フルモデルチェンジした三菱の新しい「アウトランダーPHEV」に乗ったモータージャーナリストの今尾直樹が、かつてのパジェロやランサー・エボリューションを思い出したワケとは?
大ヒット
トヨタのオフローダーはやっぱりスゴい!──新型ランドクルーザー&ランドクルーザー・プラド試乗記(後編)
2021年12月に発売された三菱アウトランダーPHEVに、たぶん、いちばん遅乗りした(※)。三菱自動車のヘリティッジを詰め込んだ、国内向けのアウトランダーとしては3代目、アウトランダーのプラグイン・ハイブリッドとしては2代目となるこのミドル・クラスSUVはいま、注目すべき1台である。
(※1:2022年8月現在。今後、この記録は更新される可能性があります)
自販連の統計でも今年の上半期(1~6月)の販売台数は8595台、ブランド通称名別順位で30位に入っている。前年同期比はなんと8.8倍。7月単月の販売台数は2620台で、前年同期比2543.7%(!)である。
前年同期はモデル末期だから数字のマジックに過ぎないとしても、ブランド通称名別順位は20位に躍進している。スバル「フォレスター」や日産「エクストレイル」、マツダ「CX-30」、同「CX-5」よりも上位で、18位のトヨタ「RAV4」、2993台に迫っているのだ。三菱の販売店舗数がトヨタのおよそ10分の1の550店舗に過ぎないことを考えると大ヒットである。
これからキャンプの季節でもあります。PHEVは大容量のバッテリーを備え、エンジンで発電することもできる。アウトランダーPHEVは家電用のコンセントが付いており、夜空の星を眺めながら、レンジでチン、なんて文明的なことが、実際にするかどうかは別にして、簡単にできちゃう(※2)。
(※2:電子レンジはヤマダデンキ等で購入する必要があります)。
現行アウトランダーPHEVの場合、バッテリーの容量は20kWhと、これまでのモデルの13.8kWhから大幅に増えている。これにより、ガソリン満タン状態で一般家庭の1日分の消費電力量を最大12日分提供できるという。備えあれば憂いなし。災害列島でもあるニッポンで、アウトランダーPHEVは今後も売れ続けるのではあるまいか。
味わい深い乗り味
さて、ここからは初試乗の感想を述べたい。筆者にとって意外だったのは乗り心地がSUVっぽかったことだ。
アウトランダーPHEVは基本的に前後独立した2基の電気モーターで走るから、あくまで乗り心地に限った話だけれど、これは従来の18インチから20インチに拡大した大径のタイヤ&ホールの影響もあるだろうし、ドライブ・モードにパワーやエコだけでなく、ターマック(乾燥路用)、グラベル(未舗装路や濡れた路面用)、マッド、スノーといったラリー用語を含むオフロードでの使用を前提にしたモードを用意していることからも意識的なものだと思われる。
SUVっぽい乗り心地、というのは、足まわりがソフトというか少々ダンピング不足というべきか、高速走行時、首都高速の目地段差とか小田原厚木道路のうねった路面、あるいは東名高速の上りの横浜あたりの少々荒れた路面等でピッチング、もしくはバウンシングが少々残る傾向がある。
試乗車の履いていた255/45R20という、SUVとしては扁平の極太大径のタイヤも、低速時にバンピーな路面で存在を主張する。
それがさほど嫌な感じがしないのは、オフロード走行に備えてストロークをたっぷりとっているから。という雰囲気がなんとなく伝わってくるから、かもしれない。上屋は揺れているのにロード・ホールディングはよさげで、初期の「レンジ・ローバー」に代表されるクラシックなSUVをちょっと思わせて、これはこれで味わい深い。
3代目アウトランダー、PHEVとしては2代目となるこのモデルについておさらいしておくと、「ダイナミック・シールド」と名づけられたデザイン・コンセプトのフロント・マスクを含め、全体のイメージは先代を踏襲している。パワートレインも先代のそれを継承発展させたもので、長所を伸ばすことを主眼にした、手堅いけれど、現時点の三菱としては意欲的なモデルチェンジといえるだろう。
プラットフォームは、ルノー・日産のアライアンスから生まれたCMF C/Dを三菱としては初採用。ルノーは「メガーヌ」等、日産は新型エクストレイル等に使っている車台で、スペックを見る限り、エクストレイルとの近似性がうかがえる。2705mmのホイールベースも、前ストラット、後ろマルチリンクというサスペンションの形式も、新型エクストレイルと同じなのだ。両車ともに、フロントのライトが上下2段になっているのは、偶然ではないのかもしれない。
ボディ・サイズは先代より若干大きくなっている。ホイールベースで較べると、先代アウトランダーは2670mmだから35mm延びている。アウトランダーPHEVの場合、ホイールベース間の床下に、200kgほどにもなる駆動用のリチウム・イオン・バッテリーを、つきたてのお餅をのばしたように敷き詰めているから、この部分のフロアはおそらくオリジナルだろう。
フロアに電池を敷き詰めていると、電池保護のための補強もあったりしてフロアの剛性はめっちゃ高く感じる。と、筆者は思っていたけれど、アウトランダーPHEVは不思議とそうではない。最近のルノー車よりもフランス車っぽいというか、ドイツ志向ではないというか、あるいはボディの剛性感というよりは足まわりのソフトさからそう感じるのか、ある種のユルさが感じられて、これも独自の味になっている。
前後2基の電気モーターが主役
パワートレインは前述したように先代の継承発展型だ。当初2.0リッターだった4気筒DOHC16バルブは、2018年のマイナーチェンジで2.4リッターへの排気量拡大とアトキンソン・サイクル化が図られており、最高出力98kW(133ps)/5000rpmと 最大トルク195Nm /4300rpmを発揮する。フロントのモーターは85kW(116ps)、255Nm、リアのそれは 100kW(136ps)、195Nmで、高速巡航時にエンジンが直接、前輪を駆動することはあるものの、それ以外の走行は前後2基の電気モーターが主役をつとめる。
エンジンはまったく出しゃばらない。今回、筆者はほとんど走行モードを「ノーマル」にしてドライブしてみたわけだけれど、その場合、電池にエネルギーがある限り、EV走行を積極的に行う。
今回は二子玉川から試乗を開始した。走り始めて聞こえてくるのはエアコンの風の音だけで、室内はいたって静かである。風量を抑え、耳を澄ませていると、♪んたた、んたた、んたた、という小さなうなり音が聞こえてくる。モーターを制御するインバーターの音らしい。
例によって東名高速は海老名あたりまで混んでおり、渋滞では運転支援システムのひとつ、ACC(レーダー・クルーズ・コントロール・システム)がたいへん役に立つ。
というのも、停止して30秒間、再スタートも自動で行ってくれるからだ。しかもモーターで走行するので動きは素早く、エンジン車のように、エンジンを再始動してから回転数を上げる等のモタつきがない。減速もスムーズで、ハラハラドキドキしない。
海老名の先の厚木から小田原厚木道路で箱根方面に向かう。高速走行中に聞こえてくるのはロード・ノイズだけ。速度と風向きによって風切り音が若干混じるという、EVならではの感覚は、エンジンが始動しても続く。高速巡航時、タコメーターがないので回転数は不明ながら、エンジンはモーター走行より効率が高い場合にしか前輪を駆動しない。
エネルギー・フローを画面に出して見ていると、電池のエネルギーがゼロに近づいてきた場合も、エンジンは発電に徹して、電池に電力を送り、電池からの電力でモーターを駆動する。エンジンには負荷がかからないようなっている。
驚くべきコーナリング能力
「ノーマル」のまま走行していたら、箱根ターンパイクの小田原口に到着したときには、電気エネルギーの残量はほぼゼロになっていた。かまわず、ターンパイクの坂道を元気よく上り始めると、「走行出力制限中」と画面に出た。エンジンはヴウウウウウンという実務的な音を発し続けて電力を必死につくり、その電力で持ってモーターで走行する。
驚くべきはそのコーナリング能力である。オン・ザ・レール感覚以上のオン・ザ・レール感覚で、ステアリングを切って思い描いた以上の、尋常ならざる切れ味と安定感でもって、コーナリング・ラインをスパッと切り取る。
ふたつのモーターによる4WDによる車両運動統合制御システムS-AWC(Super-All Wheel Control)と、新たに後輪側にもブレーキ制御を加え、前後輪で左右輪のトルク・ベクタリングを行うAYC(Active Yaw Control)のなせるワザらしい。
これこそ、かつてWRCを席巻した「ランサー・エボリューション」シリーズの開発から生まれた三菱のヘリティッジである。
第2世代のアウトランダーPHEVにはこのように、パジェロやランエボ、i-MiEVといった、これまで三菱が送り出してきたヒット商品、もしくはエポックなモデルの遺産がてんこ盛りに注ぎ込まれている。これまでは設定のなかった3列7人乗りも、パッケージングの工夫で実現し、間口を広げてもいる。人気の要因には、こういう地道な改善もあるだろう。
帰路、電池のエネルギーが空っぽ近くになったので、チャージ・モードにしてみた。すると、エンジンが前輪を駆動すると同時に、電池にもエネルギーを送り、さらにその電池からタイヤにエネルギーを送ったりしている。これでは燃費がよいはずはない。実際、燃費計はリッター11.2kmと、車重2tを超えるSUVとしては驚異的な値だとしても、絶対値としては凡庸な数字を表示している。80kmのEV走行をもたらす200kgの電池が単なるオモリになっている。そうしたのは私ですけれど。
PHEVとかEVとかを試乗していつも感じるのは充電のことである。PHEVは自分で発電できるから充電スポットについて意識しないで済むけれど、その能力をうまく引き出すには充電が欠かせない。しかも自然エネルギーを使って初めて大きな意味が生まれる。
自宅に簡単につけられるソーラー・パネルとか、キャンプに行ったときにソーラー・パネルになる傘みたいなアイテムとか、そういうのもオマケでつけたりすると、三菱グループの社員さんたちはもちろんのこと、多くの国民にとって、ますますお求めやすくなるのではあるまいか。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
確かにテンコ盛りが嬉しい車です。
HUDは見やすいし、助手席のパワーシートも評価が高い。OPですがパノラマルーフを開けたらチビちゃんが泣きやみました。
あとペアガラスのお陰か車内の静粛性を感じたのは昨日。三列目のお母さんと普通の声のボリュームでおしゃべりできる。ミニバンではあり得ない。
ネガティブな感想としては純正ナビゲーション。ek Xのほうが使い易いです。
しかし何と言っても決め手はデリカD:5からのダイナミックシールド顔。見慣れるとたまらなく愛おしい。不思議ですが。
そもそも誰?って人ばかりなんですが。
あ、イナガキはわかりますよ。常にマウント取ろうとする自慢話をしたがるナルシスト。しかし中身は。。。