■走りながら「CO2」を回収するトヨタ「水素エンジンカローラ」とは
2023年11月11日にトヨタは、スーパー耐久シリーズ2023の最終戦に参戦。
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従来から開発を進めている液体水素で走行する「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(以下水素エンジンカローラ)はどのような進化を遂げたのでしょうか。
水素エンジンカローラは、これまで気体の水素、そして液体の水素と燃料の性質を変えつつ、水素社会の実現に取り組んでいます。
液体水素を燃料とする水素エンジンカローラは、2023年5月の24時間レースで初参戦しました。
そうした中で今回の水素エンジンカローラについて、TOYOTA GAZOO Racingの高橋智也プレジデントは次のように話しています。
「前回参戦したオートポリスから約3か月の間に大幅の進化を遂げています。
これはエンジニアだけじゃなく、多くの仲間がいるからの進化出来ました。
今回は『エンジン性能』『航続距離』『車両車重』『CO2回収』と大きく4つのカイゼンを行っています」
エンジン性能について、基本的に高出力実現のためには液体水素ポンプが安定して高い燃料圧力を発生させる必要があります。
その課題であった液体水素ポンプの昇圧性能と耐久性の向上により、今回の最終戦でガソリンエンジンおよび気体水素搭載時と同等レベルの出力を実現したと言います。
航続距離では、給水素時満タン判定の精度向上、タンク内への入熱低減によりボイルオフガス量の低減、アクセルが全開ではない時の燃料噴射量最適化などの改良を行ったと言います。
この部分について水素プロジェクトを統括する伊東直昭氏は「2023年5月に行われた富士24時間レースでは、1回の給水素で走行できる最大の周回数が16周でしたが、今回では20周を目標としてレースに挑みたいと思います」と語っています。
車両重量には、安全安心第一の軸は変えず、これまでの走行で培った知見を活かしてカイゼンしています。
その中で軽量化できる部品を特定し、厚さや数の調整等による軽量化を実現。
特にタンクを作り直し、外板厚を法規に沿って薄くしたこと。安全弁・ボイルオフガス弁、ロールケージ、高圧部水素系部品などを軽量化したことでオートポリス時と比べて1910kgから50kgの軽量化となる1860kgとなっています。
車両重量のカイゼンについて前出の高橋氏は「車重は後続距離向上だけでなく、ドライバーのタイムやサスペンションへの影響など全体的に良い効果が出ています」と話しています。
CO2回収については、車両や工場から排出されるCO2を減らすだけでなく、大気中のCO2も回収していくことがカーボンニュートラル実現のために必要です。
今回の水素エンジンカローラでは、内燃機関が持つ「大気を大量に吸気する特徴」と「燃焼により発生する熱」を活用し、CO2回収装置をエンジンルームに装着し、大気中のCO2を回収する挑戦を試験的に行います。
具体的には、エアクリーナー入口にCO2を吸着する装置とエンジンオイルの熱によってCO2を脱離する装置を設置。
熱により脱離したCO2は吸着溶液で満たされた小型タンクに回収されます。
なおCO2の吸着・脱離・回収には、川崎重工業が開発した「従来よりも低温でCO2脱離できる吸着剤」を塗着させたフィルターを使用してCO2の回収効率を上げているようです。
なお前出の伊東氏は「今回のCO2は気体として回収し、タンク内の水に取り込む仕組みとなり、現在ではサーキットを1周走行すると20gを回収しています」と話しています。
また前出の高橋氏は「今回のCO2回収技術への挑戦はあくまでも最初の一歩なので、今後進めていくことでトヨタだけでなく様々な仲間が集まり、大きなプロジェクトにしていきたいと思います」と話しています。
※ ※ ※
なお、今回「水素エンジンハイエースの走行実証」をオーストラリアで開始したことも合わせて発表されました。
スーパー耐久シリーズへの参戦を通して鍛え続けている水素エンジン技術を将来の実用化に向けてさらに鍛えるため、水素エンジンを商用ハイエースに搭載。
建設会社、警備会社の運行による走行実証を2023年10月23日から2024年1月の約4か月間にオーストラリアのメルボルン近郊の公道で行う計画です。
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