現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 今さら新車に「ドライブレコーダー内蔵」が増えてきたワケ 自動車メーカーは何を“恐れていた”のか

ここから本文です

今さら新車に「ドライブレコーダー内蔵」が増えてきたワケ 自動車メーカーは何を“恐れていた”のか

掲載 37
今さら新車に「ドライブレコーダー内蔵」が増えてきたワケ 自動車メーカーは何を“恐れていた”のか

ドラレコ内蔵のクルマはなぜ生まれなかった?

 今やアクシデントに記録だけにとどまらず、煽り運転対策にも役立つとして普及が進むドライブレコーダー。それを取り巻く状況がここへ来て大きく変わろうとしてしています。それは自動車メーカーがドライブレコーダーをライン装着、つまり最初からクルマに“内蔵”する動きが急速に進み始めていることです。そのきっかけとなったのは2022年7月に登場した新型クラウンでした。

5代目日産「シルビア」 女子ウケ抜群! なにが彼女たちのハートを鷲掴みにしたのか

 これまでドライブレコーダーは後付けするものというのが常識でした。仮に新車購入時に“純正品”として注文しても、あくまでディーラーが後付けする「ディーラーオプション」として取り扱われてきたのです。つまり、“純正品”とはいうものの、それは事実上、社外アクセサリー品であることに変わらず、取り付ければ配線などがある程度は露出されていました。

 そんな状況から、個人的には「最近のクルマに装備されているADAS(先進運転支援システム)用カメラをドライブレコーダーに活用できないものか?」そう考えていました。特に近年はADAS用カメラの画素数も上がって、画質面でも十分なスペックを確保できるまでになり、これが実現すればカメラを複数備えることなく、配線も露出することなくスマートに装備できると考えたからです。

 しかし、世の中で煽り運転が社会問題化し、ドライブレコーダーの装着率が急速に高まっても、この対応はなかなか行われることはありませんでした。なぜなのか、各自動車メーカーのADAS担当者にこの疑問をぶつけてみると、みな口を揃えて課題として回答したのは“肖像権”の問題だったのです。

 ドライブレコーダーの役割は走行中の映像を常に記録して、万一のアクシデントに備えることにあります。それだけにドライブレコーダーは車両周辺の風景を片っ端から撮影していきます。その中には、プライベートな映像が含まれている可能性も十分考えられ、それはもしかしたら、撮影された側にとっては不愉快どころか、SNSなどに無許可でアップされたりすれば、状況次第では大きな問題になる可能性すら出てきます。

メーカーにとって怖い訴訟社会

 たとえ映像をアップするのはユーザー側だとしても、それができる環境を提供したのはドライブレコーダー機能を搭載した自動車メーカーです。この肖像権絡みで今でもドライブレコーダーを禁止している国や州も実際に存在し、内蔵したクルマを販売すること自体が訴訟の対象になったりはしないか――先のADAS担当者が心配していたのはこの部分だったのです。

 ただ、世の中では日本以外でもドライブレコーダーが急速に普及している現状もあります。ADAS担当者は「肖像権への配慮とのバランスでどうすべきかメーカーとしても悩んでいるところ」と話し、「どこかがADASカメラを活用したドライブレコーダー機能を露払い的に装着してくれると心強いんですが……」と本音を語っていたのも確かです。

 そんな状況下でトップを切って動き出したのがトヨタでした。まず2020年6月に登場したハリアーに「録画機能付デジタルミラー」という形で搭載して応えました。ただ、この時は音声記録を行わないことや、録画したものを再生する機能はなかったり、駐車監視を非対応にしたりしたことを考慮して「ドライブレコーダー」とは呼んでいません。カメラもデジタルミラー用として搭載した別のカメラを使っていました。

 しかし、トヨタはこの搭載により、ドライブレコーダーの標準化を希望する声が多く寄せられていることを知ります。これが新型クラウンへのドライブレコーダー標準搭載への流れにつながったのです。このあたりの事情をクラウンの担当者に聞くと「『ハリアー』で録画機能付き電子ミラーとして出したところ、この評判がとても良かった。これならドライブレコーダーとして搭載できるのではないかと考えた」と話していました。

 とはいえ、意外にもトヨタとしては肖像権についてはそれほど気にしていなかったようです。トヨタとしては法規制がなく、ニーズがあれば期待に応えるのがメーカーとしての立場というわけです。事実、日本では新型プリウスにドライブレコーダーを搭載しましたが、訴訟社会と言われる北米市場ではデジタルミラーだけの搭載にとどめています。このことからもその姿勢は明確です。

これぞ「“内蔵”のいいところ」とは?

 それと「EDR(イベントレコーダー)」の搭載もドライブレコーダーの搭載を遅らせた可能性があります。これは車両の速度や、アクセルの開度、ブレーキ操作の有無、ハンドルの切り角、加速度、エンジン回転数、ABS作動の有無、シートベルト着用の有無といった車両運行データを常時記録する装置で、航空機に搭載される「ブラックボックス」と同様の装置との位置づけです。EDRはエアバッグ搭載車にはすでに装備されており、これがあれば肖像権の侵害が絡むドライブレコーダーをあえて搭載する必要性は低いと考えられた可能性もあるのです。

 とはいえ、日本ではトヨタや日産がドライブレコーダーのライン装着を開始したことで、事実上の“露払い”は完了。これから登場する新型車にはドライブレコーダーが標準化されていくと思われます。

 さて、ドライブレコーダーをライン装着したことで、後付けではできなかった機能も追加されるようになりました。それはドライブレコーダーで撮影した映像を車両側のECU(電子制御ユニット)へ記録するようになったことです。すべての車種ではありませんが、トヨタではクラウンやプリウス、シエンタなどでこれを実現。従来のmicroSDカードへの記録に比べて、エラー発生率を大幅に引き下げたのです。

 映像を取り出す際もWi-Fi経由でスマホにダウンロードできるようにし、これによってmicroSDカードの紛失や挿入時のトラブルも解消。まさにライン装着されたドライブレコーダーとしてのメリットを活かせるになったわけです。一方、日産の新型セレナなどはmicroSDカードに記録する方式ですが、いずれにしても後付け感なくドライブレコーダー機能を活用できるのはライン装着のメリットでしょう。

んー残念! 内蔵ドライブレコーダー活用は道半ば

 一方で、新型クラウンで残念に思ったこともあります。それはテレマティクス用として通信機能が標準で搭載されているにもかかわらず、ドライブレコーダーはそれを活用できていないことです。

 仮に通信機能を活かせれば、衝撃を受けた際に映像を自動的にサーバーや指定先へ自動送信したりできるようになります。万一、車体が火災などに見舞われてしまっても映像は残すことができ、駐車監視にしても、衝撃を検知したときは即座にスマホなどでその状況を把握することが可能となるはず。これはほぼ同仕様を搭載する新型プリウスでも変わっていません。

 その理由は今のところ掴めていませんが、考えられるのは動画を送信するにあたってのECUの負荷を抑えること、あるいは通信コストがかさむのを恐れたのではないかということです。ただ、日産はすでに純正で通信機能を備えたドライブレコーダーを販売しており、その通信費も半年間は無料で使え、その後は月額330円で利用できるようにしています。トヨタも他のデジタルサービスで有料課金をしていることを踏まえれば、決して難しくはないように思えます。

 果たして、“内蔵ドライブレコーダー”としてどんな形で進化していくのか、今後の動向を注視していきたいと思います。

こんな記事も読まれています

俳優・駒木根葵汰の「今、気になるバイクに乗りたい!」──Vol.1 ホンダ・ダックス125
俳優・駒木根葵汰の「今、気になるバイクに乗りたい!」──Vol.1 ホンダ・ダックス125
GQ JAPAN
「居住者のための道」「スクールゾーン」に「選挙カー」が走っているのですが… 許されるのですか? 批判あるもいまだ横行
「居住者のための道」「スクールゾーン」に「選挙カー」が走っているのですが… 許されるのですか? 批判あるもいまだ横行
乗りものニュース
14年ぶり全面刷新! レクサス「新型“カクカクSUV”」登場! V6ツインターボ×「上質オシャレ内装」がカッコイイ! 国内初投入「新型GX」に大反響
14年ぶり全面刷新! レクサス「新型“カクカクSUV”」登場! V6ツインターボ×「上質オシャレ内装」がカッコイイ! 国内初投入「新型GX」に大反響
くるまのニュース
【2024年版】レクサス RX VS トヨタ RAV4を徹底比較
【2024年版】レクサス RX VS トヨタ RAV4を徹底比較
グーネット
スズキ 新型グローバルSUV「フロンクス」 2024年秋、日本上陸へ!先行情報HPで公開
スズキ 新型グローバルSUV「フロンクス」 2024年秋、日本上陸へ!先行情報HPで公開
グーネット
トヨタ「クラウン」vs ホンダ「アコード」日本のフラッグシップセダンはどこを目指すのか?
トヨタ「クラウン」vs ホンダ「アコード」日本のフラッグシップセダンはどこを目指すのか?
@DIME
[カーオーディオ 逸品探究]実力スピーカーブランド「モレル」の革新機『ヴィルタス ナノ カーボン』の魅力を解析!
[カーオーディオ 逸品探究]実力スピーカーブランド「モレル」の革新機『ヴィルタス ナノ カーボン』の魅力を解析!
レスポンス
竹岡圭さん率いる圭rallyproject、XCRスプリントカップ北海道に参戦!三菱自動車やトーヨータイヤ等がサポート
竹岡圭さん率いる圭rallyproject、XCRスプリントカップ北海道に参戦!三菱自動車やトーヨータイヤ等がサポート
LE VOLANT CARSMEET WEB
【F1分析】角田裕毅の”第1スティント引っ張る作戦”は失敗だった? タイヤ交換のタイミング遅らせたメリットを活かせず
【F1分析】角田裕毅の”第1スティント引っ張る作戦”は失敗だった? タイヤ交換のタイミング遅らせたメリットを活かせず
motorsport.com 日本版
内紛とライバルの追い上げに揺れるレッドブルF1。ヘルムート・マルコが「レースへの完全集中」を求める
内紛とライバルの追い上げに揺れるレッドブルF1。ヘルムート・マルコが「レースへの完全集中」を求める
AUTOSPORT web
三菱「新型“SUV”ミニバン」公開! 4.5m級ボディにMT設定あり! 約350万円の「エクスパンダー “エリート”LE」に反響 尼で登場
三菱「新型“SUV”ミニバン」公開! 4.5m級ボディにMT設定あり! 約350万円の「エクスパンダー “エリート”LE」に反響 尼で登場
くるまのニュース
フォルクスワーゲンCEOが語る「愛されるブランド」へ回帰するための戦略とは? 看板モデル「ゴルフ」の未来にも言及
フォルクスワーゲンCEOが語る「愛されるブランド」へ回帰するための戦略とは? 看板モデル「ゴルフ」の未来にも言及
VAGUE
【38台限定】アストンマーティン「ヴァリアント」登場! フェルナンド・アロンソの依頼で実現した「Q by Aston Martin」手掛ける限定モデルとは
【38台限定】アストンマーティン「ヴァリアント」登場! フェルナンド・アロンソの依頼で実現した「Q by Aston Martin」手掛ける限定モデルとは
Auto Messe Web
WRC第7戦、オジェに代わって急遽参戦のロバンペラが圧巻の走りで優勝【ラリー・ポーランド】
WRC第7戦、オジェに代わって急遽参戦のロバンペラが圧巻の走りで優勝【ラリー・ポーランド】
Webモーターマガジン
ロバンペラ、ラリー・ポーランド”代打”優勝で疲労困憊「すごいことをした実感はまだないんだ」
ロバンペラ、ラリー・ポーランド”代打”優勝で疲労困憊「すごいことをした実感はまだないんだ」
motorsport.com 日本版
BMW『M2』改良新型、「M」の名に恥じない強烈な内外装
BMW『M2』改良新型、「M」の名に恥じない強烈な内外装
レスポンス
GT500は国産車だけど左ハンドル! 全日本ラリーに出る新井敏弘のWRX S4も左に変更! モータースポーツ車両のハンドル位置の謎
GT500は国産車だけど左ハンドル! 全日本ラリーに出る新井敏弘のWRX S4も左に変更! モータースポーツ車両のハンドル位置の謎
WEB CARTOP
ペレス、予選Q3に中古タイヤで出走し8番手「新品セットを温存する余裕がなかった」/F1第11戦
ペレス、予選Q3に中古タイヤで出走し8番手「新品セットを温存する余裕がなかった」/F1第11戦
AUTOSPORT web

みんなのコメント

37件
  • 肖像権云々ではなくて、ドライブレコーダーが何らかの故障等で録画されていないのを一番恐れる。

    自働車メーカーを訴えられたら困るもんね。だからライン装着しなかった。
    現在はほぼ故障なく録画する技術になったので装着するようになった。
  • 要は、ユーザー第一の考えじゃないってこと。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

509.9575.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

26.8879.0万円

中古車を検索
クラウンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

509.9575.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

26.8879.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村