レクサスのミニバンの新機構を、世良耕太がわかりやすく解説する。
乗り心地を高める秘策
レクサスの新型「LM」が上海モーターショー(4月18日~4月27日)で世界初公開された。車名のLMは“ラグジュアリームーバー”の略である。日本での発売は2023年秋頃を予定。
先代はショーファードリブンカーとしての用途に軸足を置いて開発されたが、新型は「ドライバーの意図に忠実な走り」を、意識している。それが、後席乗員の安心感にもつながるという考えからだ。注目すべき技術について見ていこう。
ボディは骨格強化のためにブレース(すじかい状の部品)やリインフォースメント(補強部品をさらに補強する部品)などの補強材を追加し、ボディ剛性を高めたという。ボディのねじり剛性は従来比で約1.5倍というから、かなりの向上である。ボディがしっかりするとサスペンションが狙いどおりに動くので、乗り心地が良くなり、操縦性や安定性が向上するはずだ。アッパーボディやフロアには構造接着材を採用したというが、これもしっかりした乗り味の実現に効く技術である。
そのうえで、リニアソレノイド式アクチュエーターと周波数感応バルブを併用した「周波数感応バルブ付きAVS」をレクサスとして初採用。AVSはAdaptive Variable Suspension(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)の略で、減衰力を可変制御するダンパーを搭載していることを意味する。
AVS自体はレクサス「RX」や「GRスープラ」の一部グレードに標準装備、「カローラ・スポーツ」にオプション設定されているが、レクサスLMの場合は周波数感応バルブを適用したのが特徴だ。石畳や砂利道など、高周波の入力が連続して生じるようなシーンで効果を発揮し、車輪の振動をボディから遮断させて動きを落ち着かせられるはずだ。
さらに新型LMではドライブモードセレクトに「Rear Comfort」をレクサスとして初採用した。AVSの減衰力特性を後席の乗り心地優先としつつ、アクセルやブレーキを統合制御することで加減速時の姿勢変化がより少なくなるセッティングにしたという。減速時に前のめりになったり、加速時に首がのけぞったりするような、ピッチ方向の動きを抑えているだろう。
ドライバーのことも考えたミニバンかショーファードリブンに特化した4人乗り仕様(国内にはこの仕様から導入される予定)では、後席に専用の独立シートを装備。レクサスとしては初めて、アームレストとオットマンにもシートヒーターを採用したのも快適性を高めるポイントだ。さらに後席専用の「温熱感IRマトリクスセンサー」を設定した点にも後席乗員への特別な配慮を感じる。
“IR”とあることから赤外線をキャッチするセンサーなのだろう。本センサーを利用し、乗員の顔、胸、大腿、下腿の体の部位を4つに分けて温熱感(温かさ/冷たさ)を推定し、エアコンやシートヒーターを一括コントロール。車内を常に快適な温度に保つという。最先端技術の導入に貪欲なレクサスらしい、“おもてなし技術”だ。
パワートレーンについては、2.4L直列4気筒ターボハイブリッドシステム(eAxle)と、2.5L直列4気筒ハイブリッドシステム(E-Four/FF)を設定するとの発表があるのみ。いずれも、2022年11月18日に発売された新型RXに次いでの適用だ。
前者はフロントに高トルクな2.4リッター・ターボエンジンとモーター、それに6速ATを組み合わせて搭載。リヤには高出力モーター=eAxle(イーアクスル)を搭載し、エンジンの動力で前輪を、モーターで後輪を駆動するAWD(全輪駆動)だ。バッテリーには高出力が特徴のバイポーラ型ニッケル水素電池を採用。高効率かつレスポンスに優れた動力性能を提供するため、発進デバイスにトルクコンバーターではなくクラッチを採用する。
また、アクセルを踏み込んだときに発生するエンジンの応答遅れ(いわゆるターボラグ)を解消するため、応答性の高いモーターでアシストする制御を取り入れているのも特徴だ。
トヨタ/レクサスの最新かつ高性能なパワートレーンが、2.4L直列4気筒ターボハイブリッドシステム(eAxle)である。
2.4L直列4気筒ターボハイブリッドシステム(eAxle)を、ショーファードリブンに特化した4人乗り仕様にも設定したのは注目すべきポイントだ。レクサスLMは後席乗員に安楽に移動してもらうだけの乗り物ではないことを示している。適用された技術からは、ドライバーも楽しめるラグジュアリームーバー像が浮かび上がってくる。
運転しても楽しいと思われる新型LMは、ミニバンへの考え方が大きく変わるかもしれない1台となりそうだ。
文・世良耕太 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
全幅が常識的なサイズなのも日本向けだと思う。
でも注文殺到で納期がオリンピック並みになりそう。