現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 求むもう一歩の技術革新!! 「EV普及はもうちょいかかるな…」と実感した事情

ここから本文です

求むもう一歩の技術革新!! 「EV普及はもうちょいかかるな…」と実感した事情

掲載 71
求むもう一歩の技術革新!! 「EV普及はもうちょいかかるな…」と実感した事情

 先日、スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」で、石川県金沢市から長野県松本市経由で軽井沢まで、300km弱をロングドライブする、という機会があった。ソルテラ/bZ4Xは、一般道から高速道路の様々な走行シーンで高い静粛性と軽快な走り、そしてすっきりとした乗り心地で、実に好印象。「いいクルマ感」がひしひしと伝わってくるものがあったが、案の定、充電イシューにおいては、苦労があった。

 筆者は、初代日産リーフを1年程所有していたことがあり、バッテリーEV(以下BEV)特有のライフスタイルはそれなりに経験している。リーフを手放して3年程になるが、ソルテラ/bZ4Xの試乗においても、そのころ痛感していたBEVの弱点を改めて認識することになり、「やはり現状ではBEVの普及は難しいな…」と感じた。筆者がBEVの普及は難しいと感じる理由をご紹介しよう。

求むもう一歩の技術革新!! 「EV普及はもうちょいかかるな…」と実感した事情

文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_joel_420
写真:HONDA、NISSAN、TOYOTA、SUBARU、MAZDA、Mercedes-BENZ、BMW、Audi、TESLA、VOLVO、STELLANTIS、Porsche、JAGUAR、HYUNDAI、ベストカー編集部

30分の急速充電でも、100km程度しか回復しないことも

 ソルテラ/bZ4XのWLTCモードでの航続可能距離は542km(AWD、FFは567km)。近い大きさの最新ミドルクラスSUVであれば、ハイブリッドモデルならば一度の給油で800km~900km、ディーゼルモデルであれば1,000kmは余裕で走ることができる。昨今のBEVのなかには、100kWhの超大型バッテリーを搭載したBEV(メルセデスEQSなど)もあるが、それでも最大770kmだ。

 ソルテラ/bZ4Xの試乗の際、「松本市へ到着する時点で航続距離を200km以上残すこと」というタスクをこなすため、途中、30kW急速充電器で30分間の充電をした。計算では、30kW×0.5h=15kWは蓄えられるはずだが、回復したのは13.3kWh、走行距離に直すと約93km程度(電費は7.0km/kWhで算出)だ。走行によって、熱を持ったBEVのバッテリーは、今回のソルテラ/bZ4X のように、30分の急速充電をしても期待したほど回復はできない。

 また、BEVは、車速を出すほどに電力消費が高まり、残航続距離がみるみるうちに減少する。純ガソリン車や純ディーゼル車の場合だと、新東名高速道路で120km/h巡行をすれば、燃費は伸びる傾向にあるのとは逆(ストロングハイブリッドは中速域の方が燃費は良いが)だ。

 昨今は急速充電設備も、90kW~100kWクラスの高速充電へと更新され始めてはいるが、現状は、都市部にある自動車ディーラーが中心であり、コンビニエンスストアや道の駅の急速充電器は、30kWや50kWクラスのまま。5分で満タンにできる内燃機関車との利便性の差は歴然であり、「航続距離は500km以上」と聞くと、それならば十分だと安心される方が多いが、実際には、全く問題がないかというと決してそうではない。

筆者が試乗した際、bZ4X(FWD)のスタート時点での充電量は約90%、走行残距離は420km。ただ、エアコンをつけると走行残距離は340kmに減少した

地方にも都市部にも適さないBEV

 一方で、BEVならではの魅力があるのも事実だ。ガソリン車やハイブリッド車では得られない、浮遊したような運転感覚はとても心地よく、「もうガソリン車には戻れない」という方もいるほど。筆者もリーフの、路面を滑っていくかのようなドライブフィールは、忘れられない。

 自宅で夜間、充電ができる設備を導入し、片道50km程度の通勤通学や、近所の買い物で使う用途であれば、BEVの良いところを最大限満喫できるだろう。近所の買い物程度につかう「チョイ乗り」であれば、むしろ内燃機関車よりもBEVのほうが向いている。

 ただ、自宅に充電設備が導入しやすい戸建ての多い地方では、街中の充電設備が少なく、街中に充電設備が充実している都市部では、マンションに住む人も多いため、充電設備が導入しにくい。地方でも都市部でも、BEVでのカーライフには、困難がつきまとう。

 特にロングトリップはBEVにとって鬼門だ。充電スポットの位置を事前に確認するのはもちろんのこと、先客がいた場合のバックアップも立て動く用意周到さがないと、ストレスフルなドライブになってしまう。もちろん、人によって感じ方は変わってくるだろうが、「慣れれば大丈夫」という問題でもなく、少なくとも筆者は、1年あまりのリーフライフにおいて、利便性の面では、最後まで不満だった。

効率を求める現代において、BEVの普及は難しい

 日産が初代リーフを発売したのは2007年のこと。初期型モデルの航続可能距離のカタログ値は、180kmほどであった。実際には、130~150km程度が実力であったため、戸惑った方も多かっただろう。世間から航続距離の少なさを指摘され続けた日産は、2代目リーフに設定した上級グレード「e+」で航続可能距離458kmを実現。

 一方で日産は、充電インフラに関しても整備を積極的に進め、すべての日産ディーラーに充電器を設置し、充電中は、ディーラーの中でドリンクを振る舞う(無料)。もちろん、お付き合いのある店だけではなく、出かけた先の日産ディーラーでも、「リーフ充電させてもらっています」と伝えれば、快く迎えてくれる。2021年6月時点の全国の急速充電器は約7900基。そのうち、およそ1/4が日産ディーラーだという。

 トヨタも、2025年を目途にすべてのトヨタ系ディーラーに急速充電設備を設置すると発表しており、充電設備については今後増えてくることが期待できるが、BEVは充電に時間がかかるため、それでもまだ十分な量とはいえない。

 また、BEVの課題はそれだけではない。繰り返しになるが、何事にも効率が求められる現代において、5分で100%回復できる内燃機関車の利便性になれたユーザーが、30分かかっても100%の回復は難しいBEVのカーライフに満足してくれるのか。BEVは、少なくとも現状では内燃機関車の代替になることは難しく、それを実現するには、インフラ設備の一層の充実はもちろんのこと、技術のブレークスルーやカーライフスタイルの見直しも求められると思う。BEVの普及には、まだまだ時間がかかりそうだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

18年ぶりに復活を遂げたトヨタ新型「クラウン・エステート」“待望”の発売! SUVの魅力をプラスした「新発想ワゴン」は635万円から
18年ぶりに復活を遂げたトヨタ新型「クラウン・エステート」“待望”の発売! SUVの魅力をプラスした「新発想ワゴン」は635万円から
VAGUE
ヒョンデ、『インスター』4月導入でEV普及を加速…新拠点開設やパートナーとの連携強化へ
ヒョンデ、『インスター』4月導入でEV普及を加速…新拠点開設やパートナーとの連携強化へ
レスポンス
軽自動車にこそEVがピッタリです。ル・ボラン編集部が選ぶ! 「EVアワード」日産サクラ
軽自動車にこそEVがピッタリです。ル・ボラン編集部が選ぶ! 「EVアワード」日産サクラ
LE VOLANT CARSMEET WEB
18年ぶり復活のトヨタ新型「クラウン“エステート”」! 「ワゴンとSUVの融合」実現した“デザイン”に込められた“想い”とは
18年ぶり復活のトヨタ新型「クラウン“エステート”」! 「ワゴンとSUVの融合」実現した“デザイン”に込められた“想い”とは
くるまのニュース
トヨタ「クラウンエステート」登場! “シリーズ第4”のモデルはなぜ「SUV×ワゴン」融合した? 伝統の「エステート」名称“復活”にかけた開発の想いとは【開発者インタビュー】
トヨタ「クラウンエステート」登場! “シリーズ第4”のモデルはなぜ「SUV×ワゴン」融合した? 伝統の「エステート」名称“復活”にかけた開発の想いとは【開発者インタビュー】
くるまのニュース
56年前の「ランボルギーニ」がオークションに登場 名スーパーカー「カウンタック」以前の“4人乗りランボ”とは
56年前の「ランボルギーニ」がオークションに登場 名スーパーカー「カウンタック」以前の“4人乗りランボ”とは
VAGUE
マルティン、MotoGP第3戦アメリカズGPも欠場へ。第4戦カタールでの復帰も不透明「思うように回復できず、本当に苦労している」
マルティン、MotoGP第3戦アメリカズGPも欠場へ。第4戦カタールでの復帰も不透明「思うように回復できず、本当に苦労している」
motorsport.com 日本版
レクサス [LS]2013年モデルが想像以上に良すぎる件!! マイナーチェンジってウソだろ!?
レクサス [LS]2013年モデルが想像以上に良すぎる件!! マイナーチェンジってウソだろ!?
ベストカーWeb
新車購入で後悔したくないなら徹底チェック! 購入前にディーラーの実車で穴が空くほどガン見して確認すべき項目とは
新車購入で後悔したくないなら徹底チェック! 購入前にディーラーの実車で穴が空くほどガン見して確認すべき項目とは
WEB CARTOP
トヨタ新型「クラウンエステート」発表! “ワゴン×SUV”を「よりメッキきらめくスタイル」に! スタイリッシュなモデリスタパーツを設定、KINTOでも取り扱い開始!
トヨタ新型「クラウンエステート」発表! “ワゴン×SUV”を「よりメッキきらめくスタイル」に! スタイリッシュなモデリスタパーツを設定、KINTOでも取り扱い開始!
くるまのニュース
レーシングブルズとエクソンモービルが燃料パートナー契約を締結。レッドブルファミリー全体との提携が強化
レーシングブルズとエクソンモービルが燃料パートナー契約を締結。レッドブルファミリー全体との提携が強化
AUTOSPORT web
動かす前に何をすべき!? 冬の間に乗らなかったバイクのメンテナンス
動かす前に何をすべき!? 冬の間に乗らなかったバイクのメンテナンス
バイクのニュース
ワゴン×SUV!? トヨタ新型「クラウンエステート」18年ぶりに復活! 完成された16代目クラウン独自の「乗り味」とは【試乗記】
ワゴン×SUV!? トヨタ新型「クラウンエステート」18年ぶりに復活! 完成された16代目クラウン独自の「乗り味」とは【試乗記】
くるまのニュース
高速道路に「人が運転していない」トラックが出現…なぜ? 一般車の自動運転と何が違うのか
高速道路に「人が運転していない」トラックが出現…なぜ? 一般車の自動運転と何が違うのか
乗りものニュース
トヨタ新型「クラウンエステート」正式発表! ワゴン×SUVとして18年ぶり復活の理由は? ブランド70周年で4モデル揃う!エステートが担う役割とは 635万円から設定
トヨタ新型「クラウンエステート」正式発表! ワゴン×SUVとして18年ぶり復活の理由は? ブランド70周年で4モデル揃う!エステートが担う役割とは 635万円から設定
くるまのニュース
スバル新「クロストレック」発表! 鮮烈な「オレンジ」ボディ採用した“サンブレイズ仕様”に大注目! 同時に「インプレッサ」と「レヴォーグ」特別仕様車も公開!
スバル新「クロストレック」発表! 鮮烈な「オレンジ」ボディ採用した“サンブレイズ仕様”に大注目! 同時に「インプレッサ」と「レヴォーグ」特別仕様車も公開!
くるまのニュース
「アントネッリ圧倒は必須とは思っていない」先輩ジョージ・ラッセル、”速いヤツは最初から速い”理論を提唱
「アントネッリ圧倒は必須とは思っていない」先輩ジョージ・ラッセル、”速いヤツは最初から速い”理論を提唱
motorsport.com 日本版
ホンダ『ZR-V』のゴツゴツ感を低減、スタビリティも向上させるテインの車高調「フレックスZ」発売
ホンダ『ZR-V』のゴツゴツ感を低減、スタビリティも向上させるテインの車高調「フレックスZ」発売
レスポンス

みんなのコメント

71件
  • EVなんて近所専用車からいつまでも抜け出せない。遠出した場合その出先で40分充電しかもその前に順番待ちも当然有り得る・・・絶対に嫌。 
    事実上遠出ができない車など車ではない。
  • 今ですら電力不足なのに EV社会なんて出来るわけがない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408 . 1万円 583 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

13 . 8万円 450 . 0万円

中古車を検索
日産 リーフの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408 . 1万円 583 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

13 . 8万円 450 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村