ホンダのスーパースポーツであるNSXが生産終了し、その最終モデルとして「タイプS」を限定発売(国内30台)することが発表された。
NSXのタイプSといえば、走りの楽しさを追求した仕様として1997年に初代NSXにも追加設定されたグレードだ。現行型の最終モデルとして今注目を集めているタイプSだが、初代のNSXタイプSとはどんなモデルだったのか?
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初代タイプSの意義と実際の走りの実力について振り返るとともに、現行型タイプSについても公表されているスペックからその実力を考察していく。
文/斎藤聡
写真/ホンダ
【画像ギャラリー】「タイプS」を画像で再確認!
■サーキットベストとして生まれた「タイプR 」
1990年、日本初のスーパーカーとしてNSXは誕生しました。NSXは、その存在がスターであり日本屈指のスポーツカーでしたが、あくまでも軸足はあくまでもストリートにありました。
初代NSXタイプRの「R」はレースや赤(Red)を意味するRでした。1992年になってホンダは「タイプR」を発売します。
サーキットでのパフォーマンスを発揮することを目的にチューニングされており、バンパーやドアビームのアルミ化やエンジンメンテナンスリッドのアルミメッシュ化、レカロ製フルバケットシート、遮音材や快適装備を取り外すなど、120kgにも及ぶ軽量化を施すとともに、ヨー慣性モーメントの低減が図られていました。
F-16戦闘機をモチーフとしたNSXのデザインは初期のイメージカラーが銀色だったが、「R」はRA272を彷彿とさせる白いボディカラーと赤いエンブレムで登場した
もちろん足回りもサーキット走行を主眼に置いたセッティングが施されていました。硬く引き締められたサスペンションは、公道で使える限界の硬さといえるくらいハードに引き締められていました。
さらにエンジンも、スペックは変わらないものの、クランクシャフトのバランス精度やピストン&コンロッドの重量合わせ、レスポンスの向上などが行われていました。
ファインチューニングというにはあまりにも手間がかかり過ぎたもので、レースで勝利するために作られたベースモデルといった感がありました。そのくらいホンダが本気でサーキット走行を前提に作ったスペシャルなNSXであり、それゆえ特別な「R」のエンブレムを与えたのです。
これがそれ以降インテグラやシビックに展開されるタイプRの始まりになったのでした。
■ワインディングベストの「タイプS」
タイプSの登場は1997年のマイナーチェンジになります。この時マニュアルトランスミッションのエンジンが3Lから3.2Lに拡大され、トランスミッションも5速から6速に変更されます。
NSXタイプSは1997年のマイナーチェンジで登場。このマイナーチェンジで平成12年排ガス規制に適合。大多数のスポーツカーが一旦歴史を閉じるなか、2002年以降の継続販売が可能になった
エンジンのC32Bはマイチェン前のC30Aに対し外観はほとんど変わらないが、内部は至る所が設計変更されている
じつはこの排気量アップは、すべての面で整っていたNSXのバランスを、ある意味崩すことになり、再びバランスを整えるだけでももの凄い労力が必要だったのだそうです。
この時にスポーツグレードとして設定されたがの「タイプS」です。これは憶測ですが、排気量アップによってバランスを整え直していく過程で、よりスポーツドライブに適した足回りのセッティングが浮かび上がってきたのではないでしょうか。
タイプRの開発とテストによって広がった知見によって、タイプRほど振り切ったセッティングではなく、スポーツドライブをするのに適したファインチューンのノウハウを手に入れていたということです。
具体的には、足回りは引き締められていましたが、ハードというほどではなく、ダンパーの効きがしっとりとした乗り味を作り出していて、かつクルマの無駄な(細かな)動きを極力抑え込んでいる仕上がりでした。
タイプRの乗りやすさは硬く引き締められた足回りやブッシュ類のチューニングによって、ステアリング操作やアクセルのオンオフによる荷重変化がダイレクトにクルマの動きに現れる点でした。
正確な操作は要求されますが、その分操作が正確にクルマの動きに反映されるので、(ちゃんと操縦できれば)クルマとピタリとシンクロしたような一体感を得ることができました。
タイプSは、セッティングをそこまでシビアに突き詰めておらず、タイプRを走らせた時に、楽しいと思えたり、運転しやすいと感じる要素を抽出して、ストリートのスポーツドライブシーンや、ある時はサーキットでのスポーツドライブで楽しめるように味付けしていたのだろうと思います。
実際に試乗した時の記憶を思い返してみても、足回りは硬く引き締まっているのに、ゴツゴツしたところがなく、クルマが無駄な動きをしないのを強く感じました。
また3LのNSXでは時々現れていたハードコーナリング時のホイールスピンのしやすさも、イン側のタイヤがヒタッと路面に接地し、ダイナミックな走行シーンのなかでの接地性が高くなっていると感じました。
タイプSのインテリア。モモ製のステアリングとレカロ製の超軽量フルバケシートがドライブを盛り上げる
軽量化は標準仕様1340kgに対してタイプSは1320kgですが、これは正直なところわかりませんでした。ただし、レカロ製のフルバケットシートのホールド性のよさからくる運転のしやすさや、BBS製の鍛造アルミホイールの軽量化によるフットワークの軽さはドライブフィールにちゃんと表れていました。
■現行NSXは本当にココで終わらせていいのか?
そんな初代NSXタイプSの立ち位置をもとに、2代目NSX最終モデルのタイプSを予想してみると、ホンダレーシングをイメージさせるような味付けではなく、もう少しストリート寄りのセットアップになるのだろうと思います。
ただ変更内容はかなり過激です。レースカーであるNSX GT3 Evoと同じターボチャージャーを採用し、ハイブリッドの要となる2次バッテリーの出力アップが図られ、システム最高出力608馬力。システム最大トルク667Nmを発揮。さらに9速DTCは変速スピードを50%アップしているといいます。
さらに軽量アルミホイール+ピレリP-ZEROや空力性能を見直したエクステリアデザイン、スポーツハイブリッドSH-AWDのリセッティングによって、運動性能をアップ。鈴鹿サーキットのラップタイムで従来のNSXより2秒速いということです。
現行NSX タイプS。シャシーやエクステリアだけでなく制御やエンジンにまで全域で手が入り、鈴鹿サーキットのラップタイムで2秒速くなっているという
資料を見る限り、GT3用ターボの採用やシフトタイミングを50%短縮したミッション制御を勘案すると、かなりシャープでスポーティな味付けになるのだろうと思います。
現行NSXが、出来がよすぎて退屈と感じるくらい高性能をたやすく安心して発揮できることを考えれば、タイプSはより刺激的な楽しさに満ちたスーパースポーツカーになることは想像に難くありません。
唯一不満なのは、これがNSXの最終モデルとなってしまうことです。
ハイブリッドスポーツカーというのはまったく新しいジャンルで、単純にエンジンパフォーマンスだけでなく、モーターを含めたパワーユニットの性能は、バッテリー容量やプログラムによって大きく変わりますし、ましてNSXは3モーターシステムによって操縦性にも深く関与していますから、パフォーマンスをどこに据えるかはエンジニア次第なところがあります。
もっと言えば性能の限界はまだ誰にも見えていません。その先の展開として、新しい解釈のタイプRなんて妄想も容易に膨らむわけで、タイプSをもってNSXの最終モデルとしてしまうのはあまりに残念でならないということです。
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終わってしまうのは非常に残念だけど、また新しい形で復活を期待したい。