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14年間マイチェンだけで90馬力もアップ! 同じエンジンなのに日産GT-Rが超絶パワーアップを果たした理由

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14年間マイチェンだけで90馬力もアップ! 同じエンジンなのに日産GT-Rが超絶パワーアップを果たした理由

 この記事をまとめると

■R35GT-Rと呼ばれる現行型は14年もの間販売されている

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■初代と最新型では90馬力もの差が生まれている

■パワーアップの決め手は「タービン」と「制御技術」にある

 ターボ技術の結晶として進化し続けるのがGT-Rの使命だ

 基本モデルから改良を積み重ね、気がつけば、1世代で14年間のロングライフを続けてきたモデルがある。2007年、鳴り物入りでデビューを果たした日産GT-Rだ。もともとGT-Rは、そのグレード名が示すよう、レーシングユースを前提に企画された超高性能車両で、搭載エンジンを世代区分の基準にすると、3世代に分けることができる。

 第1世代は、グループ6プロトタイプR380の2リッターGR8型をルーツとするS20型(直6)エンジン搭載のC10系とC110系、第2世代はグループA規定に視点を置いた2.6リッターRB26DETT型(直6)ツインターボエンジン搭載のR32系/R33系/R34系、そして第3世代が3.8リッターVR38DETT型(V6)ツインターボエンジンを搭載する現在のR35系という系譜になる。

 それぞれ、市販車としてのエンジンスペックは、C10/C110系が160馬力、R32/R33/R34系が280馬力で規格されてきたが、現行のR35系は、イヤーモデルによってエンシン出力が引き上げられる進化を見せてきた。ちなみに、デビュー当時は480馬力だったものが、現行モデルでは570馬力にまで高められている。ちなみに、基本エンジンはVR38型とデビュー時から変わらず。14年間のモデルライフのなかで、90馬力の出力向上を果たしてきた。どういった進化過程をたどったのか、時系列に即して並べてみた。 第1期:2007年12月~2008年12月 480馬力/6400rpm、60kg-m/3200-5200rpm

 第2期:2008年12月~2010年11月 485馬力/6400rpm、60kg-m/3200-5200rpm

 第3期:2010年11月~2011年11月 530馬力/6400rpm、62.5kg-m/3200-6000rpm

 第4期:2011年11月~2016年11月 550馬力/6400rpm、64.5kg-m/3200-5800rpm

 第5期:2016年11月~現在     570馬力/6800rpm、64.5kg-m/3300-5800rpm 進化の度合いに注目すると、第2期から第3期にかけて出力/トルクが大きく引き上げられたことに気付く。その後も、第3期から第5期にかてけは40馬力/2kg-mのアップ幅と、この時期もかなりの引き上げ幅を示している。

 ターボチャージャーによる過給メカニズムを知る人にとっては、驚くに足らぬ進化幅とも言えるかもしれないが、量産車のターボシステムを考える上では、GT-Rが残してきた進化の足跡は、時代の流れと共に日々変化する自動車工学の進化を、肌身で感じさせるものである。というのは、ターボチャージャーによる過給効果は、過給圧を上げることで簡単に出力を引き上げることができるからだ。

 しかし、高い過給圧は、スロットルレスポンスに対するリニアリティを失わせる結果にもなり、ドライバビリティの点で扱いにくさを強める特性がある。極論すれば、自然吸気エンジンと同等のドライバビリティを保ちながら、発生する出力/トルク値はターボ過給による力強いものを実現することが、ターボエンジンの理想型と言えるものである。

 怒涛のパワーアップの”カギ”はタービンにある

 さて、GT-RのVR38DETT型エンジンだが、進化の度合いを追ってみると、第1期から第2期への進化は、過給圧はそのままに制御系の対策で得たものと推測できるが、第2期から第3期への変化は、過給圧の引き上げ、あるいはタービン、またはタービンサイズの変更(大径化)が考えられる。

 タービンの変更とは、高効率形状のタービンブレードに変更されたという意味で、タービンサイズの変更とは、タービン径そのものを大径化して圧送空気量を増加させることをいう。いずれにしても、過給圧の変更、タービンサイズの変更といった対策は、出力/トルクの増強という点から見れば、いとも簡単に実現できるのだが、それの引き替えとして、ドライバビリティの悪化がつきまとってくる。

 このドライバビリティの悪化を防ぐ手段が、ターボ系の制御技術で、燃料供給から点火系、吸排気効率とエンジンの運転に関わるあらゆる項目が関わってくる。こうした精緻な制御技術の進歩によって、同一エンジンで出力/トルクを引き上げながら、ドライバビリティを損なわない扱いやすい特性が実現可能となる。 先に、量産車のターボシステムと前提条件付けをしたのは、扱いやすさを損なったエンジン特性は量産車として許されることではなく、いかに高性能車といえども、ドライバビリティの確保が最優先事項として位置付けられているからだ。

 ちなみに、GT-Rシリーズには、2014年に「NISMO」グレード加えられ、出力/トルクは600馬力/66.5kg-mと通常のGT-Rシリーズを上まわる数値に設定された。このGT-R NISMOには、FIA-GT3規定に従った市販レーシングカー「GT-R GT3」で使われたタービン径の大きな通称「GT3タービン」が装着された。

 厳密な比較でいえば、ドライバビリティに関しては、通常のGT-Rシリーズのほうが優れるが、GT3タービンを装着したGT-R NISMOのドライバビリティが著しく劣るかといえば、決してそんなことはない。一般公道を走行する上で、扱いにくさを感じさせない仕上がりとなっている。

 ターボエンジン搭載車の出力/トルク値は、過給圧の引き上げで簡単に高めることができる。しかし、それの引き替えとして、ドライバビリティが悪化することは、絶対に許されることではない。GT-Rの出力/トルク値アップの歴史は、言い換えれば、ターボ制御技術の進化を表したもの、と言ってもよいだろう。

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みんなのコメント

4件
  • 長いと言われているが過去の名車は総じて長いモデルがたくさんある
    初代NSXも15年だし、ジムニー、ランクルなんかもそう

    現行GT-Rは間違いなく名車になるだろう車
    コロナ禍でよくわからないがオーダーストップしてるらしいし、生産終了のアナウンスが響いたらまた評価もあがるだろう
  • 初期型でも吸排気変えてECU書き換えの圧上げで570は出ますよ。その先は燃料足りなくなりますのでサードやHKSの燃ポンとインジエクターに変えれば600でトルク80にできます。
    既に保証も何も無いモデルは車検に通ることを前提にチューニングを楽しむのも良いと思います。
    初期型なら近接排気音の縛りも緩いので社外品のキャタライザーとマフラー付けてそのままギリ車検通るのが魅力でもあります。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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