2019年3月、ボルボは安全に関する記者発表会とクラッシュテストを、本社のあるスウェーデン・イエテボリでおこなった。
筆者も参加したが、セイフティはクルマづくりの基本ではないか? と、あらためて思わせてくれる内容であった。
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ボルボといえば“安全性の高いクルマ”というイメージが強い。それもそのはずで、創業以来、安全性を重視したクルマを作りつづけており、そのことを訴えつづけてきた。
1927年にボルボが乗用車づくりをスタートさせたとき、創業者は安全性を重視することをコアバリューに置いたという。それは当時としては画期的なアイディアだった。
ボルボは安全性を高めるべく、クラッシュしたクルマの調査を徹底する。1970年、社内に事故調査隊を組織したのは、イエテボリから半径100km圏内で起こったボルボ車が関与したすべての交通事故の調査をおこなうためだった。こうした調査によって得られたデータを蓄積し、車両の開発に役立ててきた。
今回のイベントでは、本社ちかくにあるテスト施設にジャーナリストを集め、大型SUV「XC90」のクラッシュテストを公開した。しかもそれは、通常のクラッシュテストより10~30km/hも高い速度(80km/h)で実施された。
合図のあとワイヤで引っ張られた車体がすっとんできて、アルミニウムで出来た壁に激突する。衝撃の瞬間、車体は高く浮き上がり、そして地面にどすんっ、と着地した。一瞬の出来事だ。
クルマが眼の前で、瞬時に大きく変形するのを見るのは、ショックだった。それほど、インパクトのあるテストであった。
「速度が高まれば、衝突時の衝撃も大きくなります。わが社の調査班によると、実際の衝突事故の瞬間の速度は、(直前にブレーキを踏んでいるので)30km/h程度であることが多いようです。しかし、テストではあえてより高い速度でのクラッシュを起こし、安全な車体の開発に役立てています」
ボルボ・カーのホーカン・サミュエルソン社長兼CEOが、そばでそう説明した。
今回のテスト時、ボルボが強調したのは、「EVAイニシアティブ」という考えかたである。EVA(Equal Vehicles for All)とは、“万人に安全なクルマを”という意味だ。そこでいま問題なのが、衝突時における女性乗員の安全性を向上することだという。
「事故調査では、女性のケガのほうが男性よりひどいという結果が出ています。男性型のダミー人形中心でテストをしてきた結果ではないか? と、われわれは考えています。そこでいまは、女性の安全性をより高めるべく、女性型のダミー人形を使ったテストを強化しています」
ボルボのセイフティセンターを担当するシニアバイスプレジデント、ドクター・ロッタ・ヤコブソンは言う。
たしかに、XC90のクラッシュテストでは、女性型のダミー人形が使われていた。車内に収まったダミー人形は、エアバッグになどに守られた結果、見た目の損傷はほぼなかったけれど。
ボルボは現在、「ビジョン2020」を掲げている。2020年までに、新車のボルボがかかわる事故での死者や、深刻な身体への損傷をゼロにするというのが目標だ。そのためにも、女性や子どもの安全性を高めるのは重要である。
ドクター・ヤコブソンは続けて、事故の主因が「飲酒、速度超過、注意力散漫」にあり、それらの対策をより強化することも重要と話す。
ボルボでは近いうち、車内にドライバーモニター用のカメラを設置する予定という。眼の動きや顔の表情をカメラが捉え、疲労や眠気などを検知すると、運転を中止するよう警告するそうだ。将来は、自動運転システムと組み合わせ、ステアリングホイールを自動操作して路肩に寄せ、完全停車させる制御も可能になるかもしれないという。
速度超過対策については、路上にある速度標識と連動し、クルマが自動的に上限速度を設定するシステムが考えられている。さらに「全車の最高速度を、180km/hにしようと考えています」というサミュエルソン氏の発言に、会場はどよめいた。
ちなみに、筆者はサミュエルソン氏から「あとで知ったのですが、日本車も180km/hでスピード・リミッターが作動するようになっているのですね」と言われた。日本において、180km/h制限が事故低減に寄与しているかどうかはわからないものの、ドイツのように速度無制限区間のある欧州の高速道路では、影響が出るかもしれない。
ボルボは記者発表会の席上に、ドライブシミュレーターも持ちこんでいた。アクセルペダルが軽く踏めるようになっている。そのため、すこし踏むだけでモニターに表示されている速度があっというまに高くなる。すると画面上のクルマは、カーブを曲がりきれず、道路から逸れてしまう。
「速度が高くなればなるほど、クルマのコントロール性がどんどん悪くなるのを知ってもらうため、このドライブシミュレーター体験を用意しました」と、ボルボの担当者が解説した。そして、「大事なのは高い速度を、不用意に出さないことです」と述べる。
いくら安全性の高いクルマを開発しても、ドライバーが正確に運転してこそ事故は減る。当たり前のことかもしれないが、ふだん意識していないひとも多いはずだ。今回のイベントで、ボルボがそれを思いださせてくれたのであった。
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