現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「タイプS」の称号は「R」の廉価版ではない!! ホンダ初代NSXタイプSの意義と実力

ここから本文です

「タイプS」の称号は「R」の廉価版ではない!! ホンダ初代NSXタイプSの意義と実力

掲載 14
「タイプS」の称号は「R」の廉価版ではない!! ホンダ初代NSXタイプSの意義と実力

 ホンダのスーパースポーツであるNSXが生産終了し、その最終モデルとして「タイプS」を限定発売(国内30台)することが発表された。

 NSXのタイプSといえば、走りの楽しさを追求した仕様として1997年に初代NSXにも追加設定されたグレードだ。現行型の最終モデルとして今注目を集めているタイプSだが、初代のNSXタイプSとはどんなモデルだったのか?

接戦のレッドブルvsメルセデス!! 前半戦ラストに明暗を分けたハンガリーGP

 初代タイプSの意義と実際の走りの実力について振り返るとともに、現行型タイプSについても公表されているスペックからその実力を考察していく。

文/斎藤聡
写真/ホンダ

【画像ギャラリー】「タイプS」を画像で再確認!

■サーキットベストとして生まれた「タイプR 」

 1990年、日本初のスーパーカーとしてNSXは誕生しました。NSXは、その存在がスターであり日本屈指のスポーツカーでしたが、あくまでも軸足はあくまでもストリートにありました。

 初代NSXタイプRの「R」はレースや赤(Red)を意味するRでした。1992年になってホンダは「タイプR」を発売します。

 サーキットでのパフォーマンスを発揮することを目的にチューニングされており、バンパーやドアビームのアルミ化やエンジンメンテナンスリッドのアルミメッシュ化、レカロ製フルバケットシート、遮音材や快適装備を取り外すなど、120kgにも及ぶ軽量化を施すとともに、ヨー慣性モーメントの低減が図られていました。

F-16戦闘機をモチーフとしたNSXのデザインは初期のイメージカラーが銀色だったが、「R」はRA272を彷彿とさせる白いボディカラーと赤いエンブレムで登場した

 もちろん足回りもサーキット走行を主眼に置いたセッティングが施されていました。硬く引き締められたサスペンションは、公道で使える限界の硬さといえるくらいハードに引き締められていました。

 さらにエンジンも、スペックは変わらないものの、クランクシャフトのバランス精度やピストン&コンロッドの重量合わせ、レスポンスの向上などが行われていました。

 ファインチューニングというにはあまりにも手間がかかり過ぎたもので、レースで勝利するために作られたベースモデルといった感がありました。そのくらいホンダが本気でサーキット走行を前提に作ったスペシャルなNSXであり、それゆえ特別な「R」のエンブレムを与えたのです。

 これがそれ以降インテグラやシビックに展開されるタイプRの始まりになったのでした。

■ワインディングベストの「タイプS」

 タイプSの登場は1997年のマイナーチェンジになります。この時マニュアルトランスミッションのエンジンが3Lから3.2Lに拡大され、トランスミッションも5速から6速に変更されます。

NSXタイプSは1997年のマイナーチェンジで登場。このマイナーチェンジで平成12年排ガス規制に適合。大多数のスポーツカーが一旦歴史を閉じるなか、2002年以降の継続販売が可能になった

エンジンのC32Bはマイチェン前のC30Aに対し外観はほとんど変わらないが、内部は至る所が設計変更されている

 じつはこの排気量アップは、すべての面で整っていたNSXのバランスを、ある意味崩すことになり、再びバランスを整えるだけでももの凄い労力が必要だったのだそうです。

 この時にスポーツグレードとして設定されたがの「タイプS」です。これは憶測ですが、排気量アップによってバランスを整え直していく過程で、よりスポーツドライブに適した足回りのセッティングが浮かび上がってきたのではないでしょうか。

 タイプRの開発とテストによって広がった知見によって、タイプRほど振り切ったセッティングではなく、スポーツドライブをするのに適したファインチューンのノウハウを手に入れていたということです。

 具体的には、足回りは引き締められていましたが、ハードというほどではなく、ダンパーの効きがしっとりとした乗り味を作り出していて、かつクルマの無駄な(細かな)動きを極力抑え込んでいる仕上がりでした。

 タイプRの乗りやすさは硬く引き締められた足回りやブッシュ類のチューニングによって、ステアリング操作やアクセルのオンオフによる荷重変化がダイレクトにクルマの動きに現れる点でした。

 正確な操作は要求されますが、その分操作が正確にクルマの動きに反映されるので、(ちゃんと操縦できれば)クルマとピタリとシンクロしたような一体感を得ることができました。

 タイプSは、セッティングをそこまでシビアに突き詰めておらず、タイプRを走らせた時に、楽しいと思えたり、運転しやすいと感じる要素を抽出して、ストリートのスポーツドライブシーンや、ある時はサーキットでのスポーツドライブで楽しめるように味付けしていたのだろうと思います。

 実際に試乗した時の記憶を思い返してみても、足回りは硬く引き締まっているのに、ゴツゴツしたところがなく、クルマが無駄な動きをしないのを強く感じました。

 また3LのNSXでは時々現れていたハードコーナリング時のホイールスピンのしやすさも、イン側のタイヤがヒタッと路面に接地し、ダイナミックな走行シーンのなかでの接地性が高くなっていると感じました。

タイプSのインテリア。モモ製のステアリングとレカロ製の超軽量フルバケシートがドライブを盛り上げる

 軽量化は標準仕様1340kgに対してタイプSは1320kgですが、これは正直なところわかりませんでした。ただし、レカロ製のフルバケットシートのホールド性のよさからくる運転のしやすさや、BBS製の鍛造アルミホイールの軽量化によるフットワークの軽さはドライブフィールにちゃんと表れていました。

■現行NSXは本当にココで終わらせていいのか?

 そんな初代NSXタイプSの立ち位置をもとに、2代目NSX最終モデルのタイプSを予想してみると、ホンダレーシングをイメージさせるような味付けではなく、もう少しストリート寄りのセットアップになるのだろうと思います。

 ただ変更内容はかなり過激です。レースカーであるNSX GT3 Evoと同じターボチャージャーを採用し、ハイブリッドの要となる2次バッテリーの出力アップが図られ、システム最高出力608馬力。システム最大トルク667Nmを発揮。さらに9速DTCは変速スピードを50%アップしているといいます。

 さらに軽量アルミホイール+ピレリP-ZEROや空力性能を見直したエクステリアデザイン、スポーツハイブリッドSH-AWDのリセッティングによって、運動性能をアップ。鈴鹿サーキットのラップタイムで従来のNSXより2秒速いということです。

現行NSX タイプS。シャシーやエクステリアだけでなく制御やエンジンにまで全域で手が入り、鈴鹿サーキットのラップタイムで2秒速くなっているという

 資料を見る限り、GT3用ターボの採用やシフトタイミングを50%短縮したミッション制御を勘案すると、かなりシャープでスポーティな味付けになるのだろうと思います。

 現行NSXが、出来がよすぎて退屈と感じるくらい高性能をたやすく安心して発揮できることを考えれば、タイプSはより刺激的な楽しさに満ちたスーパースポーツカーになることは想像に難くありません。

 唯一不満なのは、これがNSXの最終モデルとなってしまうことです。

 ハイブリッドスポーツカーというのはまったく新しいジャンルで、単純にエンジンパフォーマンスだけでなく、モーターを含めたパワーユニットの性能は、バッテリー容量やプログラムによって大きく変わりますし、ましてNSXは3モーターシステムによって操縦性にも深く関与していますから、パフォーマンスをどこに据えるかはエンジニア次第なところがあります。

 もっと言えば性能の限界はまだ誰にも見えていません。その先の展開として、新しい解釈のタイプRなんて妄想も容易に膨らむわけで、タイプSをもってNSXの最終モデルとしてしまうのはあまりに残念でならないということです。

【画像ギャラリー】「タイプS」を画像で再確認!

こんな記事も読まれています

ラリージャパンはヒョンデを駆る首位のタナクがクラッシュでトヨタのエバンスが優勝! 日本の勝田は惜しくも表彰台を逃す4位で終幕
ラリージャパンはヒョンデを駆る首位のタナクがクラッシュでトヨタのエバンスが優勝! 日本の勝田は惜しくも表彰台を逃す4位で終幕
WEB CARTOP
スズキが新型「カタナ」発売! めちゃ“レトロ感”あふれる「旧車風デザイン」に反響殺到! “鮮烈ブルー”採用した「レジェンドバイク」最新モデルが凄い人気!
スズキが新型「カタナ」発売! めちゃ“レトロ感”あふれる「旧車風デザイン」に反響殺到! “鮮烈ブルー”採用した「レジェンドバイク」最新モデルが凄い人気!
くるまのニュース
F1シート喪失ボッタスのメルセデスリザーブ復帰は「時間の問題」トト・ウルフ代表認める
F1シート喪失ボッタスのメルセデスリザーブ復帰は「時間の問題」トト・ウルフ代表認める
motorsport.com 日本版
約100万円! トヨタ最新「軽トラック」は使い勝手サイコー! 斬新モデル「エクストラ」は“豪華装備”がすごい! めちゃ「過酷な環境」で愛用される“超タフ軽トラ”の魅力とは!
約100万円! トヨタ最新「軽トラック」は使い勝手サイコー! 斬新モデル「エクストラ」は“豪華装備”がすごい! めちゃ「過酷な環境」で愛用される“超タフ軽トラ”の魅力とは!
くるまのニュース
これがなくっちゃ被っちゃいけない!?「SG規格」とは?【バイク用語辞典】
これがなくっちゃ被っちゃいけない!?「SG規格」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった
パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった
WEB CARTOP
ステーションワゴン専用モデルに刷新した新型フォルクスワーゲン・パサートが日本で販売開始
ステーションワゴン専用モデルに刷新した新型フォルクスワーゲン・パサートが日本で販売開始
カー・アンド・ドライバー
いすゞ、EV路線バス「エルガEV」の量産を開始
いすゞ、EV路線バス「エルガEV」の量産を開始
日刊自動車新聞
【オープントップ ランクル】ピックアップトラックにも転換可能!トヨタ、SEMAでオープントップ ランドクルーザー コンセプトを初披露!
【オープントップ ランクル】ピックアップトラックにも転換可能!トヨタ、SEMAでオープントップ ランドクルーザー コンセプトを初披露!
AutoBild Japan
「日本一大きい交差点」立体化完成いよいよ“秒読み段階”へ!? 「合計40車線」で“大渋滞エリア”の仙台バイパスに悲願の高架道路
「日本一大きい交差点」立体化完成いよいよ“秒読み段階”へ!? 「合計40車線」で“大渋滞エリア”の仙台バイパスに悲願の高架道路
くるまのニュース
トヨタ『カローラツーリング』などリコール…後方カメラが映らなくなるおそれ
トヨタ『カローラツーリング』などリコール…後方カメラが映らなくなるおそれ
レスポンス
【新車価格情報】国産車 デビュー&改良情報(ダイジェスト)※2024年11月20日時点
【新車価格情報】国産車 デビュー&改良情報(ダイジェスト)※2024年11月20日時点
カー・アンド・ドライバー
トライアンフの大排気量バイク「ロケット3」に“伝説のスタントマン”に敬意を込めた特別仕様車が誕生! 日本限定15台の超貴重モデルです
トライアンフの大排気量バイク「ロケット3」に“伝説のスタントマン”に敬意を込めた特別仕様車が誕生! 日本限定15台の超貴重モデルです
VAGUE
DSの新型電動SUVクーペ、年内デビューへ…ボディに描かれた「750」の意味
DSの新型電動SUVクーペ、年内デビューへ…ボディに描かれた「750」の意味
レスポンス
いま路線バスのサバイバルが始まっている! 電動バス・小型バス・二階建てバスで細かなニーズに対応することが鍵か
いま路線バスのサバイバルが始まっている! 電動バス・小型バス・二階建てバスで細かなニーズに対応することが鍵か
WEB CARTOP
トヨタ新型「ハイラックス“ミカン”」公開! タフ顔&オシャベージュ幌の「チャンプ」! 大注目の「新モデル」日本導入ありそう!?
トヨタ新型「ハイラックス“ミカン”」公開! タフ顔&オシャベージュ幌の「チャンプ」! 大注目の「新モデル」日本導入ありそう!?
くるまのニュース
大人の遊び心をくすぐるクラシックデザイン!「CRONOS」と「YADEA」がコラボ車両を発売
大人の遊び心をくすぐるクラシックデザイン!「CRONOS」と「YADEA」がコラボ車両を発売
バイクのニュース
アウディ Q7/SQ7【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
アウディ Q7/SQ7【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン

みんなのコメント

14件
  • 二代目の現行はとても一般人が買える金額ではなかったが、挑戦的な一台だったと思います。

    終わってしまうのは非常に残念だけど、また新しい形で復活を期待したい。
  • 一度だけ乗ったことがあるが並の車ではない全く別物です。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2420.02794.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

600.05900.0万円

中古車を検索
NSXの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2420.02794.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

600.05900.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村