この記事をまとめると
■2024年5月にスズキ・スペーシアが軽自動車の販売台数トップになった
ダイハツ完全復活の日も近い! ホンダの2倍も売れるインドネシアのモーターショーで元気なブースが帰ってきた
■4月にダイハツ・タントの生産が再開されてからはランキングの状況が変わりつつある
■販売に苦戦していたホンダN-BOXは先代モデルよりも売れるようになってきている
スズキが首位に立つもダイハツの出荷再開ですぐに陥落
2024年上半期、自動車業界での大きなニュースのひとつが「絶対王者N-BOXが販売トップから陥落した」ことだった。具体的には、2024年5月の販売実績において、軽自動車および全体としてのトップの座をホンダN-BOXからスズキ・スペーシアが奪取したのだ。
軽スーパーハイトワゴンは日本の自動車市場における主役といえるカテゴリーであり、その人気をけん引するN-BOXとスペーシアというライバルモデルは、2023年秋に相次いでフルモデルチェンジを果たしたことで、カテゴリーへの注目度はいっそう高まってきていた。
スペーシアがN-BOXを超えてトップの座を奪った背景としては、もう一台の軽スーパーハイトワゴンの定番モデル、ダイハツ・タントの状況が関係しているともいわれた。
ご存じのようにダイハツは2023年末に認証申請における不正が発覚、年始から全モデルの出荷停止が続いていた。当然そのなかにはタントなど軽自動車も含まれる。軽スーパーハイトワゴンにおける三つ巴のライバルから一台が突然消えてしまったことでパワーバランスが崩れ、それがスペーシアの追い風になったという見方だ。
より具体的にいえば、タントの購入層の多くがN-BOXではなくスペーシアに流れたというのだ。そこにはスズキやダイハツの軽自動車は、複数ブランドを扱う自動車販売店で売れているという事情が関係しているというのが、もっぱらのウワサだった。
自動車メーカーからすると、販売協力店、ユーザーからは街のモータースなどと呼ばれる自動車販売店の多くは、複数ブランドの看板を掲げている。そうした販売店ではスズキとダイハツの軽自動車をメイン商品としていることが多い。そのため、「ダイハツが買えないならスズキにする」というお客さまが多かったということがまことしやかに語られていた。
はたして、それは事実に即したストーリーなのだろうか。
ランキングを見ると3車3様の販売状況が見えてきた
全国軽自動車協会連合会による通称名別販売ランキングのトップ3推移を、スペーシアがトップになった5月以降の3カ月で見てみよう。 ■2024年5月
1位 スズキ・スペーシア 1万5160台 (191.9%) 2位 ホンダN-BOX 1万4582台(104.4%) 3位 ダイハツ・タント 6174台(55.1%)
■2024年6月
1位 ホンダN-BOX 1万6803台(104.8%) 2位 スズキ・スペーシア 1万2425台(137.4%) 3位 ダイハツ・タント 1万1933台(81.9%)
■2024年7月
1位 ホンダN-BOX 1万6500台(92.1%) 2位 スズキ・スペーシア 1万3073台(133.3%) 3位 ダイハツ・タント 1万2576台(122.6%)
※()内は前年同月比 いうまでもなく、新車販売においては受注と生産、納車の時期はズレてくる。実際、タントの出荷再開は4月10日なのだが、4月の販売台数は1866台で前年同月比15.6%だったりするのだ。
それにしても、5月のスペーシアが前年同月比で倍近く売れているのは、いくら新車効果の時期とはいってもイレギュラーな印象はある。タントが出荷停止していた期間に積み上げた受注が、5月に一気に納車された……という風に数字をとらえるのが妥当だろう。
なぜなら、スペーシアにトップを奪われたからといってN-BOXが売れていなかったわけではないからだ。5月の数字をよく見るとわかるように、N-BOXも前年比を超える販売実績となっている。
6月以降、タントが1万台を超える販売状況になると、スペーシアのイキオイは若干だが落ち着てきているのが見て取れる。それでも前年比130%を超えるペースで売れているのだからスペーシアの商品性が市場で評価されているのは間違いない。
そして、「ダイハツが買えないならスズキにした」ユーザーは存在していたのだろうが、それ以上に「ダイハツの出荷再開を待つ」としたファンが少なくなかったことを、統計データは示している。むしろ7月のデータだけで分析すれば、タントの販売増でN-BOXが台数を減らしているという風に見ることができるかもしれない。
いずれにしてもN-BOX、スペーシア、タントという長年のライバルに、日産ルークスや三菱デリカミニ/eKスペースという魅力的なモデルが群雄割拠状態の軽スーパーハイトワゴンは、まだまだ日本の自動車市場におけるメインカテゴリーであり続けるといえそうだ。
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