ8 GT」。2000年に登場した「エアロ8」は、そのレトロモダンなスタイリングが特長で、GT3レースにも参戦しました。最終モデルとなるエアロ8 GTは、フロントフェンダーのルーバーや大胆なリヤディフューザーを備え、独特なスタイリングに磨きをかけています。エンジンはプラス8と同じBMW製のV8で、自然吸気のV8エンジン搭載はこのモデルが最後となる予定。8台が製作されるエアロ8 GTの価格は12万ポンド(約1,800万円)です。
新たな生命を授けられたクラシック・ミニ
1959年に誕生したいわゆる「クラシック・ミニ」は、生産終了後も多くの人に愛され続けている不朽の名車。今回はクラシック・ミニを題材にした興味深いモデルが展示されていました。
イギリスのデイビッド・ブラウンが2017年に発表した「ミニ・リマスタード」は、その名の通り、現代の技術でクラシック・ミニをリマスタリングしたモデル。ボディや車体は新たに設計したもので、よく見るとボディの分割線やホイールアーチの形状などがオリジナルと微妙に異なります。今回のショーでは、通常モデルと、25台限定の「Inspired by MONTE CARLO」の2台を用意していました。
エンジンなど一部のパーツにクラシック・ミニのリビルト品を使うほかは基本的に新規パーツで構成する「ミニ・リマスタード」では、内外装の細かな仕様をビスポークにより決めることができます。いわば新品のクラシック・ミニをオーダーメイドできるわけで、往年のミニフリークにとってはたまりません。
さらにエアコンやインフォテイメントシステムが標準装備されたり、トランスミッションには4ATもオプション設定されるなど、日常の足としても十分使える内容です。ただし、価格は通常モデルが7万5000ポンド(約1,125万円)、限定車の「Inspired by MONTE CARLO」では8万2500ポンド(約1,237万円)もするため、オーナーになるには非常に高いハードルをクリアしなければなりません。
もう一台のクラシック・ミニは、「MIANIE 2.0 T」というモデル。一見すると単なるドレスアップ仕様のミニにしか見えませんが、なんとVWゴルフGTI用の2.0L直噴4気筒ターボエンジンをミッドシップに搭載しているのです。
今回のショーが世界初公開となるこのミニは、スイスの「EMIL FREY CLASSICS」社が開発したもの。しかもワンオフではなく、5台限定で生産する市販モデル。サブフレームを介してミッドシップに搭載されるVWゴルフGTI用エンジンは、最高出力220ps、最大トルク340Nmを発揮。847kgという軽量な車体を活かし、0-100km/h加速は4秒以下という実力を備えています。その過激ぶりはかつてのミニERAターボの比ではなく、しかもルノー 5ターボのような外観の派手さもありません。まさに「羊の皮を被った狼」の究極に位置するモデルといえるでしょう。
最新テクノロジーと懐かしのデザインが融合したルーフ
2017年、「イエローバード」の別名で知られる「CTR」の最新モデルを発表したルーフは、今回「SCR」の最新モデルを発表しました。1978年に同社が製作した「SCR」の名を受け継ぐこのモデルには、同社が独自設計したカーボンファイバーセルを採用。サスペンションはプッシュロッド式で、リヤには510 psを発揮する4.0L水平対向6気筒自然吸気エンジンが搭載されます。
トランスミッションは6MTで、ターボエンジン+PDKが主流のポルシェ 911とは一線を画した内容となっています。乾燥重量は1250 kgで、最高速度は実に370 km/h。最新テクノロジーを採用しながら、自然吸気エンジンとマニュアルトランスミッションという伝統的なスポーツカーの公式にこだわっているのが特長です。まさにクルマ好きの心を捉えて離さないレトロモダンの究極的存在です。
これからのクルマが新たな方向に進んでいくことに、漠然とした寂しさを感じている世代にとって、このようなレトロ風モデルは癒しの存在でもあります。素直に「やっぱりクルマっていいよね」と思える、ちょっと懐かしい雰囲気のクルマたちは、電動化や自動運転の方向に進んでいく自動車業界に対するアンチテーゼなのかもしれません。
> 特集:ジュネーブモーターショー2018
> コラム:北沢剛司の「クルマ趣味 サブカル系」 記事一覧
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