中央部から放たれる見事なシンフォニー
コードネーム982型の718ケイマンと718ボクスターは、エンジンのダウンサイジング化やエネルギー効率にフォーカスされていた。2016年の発表当時、ミドシップされていたのは水平対向4気筒ターボだった。
【画像】運転の喜び ポルシェ718ケイマン RS AMG SLSとBMW M3 GTS 最新GTとM4も 全108枚
しかし、今回試乗した718ケイマン GT4 RSには、激しく高回転域まで吹け上がる4.0L水平対向6気筒の自然吸気エンジンが載っている。だいぶ方向性が変わったように思える。バッテリーEVへシフトする前の、ポルシェ渾身の内燃ユニットといっていい。
ついに英国の公道へ、特別な718ケイマンが舞い降りた。クルマ好きなら、一度は生で見て聞いておくべきモデルの1台といえる。
4.0Lフラット6は、輝かしいポルシェ911 GT3から譲り受けたもの。最高出力は、少し気づかうように500psへ設定された。史上最高の内燃ユニットに数えられると同時に、718ケイマンでは別の味わいも醸し出されている。
全身の感覚を蘇らせる、911 GT3とは一味違う鮮烈な体験を与えてくれる。騒音計で測ってみたところ、9000rpmで109dBという凄まじいボリュームであることもわかった。一般的に、よほどのスーパーカーでも90dBを超えることはない。
ボディの中央部から放たれるサウンドは多彩。様々な音が重なり合い、機械が構成する交響楽団のよう。見事なシンフォニーを奏でる。
内燃ユニットの息使いを濃く体験できる
エグゾーストノートの上昇とともに高まる、ターボチャージャーの明確なタービン音はポルシェとして異例。ロッカーアームや、シフトパドルを弾く度に鳴るデュアルクラッチATの金属音も、素晴らしい音響体験を盛り上げてくれる。
キャビンの後方、ドライバーの上部にはカーボンファイバー製のインダクションシステムがそびえる。耳の直後で勢いよく空気を吸い、エンジンへ送り込み、シュゴーッと盛大に響く。エンジンの燃焼音も共鳴しているようだ。
内燃ユニットの荒々しい息使いを、ここまで生で濃く体験できるモデルは極めて貴重。スリリング極まりない。これほどメカニズムの存在が直接的に伝わってくる公道モデルは、他には簡単に思い浮かばない。
そんな濃厚な感覚へ釣り合うように、動的能力や存在感も極めて高い。見た目は、まさにレーシングカー然としている。
ただし、比較対象がまったくないわけではない。同じ舞台に並べるべく過去の特別な例からチョイスしたのは、2013年のメルセデスAMG SLS ブラックシリーズと、2009年に追加されたE92型のBMW M3 GTSだ。
ブラックシリーズは究極のSLSと呼べ、右ハンドル車は15台しか製造されていない。BMWは、右ハンドルのM3 GTSを10台しか販売しなかった。
比較相手はSLS ブラックシリーズとM3 GTS
SLS ブラックシリーズは、フロントエンジン・リアドラブ(FR)のスーパー・グランドツアラー。過去、最も特別なブラックシリーズでもある。
アッファルターバッハに拠点を置くAMGが開発した、自然吸気のV型8気筒エンジンは6.2Lと巨大。ドライサンプ化され、新しいシリンダーヘッドが組まれ、ユニット名をM156からM159へ改名。8000rpmで630psを発揮する。
パワーウエイトレシオで400ps/tを超えた初のメルセデスであり、エンジンが主役といっていい。とはいえ、ルックスも718ケイマン RSに劣らないくらい威勢がいい。よりスーパーカーらしい出で立ちだ。
プレミアが付き、価格は高騰中。今回お借りするのに、70万ポンド(約1億1550万円)の損害保険が掛けられている。
対して、歴代のBMWで最もハードコアなM3といえる1台が、E92型のGTSだ。ドアを開けば、レーシング・ハーネスがシートに掛かり、内装は718ケイマン RSより簡素。走りという目的に、より実直といえる。
オレンジ色のロールケージに、自然吸気V8エンジンという熱々の組み合わせ。BMWらしいシャシーとの一体感が、素晴らしい喜びを与えてくれるはず。この2台との比較で、最新の718ケイマン GT4 RSの仕上がりを確かめてみたい。
シャシー中央に近い理想的なポジション
テストルート途中の駐車場へ3台を並べる。M3 GTSのリアウイングは1番小さい。新車当時の印象は違っていたはずだが、最近はスポイラーへ鈍感になっているのかもしれない。シリアスなクルマには、充分な大きさの羽が欲しいと思ってしまう。
ポルシェのテールゲートには、巨大なウイングが載る。スワンネックのステーが与えられ、いかにも良く効きそうだ。718ケイマンのスタイリングにもよく似合う。
小さな男が大きな武器を振り回しているようだが、英国の公道では、コンパクトなボディの方が何かと有利。日本でも同様だと思う。
SLS ブラックシリーズのリアデッキにも、カーボン製の大きなウイングが立っている。さほど目立たないのは、ボディ全体の空力パーツが盛大だからだろう。
そして大きい。車線を満たすほど全幅が広く、ボンネットも長い。ガルウイングドアを開くと、さらに威圧感は大きくなる。注目度でいえば3台でダントツの1位だ。
インテリアを比べてみよう。SLS ブラックシリーズはウエストラインが高く、ボンネットが高く、一段と低く設定されたリア寄りのシートと相まって少々圧倒される。
ポルシェも同様に低いが、シャシー中央へ近い理想的なポジションに収まれる。内装はほぼ全面が、ダイナミカと呼ばれるスウェード調クロスで仕立てられ、落ち着いている。
カーボン製シェルが裏面に見えるバケットシートは、快適性とサポート性を両立。操作系の中心に座れ、ボディの四隅の感覚も掴みやすい。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
?????
こいつ適当に記事書いてんの?