車体の大きさや乗り心地、直進安定性などが疲労軽減に効果あり
運転にあまり慣れていない人はもちろん、ベテランドライバーでも、長距離運転が苦手という人は少なくないはずだ。筆者自身はシニアの領域だが、モータージャーナリストという仕事柄、新車の試乗や撮影などで長距離ドライブする機会はけっこう多い。
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そこで気づくのが車種や装備によって、運転を終えたときの疲労度に大きな差があること(若く元気ハツラツなドライバーならそんなことはないかもしれないが)。長距離、長時間運転をしても疲れないクルマであれば、帰宅後も元気いっぱい。遊びに出掛けたり、すぐに試乗記を書き始められるぐらいの体力、気力が残っているということだ。
では、どんなクルマが多くの人にとって疲れにくいのだろうか? 個人的な経験では、まずは車体の大きさ、エンジン排気量の余裕、そしてフラットで快適な乗り心地、車内の静かさ、そして直進性の安定感にあると思う。車体の大きさはそこはかとない安心感、余裕につながり、とくにエンジン性能のゆとり(おもにトルク)は、ストレスのない加速力が得られることもさることながら、走行中のアクセルペダルの踏み込み量が少なくて済み、右足の疲労度低減につながる。当然、高速走行も低回転で走ることができるから、結果として車内が静かになる。車内騒音が大きめだと、やはり疲れる。
逆に、小排気量でトルクのないクルマだと加速からクルージングまでエンジン回転を高く保たなければならなくなり、アクセルペダル操作による疲労度、車内のノイズが高まるわけだ(ダウンサイジングユニットでターボやハイブリッドシステムが付いていれば、話は別)。高速走行時の安定感という意味では、ビシリと直進し、知らないうちに行っているステアリングの微修正が少なくて済むクルマほど、腕や肩の肉体的疲労度が低減するのは、もちろんだろう。
乗り心地の良さも長距離、長時間運転での疲労度軽減に直結する。ただし、乗り心地がいいという意味にはフラットかつ姿勢変化の少なさ……が含まれる。たとえば、マツダのほとんどの車種に、ドライバーのステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させることで、横方向と前後方向の加速度(G)を統合的にコントロールし、4輪への接地荷重を最適化してスムースで効率的な車両挙動を実現する世界初の制御技術=G-ベクタリングコントロールが備わっている。実際にクルマ酔いしにくくなり、またドライバーと乗員の疲労低減に貢献してくれる技術として認められている。
マツダMAZDA3のシートにも注目で、骨盤を立てる姿勢を補助してくれる形状、機能を備え、正しい運転姿勢がとれるとともに、頭部の無駄な動きを最小限に抑えてくれるため、路面変化による視線の上下移動量が低減し、それが運転の疲れにくさに直結するのである。つねに視線が動くようなクルマは、やはり疲れやすいのだ。
もちろん、シートのかけ心地はドライバーとシートの相性によっても決まる。ボクが快適に座れるシートでも、身長、体重、座高の違うドライバーにとって快適かは別問題。自分に合ったシート選びも、じつは運転の疲労度低減のために重要なのである。新車購入前のチョイ乗り試乗では、正しいシートポジション(ステアリングの調整含む)をとることと、できるだけ、長距離、長時間、試乗させてもらうこと。チョイ乗りでは問題なしと思えたシートも、いざ購入し、長距離・長時間のドライブを経験してみると、思いのほか疲れる……なんていうこともままある。
シートや先進安全運転支援機能も疲れにくさに影響する
ちなみに、比較的体重が軽いドライバーは、座面や背もたれの張りが強いレザーシートより、ふんわり座れるファブリックシートのほうが疲れにくかったりする。一例を挙げると、ボルボがそうで、体重65kg、身長172cmの筆者だと、どうにもファブリックシートのほうがしっくりと座れ、疲れない。
ボルボの話が出てきたところで、長距離、長時間ドライブで疲れにくいクルマの装備のひとつとして紹介できるのが、世界的に採用例の少ない前両席シートマッサージ機能だ。ボルボのV60、XC60以上の上級グレードに標準装備されているのだが、運転中に背中がほぐれ、クルマから降りたくなくなるほどリフレッシュできる。ボルボで遠出する際は、マッサージ機能ONでドライブしていると目的地到着後、帰路の到着後も、ほぼ疲れ知らずでいられた経験があるほどだ(ボルボの場合、世界最先端の先進安全運転支援機能の充実度による安心感、快適感もその理由)。
長距離・長時間の高速走行でのドライバーの疲労度低減につながる先進安全運転支援機能と言えば、ACC(アダプティブクルーズコントロール)がその筆頭だ。空いた高速道路ではペダル操作から解放されるため、右足の負担は最小限になる。また、前車との一定の距離を保つ追従走行によるリラックス感、安心感も運転にかかわる疲労度低減に直結。
さらに、ACC最大の威力を発揮する場面が高速道路の渋滞時。全車速域対応のACC(電子パーキングブレーキ必須)であれば、渋滞も苦にならなくなるはずで、これまた渋滞疲れの低減に貢献してくれるのだ。自動運転技術に近いレーンキープ機能やブラインドスポットモニターも付いていると、さらに安心・安全のドライブが可能になり、結果的に疲れにくくなる。
話を整理すると、長距離、長時間ドライブでの疲れにくさは、ある程度のボディサイズとエンジン性能が必要で、フラットで姿勢変化、視線移動の少ない乗り心地、車内の静かさ、シートの相性、そしてACCを含む先進安全運転支援機能の充実度が決め手となるとボクは考えている。
付け加えれば、車高というかドライバーの目線の高さは、ミニバンやSUVのようにある程度高いほうが、高速走行でのリラックス度は高い……と思っている。低すぎる目線だと、隣を走るトラックなどの圧力がより大きく感じられるからで、それが緊張によるストレスになりやすいということだ。
もっとも、小さく小排気量のクルマでも例外はある。新型スズキ・ハスラーなどがそうで、ターボモデルなら軽自動車最上級どころじゃないフラット感極まる上質で快適無比な乗り心地、先代を大きく上まわる軽自動車最上級の安定感の高さ、車内の静かさ、クロスオーバーモデルならではの視線の高さ、そしてターボエンジンのトルキーな動力性能のゆとりをもつ。
またACCの装備によって、たとえば東京~軽井沢の高速道路、上信越道・碓井軽井沢ICからプリンス通りに至る山道を足早に走破、往復した経験があるのだが、ふんわりお尻が沈み込む、抜群のかけ心地を持つ前席シートとの相性の良さも相まって、まったく疲れなかった。自動車メーカーのカタログやウェブではわかるはずもない、クルマとドライバーの相性もまた、長距離、長時間ドライブでの疲れにくさに大きくかかわっているのかもしれない。
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みんなのコメント
IQOSを吸いながら運転
そりゃ〜疲れるでしょう。