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GR86&BRZ、兄弟車でも空力アプローチはさまざま。プロトタイプカー譲りの造形も【2023年GT300開発競争その3】

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GR86&BRZ、兄弟車でも空力アプローチはさまざま。プロトタイプカー譲りの造形も【2023年GT300開発競争その3】

 2023年のスーパーGTに参戦するGTA-GT300規定車両へ導入された『基本車両と同様の外観を維持』するという新レギュレーション。『2023年GT300開発競争その1』では導入された新規定をおさらいし、その2では実際にトヨタGRスープラGTに施されたアップデートをチェックした。今回のその3では、“兄弟車”でもあるトヨタGR86とスバルBRZの空力パーツを見ていきたい。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

風洞、CFD、両規定ハイブリッド。三車三様の独自開発が特徴のGRスープラ【2023年GT300開発競争その2】

 トヨタとスバルの共同開発により、2012年に誕生したトヨタ86とスバルBRZ。2021年には2代目がリリースされ、86はGR86へと車名が改められたが、初代から水平対向4気筒エンジンを搭載する兄弟車だ。しかし、GT300クラスでの2台は似て非なるキャラクター。SUBARU BRZ R&D SPORTは2012年から参戦を開始し、2021年には2代目BRZにベース車両を変更、一貫して水平対向エンジンを使用してきた。GR86は2022年シーズンにデビューし、エンジンはTRD製の5.4リッターV型8気筒自然吸気を搭載。車両特性が異なれば、空力へのアプローチも変わってくる。

■aprは新規定用のコンバージョンキットを用意
 GR86のGT300仕様は、レーシングコンストラクターであるaprが開発・製作し、自チームで走らせるapr GR86 GTに加え、muta Racing GR86 GTとシェイドレーシング GR86 GTの3台が参戦している。aprでは、ボディ側とフロア側それぞれで2023年規定に則したコンバージョンキットを用意した。

 2022年仕様からの主な変更点は、前後フェンダーの後方とボンネットだ。フロントフェンダー後方は上下をつないでいた外側のパネルがなくなり、下部に鋸歯状のパーツを設置。これは空気の渦を作り出してホイールハウス内の空気を効率良く引き抜くためのアイテムで、今季aprがデビューさせたapr LC500h GT、GRスープラのGT300規定車両開発において協力関係にある埼玉トヨペットGB GR Supra GTも装着している。

 リヤフェンダー後方は2023年規定に準じてワイヤーメッシュを設置し、2022年仕様ではフラットに伸びていた上面には開口部が設けられた。フロア側の詳細は明かされないが、これらはフロアも含めた全体の空力バランスを整えることでL/D(エル・バイ・ディー=揚力と空気抵抗の比)値が向上するという。aprでは車両開発時はもちろん、2023年規定への対応においても1/4スケールの風洞実験を重ねてエアロダイナミクスをデザインしている。

 シェイドレーシング GR86 GTは基本としてこのコンバージョンキットを使ったアップデートとなるが、ヨコハマタイヤユーザーのapr GR86 GTとは異なるダンロップタイヤを履くこともあり、一部のパーツをレスにするなど多少の違いがあるようだ。それほどに、空力とはシビアな世界ということ。そして2台は、空力特性が試される鈴鹿の第3戦で、ともに入賞を果たしている。

 なお、5.4リッターのV8エンジンを搭載するためにボンネットに設けられていたバルジは2023年規定で禁止された。バルジはスロットルを逃がすためのものだったが、スロットルの向きを上下入れ替えることで対処できたという。これによりボンネット面の膨らみは姿を消し、フラットになった。

■aprとは異なる“独自エアロ”のmuta GR86。セッティング勝負のBRZ
 muta Racing GR86 GTは、muta Racing INGINGとムーンクラフトのジョイントで製作したオリジナルのエアロを身にまとう。ムーンクラフトは1/4スケールの風洞設備を完備し、かつてGT300で活躍していた紫電やマザーシャシーのロータス・エヴォーラを開発してもいる。同じように風洞を使っても、aprとは導き出された答え(デザイン)が異なるのが興味深い。muta Racing GR86 GTが履くのはブリヂストン。タイヤの違いによる影響もあるのかもしれない。

 特徴的なのはフロントフェンダー後方の処理だ。膨らみとくびれがある造形は、まるでF1のサイドポンツーンのようにも見えるが、プロトタイプカーのフェンダー内を覗くと同様の形状になっているそうだ。このように上下に振り分けたような形状にすることでホイールハウス内の空気を効率良く引き抜くことができ、フロントのダウンフォースが確保しやすくなるという。サイドステップ前方は、それに合わせてデザインを変更した。

 リヤビューでは、リヤフェンダー後方にワイヤーメッシュを設置。ディフューザー上には整流パーツを設けるなど、細かいこだわりを感じる。フロアのギヤボックスの逃げにおいても、キール形状を採用していた。ボディとフロア、いずれもムーンクラフトの風洞実験により、性能が良かったことによる導入だ。そして、第2戦富士と第3戦鈴鹿で2戦連続の2位表彰台。2023年規定への対応も含めたアップデートに成功したことを証明してみせた。

■BRZのエアロバランスはリヤ寄りに。CPUとホイールもアップデート
 SUBARU BRZ R&D SPORTは、スバルとして、BRZとして、水平対向エンジンとそれにともなう低重心にこだわり続けてきた。ターボエンジンとはいえ、2リッターはGT300クラスで最小排気量。活路はコーナーでのパフォーマンスにあり、要となる空力を追い求めてきたのだ。そのひとつの解答が、2021年に採用したフロントフェンダー前方が張り出したデザイン。それが正解だったことは、2021年のタイトル獲得が物語っている。しかし今季のルールで、その最強の武器を失ってしまった。

 エアロの変更点としては、フロンフェンダー前方の張り出しがなくなり、エグリが入れられて特徴的だったリヤフェンダー後方がボックス形状となってワイヤーメッシュを設置した程度。いずれも斬新だったがゆえに見た目の違いは大きいが、メニューとしては少ない部類だ。

 リヤフェンダーについては空力的な影響はあまりないそうだが、フロントはダウンフォースを失い、新規定によってディフューザーの始点が前進したこともあり、エアロバランスは少しリヤ寄りになったという。ここはサスペンションも含めたセッティングで合わせ込んでいくことになる。

 また、空力ではないところでのアップデートとして、昨年導入を見送っていたモーテック製CPUを再採用。CPUの高速化により点火や燃料噴射の正確性が上がった。そして、今年のアップデートのなかで一番変化したというのがホイール。BBS製であることに変わりはないが、デザインを変更し、タイヤの進化に合わせて剛性を高めている。狙いはタイヤのロングライフ化だ。

 2021年にチャンピオンとなり、2022年も最後までタイトルを争った。だが、今季はここまで苦戦が続いている。入賞は第3戦鈴鹿の6位のみ。必ずしもそれだけが原因ではないだろうが、最初に走行風を受け、後方まで風の流れに影響するフロントフェンダー前方のデザイン変更は、やはり大きな影響を及ぼしているのではないか。それでも、第3戦鈴鹿ではポールポジションを獲得し、速さが健在であることは示した。ここからの巻き返しに期待したい。

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みんなのコメント

6件
  • 景気が良ければ、日本でもハイパーカーの全日本選手権が開催されてたんだろうな
  • 中身とガワがチグハグ
    プリウスのガワも走ってたよね
    盛り上げたいのだろうけど、レベルが低い
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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