2022年8月23日に登場した、新型「シエンタ」。売れ筋モデルのフルモデルチェンジとあって、登場前から注目が集まっていた新型シエンタだが、「コンパクトカーの運転のしやすさ」と「ミニバンの利便性」を深化させたという仕上がりは、大ヒット間違いなしの様相だ。
そんなシエンタは、ご存じのとおり、ホンダ「フリード」と長年熾烈な販売競争を繰り広げている。現行フリードは2016年の登場ではあるが、いまだに商品力の高いモデルで、ここ数年はフリードに軍配が上がっている状況。もちろん、新型となったシエンタのほうが、商品力も高く、魅力的ではあるが、フリードの存在は、けっして軽視はできない。シエンタは、新型となって、ライバルであるフリードに対し、どれほどのアドバンテージを得たのだろうか。
めっちゃ売れそう…新型シエンタ発売!! 強敵フリードを完全に超えたか? 勝負の余地ありか??
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、HONDA
オシャレカワイイ系のデザインと、2列目の広さが魅力的
新型シエンタの強みのひとつが、新しくなったエクステリアデザインだ。ボディサイズは従来通りの5ナンバーサイズに収めながら、エクステリアデザインはこれまでのカワイイ系から、フレンチな香りが漂うオシャレカワイイ系へと進化。サイドガードやフェンダーデザインなどは、ルノーカングーやシトロエンC3あたりがやっていそうなテイストを取り入れている。現行フリードのカッコ良い系デザインとは、明確に異なる方向だ。
先代のシエンタは、2018年9月のマイチェンで、昨今のキャンプブームをいち早く取り入れ、アウトドアグッズをたくさん積むことができるように3列目シートレスとした2列シート5人乗りグレードの「FUNBASE(ファンベース)」を追加している。さらに2019年10月には、特別仕様車「GLAMPER(グランパー)」を追加。
この特別仕様車の効果はバツグンで、2019年のシエンタの販売台数は、前年に対し18%も伸び、フリードを突き放すことに成功した。新型シエンタも、アウトドア向きデザインに近く、この手のコンパクトカーを希望する顧客の琴線に、大いに触れることだろう。
もう一つの強みが、2列目空間を拡大したことだ。先代シエンタも、3列目を気にしなければ、2列目はたいへん広かったのだが、新型では、前後席間を80mmも拡大(カップルディスタンスはクラストップレベルの1,000mm)。買い物かごを、足元にそのまま置けるほど、広くなった。
また、330mmと低いフロア地上高はそのままに、パワースライドドア開口部の高さを1200mm(従来比で+60mm)も広げ、乗降性をさらに改善。室内高も1300mm(+20mm)と高く、より開放感ある車内になった。後席両側のスライドドアには、ハンズフリー開閉も備えている(Zグレードに標準装備)など、扱いやすさも格段に進歩した。
安全装備に関しては、新型シエンタは「トヨタセーフティセンス」を全グレード標準装備しており(歩行者だけでなく自転車も昼夜感知できる)、中身も最新で頭ひとつ抜けている。
いずれの改良も、ユーザーの声を聴きながら、限られた室内スペースで実現できることを、一つ一つ丁寧に実現していった結果だ。今作のシエンタも、「仕上がった一台」だといえるだろう。
インテリアの高級感は、フリードが有利か
フリードの長所は、スタイリッシュな男らしさだ。「キッ」とつり上がったアイラインやフロントグリル形状、直線基調のサイドラインなど、かつての「ストリーム」や「オデッセイ」のような、「クール&ワイルド」なデザインとなっている。インテリアも、木目調のダッシュボードや、シートやインパネ、センターコンソールの素材などが質感高く、ワングレード上のクルマのように感じる。
2019年のマイナーチェンジ追加された、クロスオーバースタイルテイストの「CROSSTAR」(クロスター)。フロントグリルとバンパー、サイドシルガーニッシュ、リアロアスポイラー、ルーフレール、専用アルミホイールなど、標準モデルと異なる専用エクステリアが与えられている
一方の弱点は、超低床パッケージゆえの3列目シート跳ね上げ固定式だ。格納をしても、思ったほど荷室が広くならないと、苦労されているユーザーが多いようす。シエンタのように、2列目シート下への床下収納の方が、はるかに空間を有効活用できるのは間違いない。
新型シエンタを比較すると、エクステリアデザインは、新型シエンタが「オシャレカワイイ」系へと改良したことで、新たな顧客へアピールできるだろう。インテリアに関しては、高級感はフリードのほうが上だが、子育て世代など、利便性を重視するユーザーには、新型シエンタの方が、うまくハマる点が多いかもしれない。
新型シエンタの納車が始まるころには、次期型フリードの姿も??
新型シエンタは、ハイブリッド車/ガソリン車ともに、2023年4月以降の生産予定だという。シエンタとフリードの両モデルはこれまで、シエンタがフルモデルチェンジした翌年に、フリードがフルモデルチェンジをするというパターンが続いており、今回もおそらく2023年には、次期型フリードが登場するだろう。もしかすると、新型シエンタの納車が始まるころには、次期型フリードの姿が見えているかもしれない。
フリードは、軽自動車であるN-BOXを除くと、ホンダのラインアップのなかで最も売れているモデル。フィットが苦戦をしている現在、ホンダにとってフリードの失敗は許されず、相当な気合の中で開発をしていることだろう。2023年は、コンパクトミニバンが熱そうだ。
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みんなのコメント
見た目はフリードのほうがカッコイイかな。