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パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった

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パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった

 この記事をまとめると

■ブリヂストンのエアレスタイヤ「AirFree」に試乗

なんとトラックの2割弱が再生タイヤを装着! リトレッドって何? 乗用車にはなぜ普及しない?

■グリーンスローモビリティへの装着を想定している

■環境に配慮した素材を取り入れており製品寿命も長い点が特徴だ

 話題のタイヤがいよいよ製品化目前!?

 ここ数年でモーターショーなどに行き、さらにはタイヤメーカーブースに足を運んだ人であれば、奇妙なタイヤが置いてある場面を見たことがあるのではないだろうか?

 そう。「エアレスタイヤ」だ。現在までに数社が似たようなものを発表している。

「空気がいらないタイヤとかスゲェ!」と、アツくなった人もきっと多いはず。筆者もそのひとりである。しかも、見た目もこんなキテレツなのだから、インパクトも抜群である。もちろん、サーキットで走りまわるようなシーンでは使えないことくらいは承知済み(見るからに無理そうだ)。

 と、まぁ実物の展示は見て驚いたところで、「これが使える(世に出る)のはいったいいつなんだ?」という疑問が残るのがこの手の製品。だいたい、イベントでコンセプトとして展示されている製品なぞ、世に出てくるころには姿形がすっかり変わっているか、いつの間にかなかったことになり、「あったあった」と昔話になるのが関の山。

 ……とかなんとか当時は思っていたが、それは予想もしない形でやってきた。

 そう。展示で見ていただけのエアレスタイヤになんと乗る機会がやってきたのだ。しかも発表時とほぼ大差ないそのままの見た目のものを転がせるそう。これはもう乗るしかない!

 そんなわけで今回エアレスタイヤの試乗に訪れたのは、東京都小平市にあるブリヂストンの技術センター。ここでは航空機用タイヤなどを製造しているそう。集合場所ではダイハツ・ミライースがお出迎え。

 その足もとには、「穴が開くまで見ろ!」といわんばかりに主張が強い今回の主役、「エアレスタイヤ」が装備されている。

 さて。今回の主役であるこのブリヂストンのエアレスタイヤ、正式名称は「AirFree」という製品名だ。2024年のグッドデザイン賞もめでたく受賞しているそう。この見た目ともなれば、素人感覚でも受賞は納得。

 開発の経緯に触れると、ブリヂストンでは自動車業界における他社同様に、カーボンニュートラル社会実現へ向けたさまざまな活動を行なっている。その一環として、タイヤの再生事業や、使用する素材に再生可能素材を投入することに注力しているそう。その活動のひとつとして開発されたのがこのエアレスタイヤ、「AirFree」というわけだ。

「安心安全+サスティナビリティ=より長く使う」が同製品のコンセプトとのこと。

 ちなみにこのタイヤ、筆者が勉強不足だったのでこのとき知ったのだが、すでに小平界隈の公道で実証実験も行なっていたそう(コンビニなどによると質問攻めに遭ったとか)。さらにいうと、クローズド環境においては3年前から協力工場の敷地内などで転がしていたらしい。

 そんなエアレスタイヤの歴史は、ブリヂストン社内においてそこそこ長い歴史をもっているようで、第一世代の登場はなんと2008年なんだそう。16年も前となれば、筆者はステアリングではなく鉛筆を必死に握ってたころだ。そのころのエアレスタイヤは車重200kg程度、移動速度は極低速、ひとり乗りのモビリティで使うことを想定していたらしい。その後、2013年に第2世代へと進化して、車重500kg程度、ふたり乗りくらいまでの車両に使えるよう着々と進化を続ける。そしてこの「AirFree」が第三世代モデルとなる。これだと、車重1tほどまで耐えられ、車速60km/hくらいまでに対応できるそう。

 現在、このタイヤは過疎地域などで高齢者の移動を担う、グリーンスローモビリティ(以下:グリスロ)での使用を想定中だ。グリスロの特徴は、時速20km/h以下の速度で移動する電動車を、自治体などの職員が操り、移動が困難な人たちを運ぶといったもの。2種免許が不要なほか、電動なので臭いや騒音も発しない点がメリットとなっており、ボディ全面がビニール製の窓を使ったオープンボディを採用していることで、地域住民による乗員の見守りができたり、乗員同士によるコミニュケーションの場にもなるんだとか。

 ゴルフカートのような4人乗りの小さなモノから最大で18人ほど乗れる大型のモノまであり、実証実験も全国で130カ所以上で実施済み。これから38地域で本格運行することも決まっている……といういまホットなモビリティだ。

 そんなグリスロは、先述の過疎地域などにおける道の状態が不安定な場所での運行が目立つ。そこでこの「AirFree」がバッチリはまる。エアレスタイヤなので1度つければ製品名のとおり空気不要で、パンクの心配もなしでメンテフリー。しかもこれ、グリスロで使用するのであれば耐用年数は10年ほどあるそう。期間だけの話でいえば、通常のタイヤの倍以上使えることになる。サスティナブルっぷり全開だ。

 ではでは、前置きが長くなったが、「AirFree」についてだいたいわかったところでいざ試乗といこう。

 こんな見た目でも全然問題なし!

 そもそもこの「AirFree」、「なんでタイヤなのに青いんだ?」と疑問に思う人もいるだろう。これにはふたつ理由がある。

 ひとつは、ブリヂストンがさまざまな色で視認性のテストした結果、この青が1番視認性が高く、安全性が高いというデータが取れたから。白とかのほうがよさそうだが、「世の中の道路標識も青いでしょ?」と説明に付け加えられ納得。もうひとつは水の星である地球の「青」をイメージしているそう。ドレスアップ目的で綺麗な色にしたわけじゃない。

 ちなみにこの青い部分はプラスチック(洗濯バサミ比)より柔らかく、ゴムよりは硬い特徴を持っている「熱可塑性樹脂」。サスティナブルであることが重要なので、熱で溶かすことで、いうまでもなくリサイクルできる。

 肝心のトレッド面は、トラックのタイヤなどでお馴染みのリトレッド可能な素材を採用。つまり、タイヤ丸ごとリサイクル可能というわけ。なお、ホイールは一体構造なので、ホイール交換という概念はない。ドレスアップを考えている層は回れ右ということで……。

 気になるタイヤサイズは、「145/80R12」という軽自動車における一般的なサイズ相当。PCDは4穴100。かなり細く見えるが、見た目のせいか? 聞いたところこれ以上のサイズも技術的には作れるそうだ。

 試乗は、技術センター内のテストコースを2周走れるとのこと。距離にして合計1kmほど。

 ただ、乗る前からこれは不安すぎる。写真のとおり、どう見てもトレッド面がペッタンこ。履帯の如く地面に張り付いているではないか。タイヤの接地面積は一般的に「ハガキ1枚分」といわれるが、これは往復ハガキくらいありそうだ(見た目だけかもしれないが)。一般的なタイヤでこんな見た目ならいますぐエアを入れてこい状態。ちなみにこのタイヤにはサイドウォールは不要なようで、その分でも素材を節約できるとのこと。小石などは挟まっても勝手に取れるので心配ないとの説明を受けた。

 クルマに座ったときも、サスペンションのストロークとは異なる変な感触が襲う。「うわぁ……」と思わずこぼれそうであった。

 と、そんな不安な感覚をもちレッツゴー……! と走り出したらこれがまぁビックリ。ピョンピョン跳ねるような挙動も、フラフラするような感じもなく、至ってフツーに走っているではないか。見た目のインパクトとは裏腹に、あまりにも拍子抜けなので粗探しをしたいのだが……ほぼ見つからない。

 強いていうとすれば、乗ってすぐ感じたのは、見てのとおりこのタイヤは無数の青いリブでトレッド面を支えているので、転がるたびにハンドルにコツコツ振動がステアリングや体に響く点。しかし、出している速度は40~50km/h前後。先述のグリスロの想定する速度の2倍だ。しかもこっちの車両はミライース……かと思いきや、試乗はなんとも珍しいスバル・プレオプラス(ミライースのOEMモデル)に、いつの間にか変わっていた!

 ロードノイズもそれなりにあるが、乗ってるクルマによる問題もあるだろう。ノイズを消すような構造がタイヤにもほぼないので、仕方ない。音が籠らないオープンボディのグリスロなら問題ないだろう。要は、頑張って粗探しをした結果、ほぼなにもないという結論だ。

 と、いうよりもこんな見た目でよくタイヤとして機能するなと、技術力の高さに感動すら覚えた。ちょっとしたスラローム区間もあったが、700kg前後のクルマをしっかり支えている点はさすがだ。

 ウエット性能などは不明だが、天下のブリヂストンが手がけるのだから、そこは心配無用なはず。ただ、リヤシートに乗ったらまた違った感触が得られたかもしれない。それについては次の機会を待とう。

 試乗を終えたあとに、「エアレスタイヤって名前ではないが、ノーパンクタイヤって昔からあるじゃないですか。それじゃダメなの?」と質問をしてみた。

 関係者は、「ノーパンクタイヤは空気の代わりにゴムなどを詰め込んで、物理的にパンクしないように作ってるんですね。なので重いんですよ。それに、トレッドの貼り替えも現状の製品では想定してないので、リサイクルや製造工程を考えた際、それだとサスティナブルじゃないので……」との返答。

 今後のこの「AirFree」は、グリスロへの採用へ向けて最終調整をし、特定の業者に供給しつつ、引き続き実験と開発を進めていくそう。価格は同サイズのタイヤと比較すれば高価になるが、いままでのタイヤ以上に長く使えるのと、メンテナンスフリーな点を考えたら、総合的にコスパに優れるというのがメーカー側の見立てだ。

 タイヤ界の革命児「AirFree」、天晴れである。

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みんなのコメント

4件
  • きのこん
    価格がいくらなのか、重量増にならないか、張替の費用はいくらなのか、その作業時間はどれくらいなのか、など、まだ実用化には至らないと思う。宇宙探索用や何かの特殊なレース用くらいでは?
  • Pipin
    スクエアショルダーのタイヤって轍でハンドルを取られやすいけど、ここまで極端な形だとどうなるんでしょうね。

    あと、空気圧で特性を調整出来ないから車種専用設定になるのかな?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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