もくじ
どんなクルマ?
ー 通算200万台を超える人気モデル
ー すべてが新しくなったGLEの車内
ー プラットフォームも新開発
どんな感じ?
ー 快適至極なクルージング
ー 新技術満載の駆動系統と脚まわり
ー 遠心力を打ち消す「カーブ傾斜機能」
「買い」か?
ー トップクラスの訴求力
スペック
ー メルセデス・ベンツGLE 450 4マティックのスペック
レンジローバー・イヴォーク新型 マイルド・ハイブリッド初搭載 内装/英国価格
どんなクルマ?
通算200万台を超える人気モデル
メルセデス・ベンツGLEは、初代がMクラスとして登場した1997年以降、200万台を超えるセールスを上げている、人気モデルのひとつだ。クルマの佇まいは、成功者としての雰囲気にあふれている。そして今回の4代目は、新たなターゲット層も視野に入れることにしたようだ。
現代のプレミアムブランドがラインナップするSUVには、幅広いボディサイズや様々なモデルが存在する。これらの中で自らを目立たせ、興味を持ってもらい、選択してもらうためには、明確な特徴が必要となる。メルセデス・ベンツ製SUVの中でもベストセラーといえる、最新のGLEの特徴をひもといてみたい。
激しい競争を勝ち抜くため、4代目となるGLEは、プラットフォームをはじめとする技術の面から新しく生まれ変わった。このコンポーネンツを採用し、2代目となるGLEクーペや3代目となるGLSも2019年に登場する予定になっている。これまでの3代目GLEも、アウディQ7やBMW X5、レンジローバー・スポーツなどと渡り合ってきたから、4代目にかかる期待はかなり大きい。
GLEに投入された新技術の数々には、驚かされる。何しろ旗艦モデルのSクラスをはじめ、他のどんなモデルも搭載していない機能まで盛り込まれているのだ。この7シーターのSUVが、メルセデス・ベンツの技術のパイオニアとして、需要な役割を果たすことになるといえる。
はじめに新しいGLEを見て真っ先に気づくことは、ボディがさらに大きくなったということだろう。アメリカで生産されるメルセデス・ベンツ初のモデルとして、GLEが登場したのが今から21年前。その時のモデルから全長は伸び続け、5m目前の4924mmとなった。初代から105mmも大きくなっている。ホイールベースは80mm成長し、2995mmになり、大きくなったボディを支えると同時に、インテリア空間もより豊かにしている。
すべてが新しくなったGLEの車内
大きくなったフロントドアを開けて車内へと乗り込めば、これまでにない豪奢なしつらえに、すぐに気づくだろう。従来モデルからあらゆる箇所が作り変えられている。そして新しくなったフロントシートは、適度に固くなり、身体を従来以上にしっかりと支えてくれる。
オプションとなるレザーやウッドトリムだけでなく、すべての素材は高品質で、従来のSUVでは見ることがなかったようなレベル。ステアリングを握り、エンジンをスタートさせる以前から、ラグジュアリーな雰囲気でドライバーを包んでくれるに違いない。
何層かに重ねられたようなダッシュボードには、近年のメルセデス・ベンツが採用していたタービンのような円形のエアベントに代わって、長方形のデザインのものに置き換えられた。ドライバー正面のダッシュボード上部には、2面の高精細なモニターが配置され、計器類の表示とインフォテインメントシステムのインターフェイスとなる。
そのインフォテインメントシステムは、メルセデス・ベンツ製の新しいMBUXオペレーションシステムによって稼働。操作は音声認識でも可能なほか、ステアリングのスポークにレイアウトされた小さなタッチパッドと、センターコンソールの大きなタッチパッドを用いて、指先でのジェスチャーコントロールにも対応している。
オプションのヘッドアップディスプレイも新しくなり、450×150mmのスクリーンサイズに720×240ピクセルの解像度を持つ高精細なものになった。渋滞時などで機能するアクティブ・ストップ&ゴーと呼ばれる半自動の運転支援システムは、さらにドライバーの支援範囲が広がっている。
車内空間ももちろん広くなり、やや見下ろすようなコマンディング・ポジションの着座姿勢ながら、頭上空間や肘周りにも余裕を感じる。Aピラーの角度が立てられたことで、空間も視覚も改善している。体を支える時に握るハンドルバーと一体になったセンターコンソールもふくよかで、ドライバーとパッセンジャーを隔て、独立したゆとりのある空間を演出している。
プラットフォームも新開発
そして後部座席の空間は、飛躍的に広くなった。ホイールベースが80mm伸ばされているが、後部座席のレッグルームは69mmも広げられたうえ、リアオーバーハングも伸ばされたことで、3列目シートの空間にも余裕が生まれている。そしてすべてのシートには、オプションで6ウェイのパワーシートも選択が可能。3列目を有効にした状態のラゲッジスペースは60ℓと小さいが、3列目をたためば630ℓにまで広げられる。2列目シートを前方にスライドさせれば、825ℓにまで拡大し、2列目シートも折りたためば2225ℓもの大空間が生まれる。
新しいGLEには、MHA(Modular High Architecture)ストラクチャーと呼ばれる新開発のプラットフォームが採用され、旧モデルよりもボディ剛性は33%も向上している。フロントとリアのサスペンションマウントには鋳造アルミが用いられるなど、適材適所で複数の金属素材が組み合わされている。そのおかげで、従来のMRA (Modular Rear Architecture) プラットフォームより一回り大きくなっているのにも関わらず、プラットフォーム単体での重量は従来のものと変わらず、486kgとなっている。
サスペンションは、大きな改良を受けたダブルウイッシュボーン式がフロントに、マルチリンク式がリアに採用されている。エントリーグレードにはスチールコイルにアダプティブダンパーの組み合わせとなるが、上級グレードには3チャンバー式で車高調整機能も付いたエアマチックと呼ばれるエアサスペンションが装備される。
GLE 450 4マティックには、メルセデス・ベンツ最新の「Eアクティブ・ボディコントロール」の選択も可能。エアマチック・システムの機能を進化させ、作動電圧を48Vに高め、ステレオカメラが路面状況をスキャンし、各車輪のエアスプリングとダンパーの硬さや減衰力を個別に調整する。横方向のボディロールを補正するだけでなく、ピッチやダイブなどの前後方向の制御も自在といえるだろう。
前置きが長くなったが、試乗を始めよう。
どんな感じ?
快適至極なクルージング
GLEに搭載されるエンジンのラインナップは、英国の場合、当面はガソリンの2種類のみとなり、GLE300d 4マティックに搭載される、245psと50.9kg-mを発生する2ℓ4気筒ディーゼルターボか、今回の試乗車でもある、GLE450 4マティックの2.9ℓ6気筒ガソリンターボが選べる。2019年後半には、6気筒ディーゼルと、AMGチューニングのガソリンエンジンも登場する予定だ。
この2.9ℓ6気筒エンジンは、新しいガソリン・ディーゼルユニット・ファミリーに属し、メルセデス・ベンツがEQブーストと呼ぶ、マイルドハイブリッド・システムも搭載している。48Vのスターター・ジェネレーターがトランスミッションの前方に組み合わされ、リチウムイオンバッテリーからの電力で、加速時には22psと25.3kg-mをアシスト。パフォーマンスを向上させるだけでなく、好燃費にも寄与している。
このエンジンは、CLS450やS500にも搭載されているものだが、チューニングは特別仕立て。低回転域から力強い加速を披露し、スロットル操作に合わせてレスポンス良くスピードを上げていく。しかも車内への音振の侵入はしっかり抑えられ、快適至極。GLE450 4マティックの穏やかで静寂に包まれたクルージングは、特筆に値する。
標準装備される9速ATは、シフトアップ、シフトダウンともにシルキーといえる滑らかさ。ステアリングホイールに搭載されたシフトパドルを操作すれば、ドライビング状況に関わらず即座に変速を終える。市街地などの低速域では最適な段数を常に選択してくれるし、ハイペースで郊外の道を飛ばせば、変速タイミングが変化し、高回転域までエンジンを回したドライビングも可能。
加えてアクセルペダルから足を離して惰性走行している状況では、ATに組み合わされたクラッチがエンジンと駆動系を切り離し、効率を高めるメカニズムが実装されており、ドライブトレインの秀逸さを一層高めている。
新技術満載の駆動系統と脚まわり
GLE450 4マティックは、メルセデス・ベンツの6気筒や8気筒を搭載する上位モデルの中でも初めてとなる、最新の四輪駆動システムを採用。駆動力は前輪もしくは後輪へ100:0の比率で完全に分配することが可能で、SUVとしてのオフロードでの走行性能向上に加えて、舗装路面での活発な走りにも貢献している。
この優れた動力性能と相まって、印象的なほどのハンドリング性能が、GLE450の大きなボディと車重の存在を完全に忘れさせてくれる。その仕上がりは、特筆すべき偉業だといえるほど。従来モデルと比較してステアリング操作時の正確性やフィードバックは明確に向上。現代のラグジュアリーSUVに搭載されることが多い後輪操舵システムは付かなくても、ステアリングの重みは違和感がなく、進路変更のレスポンスにも優れている。
駆動力を自在に変更できる四輪駆動システム、4マティックは、オンロードにおいて卓越したグリップ力とトラクションを披露し、極めて優秀なハンドリングを実現。路面状況や天候を心配する必要性は、ないとさえいえそうだ。
さらにこの新しいメルセデス・ベンツの最大の強みは、ボディコントロールにある。オプションとなるが、Eアクティブ・ボディコントロールが、各車輪のスプリングとダンパーを個別に制御。かなり活発に走らせても、減衰力を調整することで加減速時のピッチングやダイビングを補正し、GLE450のボディを常にフラットに保ってくれる。
遠心力を打ち消す「カーブ傾斜機能」
加えてこのEアクティブ・ボディコントロールには、ドライビングモードの拡張機能として、コーナリング時のボディロールを補正する「カーブ傾斜機能」も備えている。インフォテインメントシステムのモニターで機能をONにすれば、フロントガラスに搭載されたステレオカメラが路面をスキャニングし、エアスプリングを伸縮させることでボディをコーナー内側へ傾かせることができる。
この設定には3段階あり、最も機能が強く働く状態では車体を傾けることで遠心力を打ち消し、スポーツ・エステート並みのコーナリングを実現している。乗り心地が良く背の高いラグジュアリーSUVとは思えない走りだと思う。機能の働きも自然で、介入が早すぎるということもなく、タイヤのスキール音を聞くことなく、ワインディングを自信を持って爽快に走らせることができるはずだ。しかもこれらの制御は、古いGLEのように、少しおせっかいに感じることもなく、本当に必要な時に、必要な分だけ機能してくれる。
といっても、他のドライビングモードとは明らかに異なる、よりシャープなターンインを示すようになるから、「カーブ傾斜機能」は慣れるまでに少し時間が必要かもしれない。でも一度慣れてしまえば、その機能を発揮するに相応しい道でなら、GLE 450は信じられないほど滑らかなハンドリングを味わわせてくれる。このサスペンション・マジックが、メルセデス・ベンツの他のモデルに搭載される日も近いに違いない。
乗り心地も秀逸。舗装面の凹みやうねりがあったとしても、一般道での走行スピードなら極めて素晴らしいマナーを見せ、裏路地の路面に大きな路面の剥がれがあっても、何事もなかったかのように通過する。
エクステリアデザインは空力に配慮され、Cd値は0.29と小さく、燃焼効率を追求したマイルドハイブリッドシステム搭載のエンジンが組み合わさり、長距離ドライブももちろんお手の物。 GLE 450 4マティックの燃料タンクは85ℓの容量があり、燃費は12.0km/ℓとうたわれているから、理論上の航続距離は1000km弱と考えて良いだろう。
「買い」か?
トップクラスの訴求力
4代目となったメルセデス・ベンツGLEは、メルセデス・ベンツのラインナップの上でも位置づけが1ランク上がったように感じられる。より広い車内空間に極めて上質な洗練性と、不満のない装備を知ると、ドイツ製の上級ラグジュアリーモデルの中でも、並ぶクルマが見当たらないとさえ思える。
GLE450 4マティックは7シーターを備え、オンロードもオフロードも選ばない、突出したファミリー・トランスポーターとして、非常に高次元な完成度を備えたSUVだといえるだろう。
アウディQ7や最新の4代目BMW X5、レンジローバー・スポーツなどと比較して考えると、ラグジュアリーSUVの訴求力ではトップクラスといえる。他のモデルの立ち位置が危うくさえ感じてしまう。
メルセデス・ベンツGLE 450 4マティックのスペック
■価格 6万2300ポンド(922万円)
■全長×全幅×全高 -
■最高速度 249km/h
■0-100km/h加速 5.7秒
■燃費 12.0km/ℓ
■CO2排出量 190g/km
■乾燥重量 2415kg
■パワートレイン V型6気筒2999ccマイルドハイブリッド・ターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 367ps/5500rpm
■最大トルク 50.9kg-m/1600rpm
■ギアボックス 9速オートマティック
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