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ロータリーこそマツダの“魂”だ!──新型マツダMX-30ロータリーEV詳報

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ロータリーこそマツダの“魂”だ!──新型マツダMX-30ロータリーEV詳報

マツダの新しい「MX-30ロータリーEV」は、世界的にも珍しい1台だった! ロータリーエンジン復活となる歴史的な1台を見た今尾直樹がレポートする。

「あくなき挑戦」

新型マツダMX-30ロータリーEV登場!──GQ新着カー

世界で唯一、マツダだけが量産化に成功したロータリーエンジン(RE)は、2012年、「RX-8」の生産終了と同時に一旦終わりを告げた。あれから約11年。マツダはREを諦めてはいなかった。マツダ独自のPHEV(プラグインハイブリッド車)、MX-30ロータリーEVの発電機として再びまわりはじめたのだ。これはもう"プロジェクトX"的大事件である!

9月14日、そのマツダMX-30ロータリーEVの予約受注がはじまった。マツダはこれに先立ち、8月下旬から9月の初めにかけて本拠地の広島でロータリー・エンジンの生産現場の訪問を含む事前取材会を開き、参加した。「あくなき挑戦」を掲げるマツダの新しい挑戦だった。う~む。どうしてもプロジェクトX風になってしまう。

マツダMX-30ロータリーEVは、つまるところ2021年1月に発売した同社初の量産電気自動車、MX-30 EV MODELのPHEV版である。そもそもMX-30は、もともとマツダの電動化の先陣を切るスペシャルティモデルとして開発された。

「フリースタイルドア」と名づけられた、ピラーレスの観音開きのリアのサイドドアを特徴とする。発売は3年前の2020年10月。ベースはコンパクトSUVの「CX-30」で、2655mのホイールベースと、1565mmの前後トレッドはおなじだ。ただし、バッテリーが搭載できるよう、MX-30独自のフロアが新たにつくられている。CX-30のRotary-EVはそう簡単な話ではない。

MX-30ロータリーEVのEV走行の航続距離は107km。EV MODELの最長281kmの半分以下に過ぎない。駆動用リチウムイオンバッテリーの総電力量を35.5kWhから17.8kWhへと半分に減らしているからだ。マツダによると、107kmあれば、ユーザーの90%の1日の走行距離は100km未満だから、毎日の通勤、通学やお買い物は十分にEV走行でこなせるという。旅行に行きたいときは、REによって発電し、その電気エネルギーで走行するから長距離も安心して使える。基本はあくまでEVで、REは行動範囲を広げるためのもの、という位置づけである。

PHEVの場合、ハイブリッド走行による航続距離はカタログには掲載されないので公式値は存在しない。WLTCモードのハイブリッド燃費の項はあって、MX-30ロータリーEVのそれは15.4km/Lと発表されている。燃料タンク容量は50Lなので、単純計算すると、15.4×50=770km。これにEVの航続距離の107kmを足すと877kmという長い足を持つことになる。

REで15.4km/L! という驚異的な数値を実現したところに、「あくなき挑戦」を掲げるマツダの真骨頂がある。レシプロではなくREを採用した理由に、REの長所のひとつであるコンパクトさがあげられている。エンジンの容積は3気筒より2気筒に近い。この長所を活かすことでEV版と同じ車体フレームに、発電用REとモーター、ジェネレーター(発電機)を同軸上に装着できたという。

1ローターでも成立するワケ型式名「8C」の新開発REは排気量830ccで、低燃費、低エミッション化を図るべく直噴化されている。航続距離をのばすべくサイド・ハウジングの素材をスチールからアルミにすることで、単体で15kg軽量化してもいる。圧縮比は11.9とREとしては驚異的に高い。

ピュア発電機だから過去のREとの比較は意味がないけれど、ちなみに最後のREのRX-8用13Bの圧縮比は10.0だった。もうひとつ、13Bは654cc×2ローターで、新しい8Cは830ccの1ローターである。1ローターでも発電用として成立するのは、まゆ型のハウジングのなかをおむすび型のローターがぐるぐるまわるREはバランスがよくて、スムーズだからだ。

最高出力は53kW(72ps)、最大トルクは112Nmで、発生回転数はともに4500rpmと低めに抑えられている。このことも低燃費に貢献しているにちがいない。

どうしてこれを高速時に車軸と直結にしないのか? と、筆者なんぞはいぶかるわけだけれど、マツダによれば、MX-30ロータリーEVはEVが基本で、EVの航続距離の不安を取り除くバックアップ・システムとしてREがある、という構えなのだ。

じつは私、MX-30 EV MODELにいまだ試乗していないのですけれど、EV版のモーターの最高出力は107kW(145ps)、最大トルクは270Nmで、車重はEVとしては意外に軽い1650kgロータリーEVは車重1780kgと130kg増加していることもあって、だろう。あるいはRE装備で電池の残量を心配する必要がないせいか、最高出力は125kW(170ps)に高められている。そういえば、REの開発担当の方が「EV MODELに対して、走りをアピールしたい」と、語っておられた。

取材会の現場で聞けばよかったのですけれど、原稿を書く段になって、最大トルクが260Nmに低められているところに気づいた。10月に開かれる試乗会で確かめてみたいポイントのひとつである。撮影でチョコっと動かしたおりに聞こえてきた、1回転で2回爆発するシングルRE独特のサウンドが走行中はどう聞こえるのか、これも気になるところである。そういえば、担当者の方が、「アクセル操作によってREらしい音を変化させている」と、語っておられた。楽しみではありませんか。

強い信念MX-30でREを発電機として復活させる。と、マツダが発表してから発売まで少々時間がかかった。これは、REで発電するハイブリッド、という世界でだれもやったことのない技術ゆえ、制御方法はもちろん、量産化に際して乗り越えなければならないハードルがあったからだ。

REはもともと振動が小さくてバランスがとりやすい特性があるとはいえ、これまでよりも大きなおむすび型のローターを、シングルで成立させるために、より高い精度が求められてもいる。そのためにマツダは気圧をちょっと高めた部屋で、匠と呼ばれる職人がアペックスシール等を手組みしている。ニッポンのものづくり、ここにあり!

マツダがかくもロータリーエンジンにこだわるのは、経済合理性というより、ロータリーこそマツダの魂である。という強い信念に基づいている。

先の見えない時代である。私たちは、いま、「君たちはどう生きるか」と、問われている。だとすると、自分がつくりたいもの、世界で自分たちにしかつくれないものに挑んでいるマツダのような姿勢こそ称賛されるべきであろう。

なお、MX-30ロータリーEVだけの特徴として、外観ではREを意味するおむすび型のバッジがフェンダーに、e-SKYACTIV R EVのバッジがリヤに装着されるほか、アルミホイールが専用デザインとなる。内装ではブラック内装が追加されている。これまでホワイト内装とブラウン内装しかなかった。というのもオシャレな話だ。

さらに台数限定のEdition Rなる特別仕様車も新設定されている。こちらは1960年発売のマツダ最初の乗用車、「R360クーペ」をオマージュした「マローンルージュメタリック」という専用色がルーフに塗られている。内装では前席ヘッドレストにフェンダーのおむすび型のバッジと同様のデザインがエンボス加工され、専用のカーペットが設定されている。

価格は423万5000円から、Edition Rの491万7000円まで。あなたはどれを選ぶのか。

文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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    ロータリーターボ 復活まで応援するぜ
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