2019年末に生産終了となった「ジューク」に代わる期待の新型車「キックス」が、2020年6月10日に発売されることがわかった。新型コロナ禍による生産現場の混乱があるが、もう間もなくの登場となりそうだ。
2020年2月の販売台数では、日産「ノート」と僅差ではあったが、コンパクトSUVのトヨタ「ライズ」が好調な売れ行きを見せトップを走っている。新型車が少なく、国内販売で苦戦を知られている日産としては、形勢逆転の一手としてキックスの投入に期待が集まっている。
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進化版のe-POWERが搭載されるというキックス。今回はその最新情報をお届けしたい。
文/遠藤徹
写真/NISSAN、TOYOTA
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■パワートレーンは1.2L e-POWER! 海外仕様とは異なる意匠を採用!?
日産は新型コンパクトSUV「キックス」を2020年5月20日発表、6月10日発売の日程でスケジュール調整をしている模様である。
2019年末で生産中止したジュークの後継モデルの位置づけであり、若干サイズアップ、上級シフトさせ、大幅に改良したシリーズハイブリッドの「1.2L e-POWER」ユニットを搭載する。
ジュークはSUVレイアウトのボディシェルで、フロントが鋭い目つきの異形ヘッドランプと大型丸目補助灯を組み合わせたマスクと、リヤルーフがクーペ的の組み合わせで、ひと目でそれとわかる個性的なデザインを採用していたが、新型キックスはガラリと変えて、シンプルで飽きの来ないクロスオーバーSUVデザインを採用する。
こちらは北米、中南米で発売されている2020年仕様の「キックス」。日本仕様は、すでに国内でテストしているところを押さえられているが、フロントグリルが現行型「セレナ」のような縦方向に広がった逆台形のデザインになると考えられる
フロントマスクは、横長のヘッドランプケースに丸目2灯式LEDを埋め込んでいる。グリルは大型逆台形タイプで、まわりを日産独自のVモーション銀メッキ板を走らせている。リヤに向けてのルーフラインは、ジュークのようなファストバッククーペシェルではなく、なだらかな弧を走らせシンプルにまとめているので、室内はリヤ席での広い居住空間を確保したレイアウトで仕立てていることが伺える。
■ジュークに比べて大幅に向上した快適性
キックスのボディサイズは全長4290×全幅1760×全高1610mm、ホイールベース2620mm、トレッド前1520mm、同後1535mm。ジュークは4135×1765×1565mmだから、同モデルとの比較では全長がプラス155mm、全幅マイナス5mm、全高プラス45mm、ホイールベースはプラス90mmとなっている。
したがって全長が長く、背が高くなり、ホイールベースは大幅な延長をしているから、室内の居住空間は大幅に拡大され、ヘッドクリアランスも十分に確保しているといえる。走行安定性もかなり向上させていることが伺える。これまでライバルのトヨタ「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」に比べると小ぶりで見劣りがしていたが、サイズ&クオリティアップによって十分な商品力を確保すべく仕上げているといえるだろう。
キックスは全長4290×全幅1760×全高1610mm、ホイールベース2620mm。頭上空間が広く、ジュークと比べると後席の居住性に優れる
ジュークは全長4135×全幅1765×全高1565mm、ホイールベース2530mm。サイドビューを見るとわかるが、後席空間はあまり広くなく、前席をメインとして使うユーザー向けの設計だった
C-HRは全長4385×全幅1795×全高1550mm、ホイールベース2640mm。スタイリッシュなクーペスタイルを採用したため、後席の居住性が狭くなってしまっている
搭載するパワーユニットは、シリーズハイブリッドである1.2L e-POWERのみ。基本的にはノートに積んでいるのと同じだが、これをベースに大幅に改良している。アイドリング時のエンジン音がうるさいとの指摘があるのでこれをエンジン自体の改良やマウントの工夫で大幅に低減。
ペダルを離すと低速域でのブレーキが利き過ぎる傾向があったので手直しし、ワンペダル走行の操作性をさらに改善している。e-POWERユニットは、ノート用と同じでエンジンは1.2L 3気筒、発電用のみで動力には使わずモーターのみで走行する。
エンジンの最高出力は58kW(79ps)/5400rpm、最大トルク103N・m(10.5kgm)/3600~5200rpm、モーター最高出力80kW(109ps)/3008~10000rpm、モーター最大トルク254N・m(25.9kgm)/0~3008rpmとなっている。
■グレード構成はシンプル! プロパイロットも搭載
グレード構成は「X」と、Xの特別バージョンである「ツートーンエディション」だけとシンプル。このツートンエディションはボディパネルだけでなくシートのサポート部、ドアトリム、インパネ回りなどに、ボディパネルに連動させた2トーン仕立てとした仕様にしているのが特徴となっている。ボディカラーは2トーンが4色、モノトーン8色で2トーンを売りのひとつにしている。
こちらはキックス(北米仕様)の内装。ノートと同じe-POWERを採用するため、シフトレバーは電子式のシフトレバーに変更されると思われる
価格体系は、対抗モデルがトヨタ「C-HR」とホンダ「ヴェゼル」の両ハイブリッドとしていることから車両本体価格は280~310万円あたりに設定される見込みである。自動運転支援装置のプロパイロットやドアの自動オープナー、安全対策強化のための進化デバイスの装着具合ではこれより20万円程度上乗せされる可能性もある。
生産販売態勢で特徴的なのは国内製ではなく、日産のタイ工場で組み立てられ、日本国内で完成検査を受け販売店に配車されることである。つまりマーチと同じ手法を採用するのである。e-POWERユニットは日本から出荷され、現地で組み付けるものと思われる。
登場時はe-POWER一本だが、1.5L・NAガソリンや1.6Lターボ車についても順次追加設定するものと思われる
キックスそのものは、中南米やアジア圏などで3年ほど前から発売開始し好調に売れている。日本仕様は現地バージョンをベースにアレンジされ、輸入される見込みである。ただマーチのケースに見られるように、タイ製でも品質的には問題がないが、「発展途上国製」というイメージの悪さから、これまでの現地生産モデルはあまり売れ行きがよくない状況が多かった。
マーチは、国内製の時代は量販戦略モデルとして好調な販売実績を残していたが、タイ製に切り替えられてから衰退の一途となり、最近では生産中止も囁かれている。
新型キックスはマーケットニーズの高いコンパクトSUVのコンセプトであり、評価の高いe-POWERユニットを搭載するので、タイ製で初のヒット作になることも予想される。2020年4月末にも価格を決め、事前の先行予約を開始する見通しである。
■期待度は高いが販売現場には一抹の不安もあり
●証言1:首都圏日産店営業担当者
新型キックスに対する期待は大きいが、不安部分もある。ひとつは搭載するパワーユニットがe-POWERだけなのと、タイからの輸入モデルということだ。
e-POWER車だけだと、ガソリンNA車よりも50万円以上も高くなるので売りにくい。ジュークのように1.5L NAガソリン車や1.6L ターボ車が設定されれば安くなり、もっと幅広い層に売り込めるはずだ。これだけだとC-HRやヴェゼルと対抗できない。
タイからの輸入モデルだと、イメージ的によくないし、安定して供給ができない。マーチのように日本で完成検査を実施するので、品質的に問題がないとメーカーは説明するだろうが、イメージの悪さは払しょくできないはず。マーチの失敗の二の舞にならなければよいがと思っている。
●証言2:首都圏日産プリンス店営業担当者
ノートのe-POWER車は同シリーズの70%の販売構成比でリード役を果たしているので、新型キックスへの期待は大きい。価格がかなり割高になるので、残価設定クレジットの低金利設定などでカバーする必要がありそうだ。
e-POWERユニット自体はかなり改良されて、ワンペダル走行がよりやりやすくなっているらしいので、試乗を通じて走りのよさを周知徹底させるようにしたい。登録車では久し振りの量販可能なニューモデルが発売になるので楽しみである。
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