燃費を重視する制御はあるがアンダーパワー気味なのが難点
コンパクトなクロスオーバーSUVとして登場したトヨタ・ヤリスクロス。すでに人気は沸騰していて試乗もしないまま予約したユーザーは4万人ほどもいるという。その多くはFFのハイブリッドモデル(HV)を選択しているというが、「SUVであるなら4輪駆動(4WD)であるべき」というのが僕の持論だ。ヤリスクロスにも4WD仕様の設定はある。そこで、ここでは4WD仕様の走りとシステムに特化してリポートしたいと思う。
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ヤリスクロスには1.5リッター3気筒のダイナミックフォースガソリンエンジンにコンベンショナルな電磁クラッチを使用するオンデマンド4WDと1.5リッターHVにトヨタが得意とするE-Fourシステムを採用した2種類の4WDが設定されている。1.5リッターガソリンモデルのシステムは一般的に生活四駆と呼ばれるもので、通常走行時は前輪駆動のFFとして走行し、悪路などで前輪が空転すると後輪へ駆動力を伝えるクラッチが作動して4WDとなるものだ。
このシステムのキモは電磁クラッチをどのように作動させるかで、燃費を重視するならできるだけFF状態で走らせ、安定性を重視するならつねに弱く締結させることが求められる。ヤリスクロスでは燃費を重視する制御が採用されているので、前輪が明確にスリップしないとクラッチは作動しない。ただ実際のところ1.5リッターガソリンモデルは車重に対してアンダーパワー気味であり、滑りやすい路面や登り勾配のきつい山岳路では明らかにパワー不足感を否めない。
HVモデルはTNGAによって居住性などを犠牲にせず4WD化
一方、HVモデルはトルク・パワーに優れ山岳路でも実用性が高そうだ。HV+e-fourの組み合わせはTNGAプラットフォームの利点を最大限に活かし、居住性や荷室スペースなどを犠牲にすることなく4WD化を可能としている。
HVでは発進が電気モーターになるため、前輪モーターの141N・mとリヤモーターの52N・mの計193N・mのトルクを一瞬にして引き出せる。ガソリンモデルはCVTを介し4800回転までエンジン回転数が高まってようやく145N・mのトルクを発揮するので瞬発力は圧倒的に異なるのだ。
しかし、後輪モーターが最大トルクで走行アシストをするのは時速10kmまで。その後はトルクを絞っていき25km/hでアシストを行わなくなる。いわゆる滑りやすい路面での発進時専用のアシスト制御で、プリウスのE-Fourと似たような仕様となっているのだ。
また走行中は50~75km/hの範囲までは後輪駆動アシスト制御が入るケースもあるが、ほぼFFのHV状態になる。RAV4のE-Fourシステムでは後輪モーターもV-MAX(最高速度)付近までアシスト可能で高速安定性を高めているが、ヤリスクロスのE-Fourは生活四駆の制御範囲を超えていないのは残念なところだ。E-Fourシステムを搭載することで約80kgも重量が増し、コストもかかるので価格は25万円ほど高くなる。
試乗してみるとエンジンが始動したときのサウンドがほかのモデルと大きく異なっているのがわかる。これは後輪モーターやバッテリー位置の関係でマフラーの取りまわしが専用となっていることから起こるようだが、V6エンジンのような迫力のある音質で好印象だ。
また重量増加はネガティブ要素なはずだが、発進時は前後モータートルクの力強さで感じさせず、高速走行では慣性質量の大きさからコースティング燃費が高まり、実用燃費はむしろ高くなる傾向が見られた。また車体前後の重量配分もよくなり、そもそも4WD仕様はリヤサスペンションがダブルウイッシュボーン化されていて動きがよく、走りの質感が高く感じられるのだ。
じつはヤリスクロスの4WDモデルにはドライブモードの選択スイッチも備わっていて、ガソリンモデルでは「マッド&サンド」「ノーマル」「ロック&ダート」の3モードが、E-Fourでは「スノー」「ノーマル」「トレイル」の3モードが選択できる。これらは対角車輪空転時などでブレーキに個別制御を加えることで緊急脱出性を高めるための装置と言えるが、オフロードで4WDらしい走破性を確保するレベルのものではない。
北米でも中国でも欧州でも、クロスオーバー系SUVの販売をけん引しているのは2輪駆動のFFモデルだ。低コストで流行のSUVに乗れれば市街地地域のユーザーは十分なのだ。だが降雪地域、山岳地に住まうユーザーなら本格的な4WD性能が必須だ。ヤリスクロスの4WDシステムの現状は、市街地で生活するユーザー向けであるということを記しておきたい。
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みんなのコメント
流行りで買う層向けだから、クロカン4WD並みの性能は要らんと判断して作ってるし、そもそもコレで山岳路は行かないよ。