SUVの元祖の1台と言っていいジープ。その歴史も長い。自動車メーカー各社が電動化へ進む中、そんなジープも電動モデルのラインナップを拡大。3モデルをラインナップした元祖オフローダーの電動化の現状を見ていこう。(Motor Magazine2023年7月号より)
急ピッチで進むジープブランドの電動化
「ジープラングラーにプラグインハイブリッド版が追加された!」と聞けば、アナタは驚くだろうか?
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
本格クロカン4WDの雄であるジープ ラングラーと、燃費を改善しCO2排出量削減に役立つプラグインハイブリッドの組み合わせは、一見したところ奇妙にも思えるが、日本市場に投入されているジープのPHEVとしてはラングラーは3モデル目。しかも、ジープブランドではこれ以外にもコンパス4xeがラインナップされているほか、ジープ初のBEV「アベンジャー」も発表済み。いいかえれば、ジープは現在、電動化を急ピッチで進めているとも言えるのだ。
その理由を、ジープ自身は「新しいレベルの効率、環境問題に対する社会的な責任、オフロードとオンロードにおけるパフォーマンスと走破性」を実現するためと、比較的シンプルに説明している。
考えてみれば、道なき道を縦横無尽に走るために作られたジープだからこそ、自然環境を守る姿勢がより重要になるとも捉えることができる。いずれにせよ、たとえジープであっても電動化はまったなしの局面を迎えていることだけは間違いないだろう。
先ほど私はジープのPHEVとしてはレネゲード、コンパス、グランドチェロキー、そしてラングラーの4モデルがあると説明したが、ドライブトレーンの方式としては、レネゲード/コンパスならびにグランドチェロキー/ラングラーの2系統に分かれる。
ラングラー4xeは2基のモーターを使って「最適制御」
まず、レネゲード/コンパスについて説明すると、前輪は4気筒1.3Lのガソリンターボエンジン+電気モーター(20ps)で、そして後輪はの電気モーターで駆動するのが基本。バッテリー容量は11.4kWhだ。一方でグランドチェロキーとラングラーは、フロントに4気筒2Lのガソリンターボエンジンに2基のモーターを組み合わせ、ここで生み出したトルクを、4輪にメカニカルに分配する構成となっている。
ちなみに、レネゲードとコンパスはイタリアのメルフィ工場で生産されるのに対し、グランドチェロキーとラングラーはアメリカ製(前者はミシガン州デトロイトのマック工場、後者はオハイオ州トレドのトレド・アッセンブリー・コンプレックスで生産)となる点も興味深い。
ラングラー4xeのメカニズムを、もう少し詳しく説明しよう。前述のとおりラングラー4xeには2基のモーターが搭載されているが、うち1基はベルトを介してクランクシャフトと連結。エンジン始動に役立てるとともに、エネルギー回生用の発電機としても用いられる。
もう1基のモーターはエンジンと向き合う形でギアボックスに内蔵され、回生と力行を担う。なお、モーターの前後にはクラッチが設けられており、エンジン側のクラッチを切り離せばEV走行が可能になるほか、ギアボックス側のクラッチはギアシフトの際やコースティングなどに用いられる模様。
なお、動力の断続はすべてクラッチで行うため、ラングラー4xeにはいわゆるトルクコンバーターが存在しないことも注目ポイントのひとつだろう。
2基のモーターに電力を供給する15.46hのリチウムイオンバッテリーは後席下に搭載。WLTCモードで最長42kmのEV走行が可能とされている。なお、ラングラー4xeは急速充電に対応しておらず、普通充電のみが可能となっている。
ちなみに、現時点でのラングラー4xeのグレードはルビコン一択。したがってオフロード走行用の機能は満載で、必要に応じてセンターデフやリアデフをロックできるロックトラックフルタイム4×4システムや電子制御式フロントスウェイバーディスコネクトシステム(スウェイバーとはスタビライザーのこと)などを搭載。
4WDのロー/ハイが切り替えられる2速トランスファーやヒルディセントコントロールも装備しており、ラングラーとして当然のことではあるけれど、ジープが定めた高度なオフロード性能を備えていることを示す「トレイルレイテッド」のバッジも与えられている。つまり、搭載するパワートレーンがプラグインハイブリッドとなることを除けば、これまでのラングラールビコンに比肩するオフロード性能を備えていると推察できるわけだ。
念のため4xe以外のラングラーについて触れておくと、2年前までラインナップされていたV6自然吸気エンジンはもはやなく、エンジンを4xeと同じ2L直4のガソリンターボに一本化したうえで、アンリミテッドサハラとアンリミテッドルビコンの2グレードに集約している。これも社会の趨勢というものかもしれない。
進化も感じられた、しっかりと伝わる接地感
前置きがだいぶ長くなったが、そろそろラングラー4xeの印象を報告しよう。
オフロード走行性能優先のルビコンは、例によって大柄なブロックパターンのマッドテレインタイヤを履いているが、このタイヤがクルマの第一印象を決めているといっても過言ではない。走り始めればヒーヒーというロードノイズが耳に届き、とくに低速域ではブロックパターンゆえのざらついた手触りが伝わってくる。
高速道路では、ひと昔前のクルマのように、周期的に右へ左へとハンドルを切らなければいけないのも、このマッドテレインタイヤの影響とみて間違いなさそうだ。
ただし、冷静に観察すれば、ハンドルを通じて接地感もしっかり伝わってくるし、修正のためにハンドルを切り込んでからそれがクルマの動きに反映されるまでの時間も、かつてに比べればはるかに短い。しかも、コーナーに向けていったんハンドルを切り込めば、まずまず一定の走行ラインを保ってくれるので不安感も少ない。
外観は同じように見えるマッドテレインタイヤだが、その実、しっかりと進化していることが今回の試乗をとおして理解できたように思う。
オフロードで扱いやすい、リニアに立ち上がるトルク特性
同じパワートレーンを搭載するグランドチェロキーではほとんど目立たなかったエンジン音も、ラングラー4exでは比較的はっきりと聞こえる。もっとも、ロードノイズのほうがそれ以上に大きいから、ほかの多くのPHEVとは異なり、EV走行だからといって「静かだなあ」という印象も少ない。とはいえ、これくらい賑やかなほうがいかにもラングラーらしく感じたのも事実である。
エンジンは、かつての3.6L V6エンジンに比べると、ボトムエンドでのトルク感がやや物足りなかったものの、スロットルペダルの踏み込み量に応じてトルクがリニアに立ち上がる特性。それだけに、とくにオフロードでは扱いやすいタイプと推測できる。
今回は河原のジャリ道などを軽く走った程度で本格的なオフロード走行は試していないが、4WDシステムやシャシの基本的なスペックを考えれば、従来のラングラールビコンに対して悪路走破性が明確に低下したとは考えにくいが、車重が300kgほど重いためか、カタログ上のWLTC燃費は8.6km/Lで、コンベンショナルな2Lターボを搭載するアンリミテッド ルビコンの9.2km/Lを下回っている。
本来、PHEVは外部電源で充電した電力で走行するのがCO2削減にはもっとも効果的とされるが、それにしても、燃費単体でもう少しエンジン車をリードして欲しかったというのが正直な印象だ。
ちなみにラングラー4xeの価格はエンジン車より125万円高い1030万円。ラングラーの温暖化現象防止に向けた第一歩が、この4xeシリーズから始まった。(文:大谷達也/写真:井上雅行、永元秀和)
ジープ 4xeシリーズ 試乗車主要諸元
ジープ ラングラー アンリミテッド ルビコン4xe主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×1930×1855mm
●ホイールベース:3010mm
●車両重量:2350kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:200kW(272ps)/5350rpm
●最大トルク:400Nm/3000rpm
●モーター最高出力:前46kW(63ps)、後107kW(145ps)
●モーター最大トルク:前54Nm、後255Nm
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・65L
●WLTCモード燃費:8.6km/L
●タイヤサイズ:255/75R17
●車両価格(税込):1030万0円
ジープ グランドチェロキー サミットリザーブ4xe主要諸元
●全長×全幅×全高:4910×1980×1810mm
●ホイールベース:2965mm
●車両重量:2510kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:200kW(272ps)/5350rpm
●最大トルク:400Nm/3000rpm
●モーター最高出力:前46kW(63ps)、後107kW(145ps)
●モーター最大トルク:前54Nm、後255Nm
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・71.9L
●WLTCモード燃費:10.4km/L
●タイヤサイズ:275/45R21
●車両価格(税込):1227万0円
ジープ レネゲード サミットアップランド4xe主要諸元
●全長×全幅×全高:4255×1805×1695mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ+モーター
●総排気量:1331cc
●最高出力:96kW(131ps)/5500rpm
●最大トルク:270Nm/1850rpm
●モーター最高出力:前33kW(45ps)、後94kW(128ps)
●モーター最大トルク:前53Nm、後250Nm
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・36L
●WLTCモード燃費:16.0km/L
●タイヤサイズ:235/55R17
●車両価格(税込):568万円
[ アルバム : ジープ ラングラー4xe × グランドチェロキー4xe × レネゲード4xe はオリジナルサイトでご覧ください ]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
発表5日で受注停止! 瞬時に5万台のバックオーダーを抱えたスズキ新型「ジムニーノマド」はいつ買える? じつは“意外や早く受注再開”されるかもしれない その理由とは
日産復活のカギはやっぱり[新型マーチ]!? ヤリスやフィットを超えるコンパクトカー誕生なるか!? 2025年度に発売確定!
トヨタ新「ハイエース」発売! “GRパーツ仕様”も発表! タフ感すごい「最強ゴツ顔」が激カッコイイ! 大人気のTRDエアロが「GRブランド」化して新登場!
“予約殺到”で5万台のバックオーダーを抱えたスズキ新型「ジムニーノマド」が発表5日で受注停止! ネットではどんな反響が集まっている?
怖すぎ!? 高さ4m「巨大つらら」発生でクレーン車が出動 国道の「ループ橋」で緊急除去作業へ SNSでは「作業ありがとうございます」感謝の声も
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
高速道路を「トラック横並び完全封鎖」で渋滞…むかつく風景が日常茶飯事な「意外な理由」とは? 逆に嫌がらせしたら「免許返納」レベル! 思わぬ「うっかり交通違反」にも注意
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
日産復活のカギはやっぱり[新型マーチ]!? ヤリスやフィットを超えるコンパクトカー誕生なるか!? 2025年度に発売確定!
発表5日で受注停止! 瞬時に5万台のバックオーダーを抱えたスズキ新型「ジムニーノマド」はいつ買える? じつは“意外や早く受注再開”されるかもしれない その理由とは
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?