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日本人が愛しトヨタが愛し続けて55年 日本車の象徴であり続けるカローラの軌跡と真の実力

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日本人が愛しトヨタが愛し続けて55年 日本車の象徴であり続けるカローラの軌跡と真の実力

 2021年に販売開始から55年を迎えたトヨタのカローラ。それを祝うかのように、2021年7月には世界累計生産台数5000万台を達成した。これまでトヨタが販売した自動車のうち、なんと5台に1台がカローラということになる。短命で終わるモデルも少なくないなか、なぜトヨタはカローラを作り続け、そしてカローラは売れ続けるのか? この記事では世界的大衆車となったカローラの歴史を振り返るとともに、トヨタの“カローラ愛”について検証していきたい。

文/長谷川 敦、写真/トヨタ、ホンダ

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高度経済成長の申し子として生まれた初代カローラ

1966年に登場した初代カローラ。それまでのトヨタ製大衆車・パブリカよりもエンジンが100cc大きく、当時では珍しいフロアシフトが採用されていた

 カローラが誕生した1966年、日本は高度経済成長期のただ中にあった。国内の自動車産業も発展を遂げ、世界に通用する日本車を作り出そうという勢いに満ちていた。そんな時代にトヨタは、大衆車としての基本性能や価格設定を踏まえつつも、それまでの大衆車にはなかったスポーティさも兼ね備えた新世代のモデル「カローラ」を送り出した。

 初代カローラの開発コンセプトは「80点主義+α」。顧客が求める性能が確保され、そのうえで遊び心も満たすためのコンセプトである80点主義+αは、トータルバランスに優れて長く乗り続けられるという、乗用車作りの神髄を象徴していた。この時代は各地に高速道路が次々と造られ、自動車にはスピードも要求されるようになっていた。その点初代カローラには、当時の大衆車としては十分なパワーが与えられ、来るべき高速移動社会への対応も万全だった。

 自家用車という言葉が本当の意味で民衆に浸透するのもこの時代のこと。高度経済成長によって、それまでは高価で手の届かなかったクルマが一般サラリーマンでも買えるようになり、人々の生活も大きく変わっていった。

時代の要求に合わせて進化するカローラの姿

2代目カローラ。初代モデルのバリエーションだったカローラスプリンターは、この世代からトヨタスプリンターとして独立。クーペボディも用意された

 初代カローラは累計生産台数で100万台を記録。これによって世界におけるトヨタの販売台数にも拍車がかかり、1968年には北米への輸出も開始される。そして東名高速道路が全線開通した1970年に、2代目カローラが登場する。

 2代目カローラの特徴はサイズアップされたことで、2ドア車と4ドア車の2タイプを用意。エンジンも初代の1.1リッターから1.2リッターへと大きくなり、後に1.6リッターDOHCエンジンを搭載するスポーティな派生モデル「レビン/トレノ」も加わっている。

 高度経済成長の勢いにのり、多くの国産車もパワフルな方向に進化した。しかし、1973~74年にはオイルショックが世界を襲い、クルマの燃費性能が注目されるようになる。3代目カローラは衝突安全性能を重視して2代目よりもさらに大きなっていたが、1979年登場の4代目は、燃費の改善を目的に空力性能を考慮したボディフォルムでまとめられ、高級感も向上した。

FFモデルへの大転換、カローラの新たな歴史を紡ぐ

2駆動方式を一新して登場した5代目。通常の4ドアに加えてワゴン的スタイルの5ドア「リフトバック」もラインナップ。AE86はこの5代目の派生モデルだ

 1983年はカローラシリーズにとって重要な年となる。カローラの駆動方式は、初代モデルよりフロントにエンジンを搭載し、リアタイヤを駆動するFRスタイルだった。だがこの時代になると、スペース効率に優れ、コストも抑えることができるFFが一気に世界の主流となり、それに合わせてカローラも5代目モデルでついにFF方式を採用。カローラというクルマの位置付けを考えるとこの変更は必須であったが、トヨタはスポーティモデルのレビン&トレノをFR車で残し、歴史的な名車「ハチロク」を誕生させた。

 5代目以降のカローラはすべてFF車で、レビン&トレノもハチロクの後継モデルではFFに変更された。そして日本は未曾有のバブル景気を迎えることになり、カローラもまた高級路線へと舵を切ることとなる。

バブル景気に咲いた6&7代目カローラ

バブル景気にのって高級化されたカローラの第1弾がこの6代目。外観だけでなく内装も豪華になり、ワンクラス上のクオリティを誇っていた

 1987年リリースの6代目カローラのテーマは「クラスを超えた世界のハイクオリティセダン」。外観、内容ともにそれまでのシリーズより高級化されるなど、顧客満足度が高められた6代目は、1990年に国内30万台以上のセールスを記録している。

 1991年には、より高級路線を追求した7代目が登場する。そのスタイルは最上級モデルのセルシオが意識され、「ミニセルシオ」と呼ばれることさえあった。しかし、7代目登場とほぼ時を同じくして国内のバブル景気は崩壊を迎え、カローラも再び方向転換を迫られることになる。

原点回帰と派生モデルの増加

多くのコンポーネンツが先代から流用されたものの、各部の改良によって50kgの軽量化を実現した8代目は、効率に優れたハイメカツインカムエンジンを搭載

 8代目カローラはシンプルなコンパクトセダンとなって1995年に登場。さらにレビン&トレノやワゴン、バンに加えてミニバンのスパシオと4ドアセダンのセレスも発売されるなど、バリエーション展開が精力的に進められた。

 ミレニアムイヤーの2000年に誕生した9代目モデルはデザインを一新し、ボディ幅は5ナンバーサイズの限界まで広げられた。横滑り防止機構のVSCやトラクションコントロール(TRC)も装備され、安全性もアップ。新たなカローラを印象づけた。

 10代目モデルも9代目のコンセプトが継承されたものの、海外仕様とは異なる国内専用設計を採用。アクシオのサブネームも追加されている。この10代目から全グレードにバックモニターが標準装備となったのがトピックで、実用性を最重視するカローラの面目躍如といったところ。

初のダウンサイジングでよりカローラらしく、しかし……

10代目に比べて全長が50mm短縮された11代目。テーマは「大人4人が、安心・安全、快適に長距離を移動できるミニマムサイズのクルマ」だった

 11代目カローラの販売開始は2012年。それまで拡大を続けていたカローラのボディサイズが、この11代目で初めて縮小された。コンパクトで取り回しが容易になった車体はカローラのイメージそのもの。この11代目からハイブリッドモデルがラインナップに加わっている。

 先代でコンパクト化されたにもかかわらず、2019年登場の12代目カローラは史上初の3ナンバーモデルとして設計された。名称も4ドアセダンはシンプルな「カローラ」、ワゴンは「カローラツーリング」に改められ、シリーズのリニューアルを強調している。

 3ナンバー化によってサスペンション設計などに余裕ができ、乗り心地は向上。スマートフォンとの連携も可能となるなど、新世代の大衆車としての機能が高められた。

まだまだ続くカローラの歴史 トヨタのカローラ愛は永遠不滅か?

スマートフォンと連動させて使用できる現行型カローラのディスプレイオーディオ。いつものアプリがそのまま使え、ハンズフリー通話にも対応可能に

 どうやら55年どころか60周年突破も確実なカローラだが、なぜトヨタはこのカローラを常に自社ラインナップの中心に置いているのだろうか? それはカローラというクルマの成り立ちに理由がありそうだ。初代カローラのコンセプトが「80点主義+α」であったことは冒頭で紹介しているが、この80点主義+αというのはトヨタのクルマ作りの根幹をなすもの。

 80点のクルマと聞くと、平均点は高くても面白みがないというイメージをもってしまいがちだが、すべてにおいて80点+αを達成するのはきわめて困難であり、それゆえにこのコンセプトを実現しているカローラの存在価値は高く、カローラ=トヨタという図式も成り立つ。つまりカローラは常に“今のトヨタ”を表している象徴といえるだろう。

 現トヨタ社長の豊田章男氏が、社会人になって最初に自分のお金で買ったクルマがカローラだったという。手の届きやすい価格で、なおかつ単なる大衆車にはない高級感とスポーティさも合わせ持つカローラは、初代の登場直後から多くのユーザーに受け入れられ、それは55年が経過した現在でも続いている。

 前述の理由から豊田社長のカローラに対する思い入れも深く、売り上げにおいてもトヨタに貢献してくれるカローラをトヨタが愛さない理由はない。

 カローラという車名は英語で「花の冠」を意味している。美しいスタイルのハイ・コンパクトカーであることを目指して名付けられた車名に違わず、いつの時代でも、カローラはユーザーに愛される花のような存在であり続けるだろう。そしてトヨタもまた、そんなカローラを愛で、ともに歴史を重ねていくのだ。

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