世界屈指のオフローダー、ジープ ラングラーに史上初のプラグイン・ハイブリッド登場!!
ジープの原点ともいうべき正真正銘の本格派は、電動化されてもヤワになっていないのか? 今夏欧州で発売予定のラングラー4xe(フォー・バイ・イー)の注目のパワートレーンと実力、そして日本導入の見込みは?
絶大な人気を誇るジープのピックアップトラック「グラディエーター」の日本導入決定!
文/嶋田智之 写真/FCA
【画像ギャラリー】本格オフローダー、ジープ ラングラーのPHV版ラングラー4xe(フォー・バイ・イー)を見る!!
■なぜジープの象徴「ラングラー」を電動化?
ウィリスMBから80年、ジープの象徴ラングラーがPHVとして登場した
最初のジープというべきウイリス・オーバーランド社の試作車MA型が実戦投入され、その改良型亜であるMB型のアメリカ陸軍に制式採用されるきっかけを作ったのは1941年のこと。つまりジープ・ブランドは、この2021年に80周年を迎えることになるわけだ。
この記念すべき年のはじめから、MB型の流れを汲むジープの象徴ともいうべきモデル、ラングラーの電動化モデルが全米のジープ・ショールームに並びはじめるのは、おそらく偶然ではないだろう。
ジープは2018年の中期経営計画の中でアナウンスしたとおり、各モデルの電動化を推し進めている最中。
すでにレネゲードやコンパスなどのプラグイン・ハイブリッド・モデル(PHV)が発売となっている。
さらにブランドの核となるラングラーにPHVを追加してアニバーサリー・イヤーに発売を開始することは、ジープがいかに本気で電動化というものを考えているのか、ジープの未来をどう考えているのか、ということを世の中に伝える最良の手段であるからだ。
■ジープ初のPHVとしてレネゲード4xeがすでに登場
レネゲード用の4xeシステムよりもさらに進歩したシステムとなる
最も小さなジープ、レネゲードのPHVモデルは、すでに日本でも発売され、受注もなかなか好調のようだ。
このクルマが搭載する4xeシステムは、2基の電気モーターと11.4kWhのリチウムイオン・バッテリー、それにガソリン・エンジンと6速ATを組み合わせたもの。
基本的には前輪の駆動はエンジンが担当し、後輪の駆動はリア側のモーターが担当、フロント側のモーターはエンジンと連動したジェネレーターとして機能する。
また、前後のモーターは路面から運動エネルギーを回収する回生ブレーキとしての役割も担う。そして前輪と後輪の駆動力配分は電子制御でおこなわれるため、メカニカルな4WD機構は持っていない。
ハイブリッドのシステムは、モーターのみで走行する「エレクトリック」、エンジンとモーターを自動的に使い分ける「ハイブリッド」、バッテリー消費を抑えるためにエンジンを多用する「Eセーブ」の3つのモードから選択できる。
さらにはドライブモードとしてオート、スノー、マッド&サンド、ロックなどが用意され、もちろん電子制御による4WDロック、4WDロウ、ヒルディセントコントロールを活用することもできる。
と、ざっくり申し上げるならそういう仕組みだ。電気モーターと電子制御の相性が抜群にいいことは、皆さんもご存じのとおり。駆動に関しても同様で、電子制御の効いたモーターによる駆動は極めて緻密で素早くて正確だ。そのうえドライバーの操作はイージーなことこのうえない。
先日、レネゲード4xeを試乗していたとき、峠を登っていったら次第に道が雪まじりになり、ついには新雪の絨毯のような状態になるというおあつらえ向きのコンディションになった。
普通ならちょっと怯むところだけれど、4xeシステムは想像してたよりも遙かに優秀で、右へ左へと九十九折りが続くその峠を、ドライ路面とそう遜色のないペースで安定したまま走り抜けられてしまった。しかも、ほとんど鼻歌まじりで。
ドライの街中や高速道路を走っているときにモーターのモリッとしたトルクが効いてレネゲードの楽しさがさらに膨らんだ印象を受けたこともあるけれど、電動化によるデメリットなど何ひとつ感じることがなかった。
そして本国ではショールームに並び、ヨーロッパなどでもこの2021年のうちに発売されることになっている、ラングラー4xe。果たしてどんな仕立てになってるのだろう?
■ラングラーはPHVでヤワになっていないのか?
ラングラー4xe。基本的に前輪の駆動はエンジンが、後輪の駆動はモーターが担当する
ベースとなっているのは、4ドア・モデルの「アンリミテッド」だ。最も強力なルビコンでは33インチの大径タイヤを履いていることもあって、最低地上高は27.4cmと通常のルビコンより7.4cmも高い。
アプローチ・アングルは44度、ブレークオーバー・アングルは22.5度、デパーシャー・アングルは35.6度と、その数値は相当に本気な仕様だ。ここだけ見ても、PHVのモーター駆動を悪路の走破にたっぷり活かそうという意志が強く感じられる。
そもそもラングラーは、ジープ・ブランドの中でも最強のオフローダー。他のモデルでは別格的に仕立てられたハイエンド・グレード、トレイルホーク以外には備えつけられない“トレイルレーテッド”のバッジを全てのグレードが持たされている。
海外仕様のラングラー4xeには、その走破性の証である“トレイルレーテッド”のバッジがしっかりと付けられている
トラクション(駆動性)、渡河性能、機動性、アーティキュレーション(接地性)、地上高などにまつわる、開発陣自らがドMかと思うほどハードルを上げた過酷にして高度なオフロードでの性能試験に合格した証であり、まさに“どこにでも行ける”を具現化してるモデルのみに与えられるバッジだ。
ラングラー4xeも、海外での報道やジープのメディアサイトなどで確認する限り、トレイルレーテッド・バッジは全グレードに備わっている模様。当然だろう。いくら電動化するからといって、80年にわたって築き上げてきたオフロード最強の誇りを捨てるわけなどないのだ。
■日本導入も濃厚! ラングラー4xeの肝となるPHVの実力
ドライバーのほうでは難しいことを考える必要はない。イージーに、かつワイルドにドライブできる
肝心の仕組みはといえば、ひとつめがエンジンの前側に備わるモーター・ジェネレーター・ユニット、ふたつめが8速のトランスミッションにトルクコンバーター代わりに組み込まれるモーター・ジェネレーター、という2モーター式。
エンジンとモーターの間には2つのクラッチが介在していて、その動きも含めて総合的に電子制御される。
さらに通常のラングラー4xeは、2.72:1のローレンジ・ギアを持つ2速トランスファーケースを備えるセレクトラック4×4システムと組み合わせらる。
ラングラー・ルビコン4xeには4:1ローレンジ・ギア比の2速トランスファーケースやオン/オフが可能な電子式スウェイバーなどを持つジープ最強のロックトラック4×4システムを組み合わせられる。
先述のレネゲード用の4xeシステムも優秀だったが、間違いなくそれより遙かに進んだ高度システムである。
搭載するエンジンは、4気筒の2Lターボで、単体では273psのパワーと400Nmのトルクを発揮。そしてモーターが稼ぎ出すぶんを上乗せすれば、パワーは380ps、トルクは637Nmとなる。
その数値は476psのV8ユニットを搭載する最新の“ルビコン392”に次ぐ強力なもの。4WDシステムの違いを考えると、最もオンロードにもオフロードにも強いラングラーは、ルビコンの4xeということになるかもしれない。
しかも4×eは17kWhのリチウムイオン・バッテリーをリアシートの下に搭載し、最大40kmをゼロエミッションで走行できるほか、米国環境保護局の予想燃費では50mpg(=21.257km/L)という数値。
ジープを選ぶ多くの人は、美しく心地好い大自然を愛していることだろう。地球の自然環境を大切にしたい気持ちだって強いはずだ。美しい空気を素直に美味いと感じ、静けさに心地好さを覚えることだろう。モーターとバッテリーを利用して走るクルマとジープ・ブランドの親和性は、そう考えると物凄く高いのだ。
まだ正式なアナウンスには至ってないが、おそらくラングラー4×eは日本に導入される。時期としてはこの2021年の後半か、あるいは2022年の前半辺りというのが濃厚だろう。早く詳細を知りたいところだが、僕達は上陸を楽しみに待つしかない。
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