道なき道を駆け抜ける本格派のオフローダーであるディフェンダー。新たに加わった待望のディーゼルエンジンモデル搭載モデルはSUVの中で、どんな輝きを見せてくれるのだろうか?
ワイルドとエレガンスのほどよい融合が見える
「速さは美しい」ことを証明してくれたフェラーリ初の市販PHEV「SF90ストラダーレ」
2002年、F1イギリスGP取材のために訪れたシルバーストーン・サーキット。レンタカーを降りてプレスセンターに向かおうとしたとき、トライアンフ・ボンネビルに跨がった一人の男性が我々の横に乗り付けた。7月初旬の朝とはいえ、20度にも満たない気温だったと思うが、Barbour(バブアー)のライダースジャケットに身を包んだ彼の、高貴ささえ感じさせる、その決まりように感動すら覚えた。
英国の小さな地方都市のサーキットで、3つのロイヤルワラントを獲得したブランドのオイルドジャケットを着込んだ男が、これまた英国のプライドでもあるモーターサイクルに乗って登場なのだ。例えこれを日本でやったとしても、どこか演出っぽく見え、空虚感を感じるかもしれないが、ここでは違った。少しばかり重苦しい雲が浮かんだ青空、周囲に広がる青々とした草原、そして英国のサーキットならではの佇まいなど、風景を構成するパズルのピースが、すべてピタリとハマって、まさに一枚の絵が完成しているのだ。ただただひたすらに見とれるばかりである。
さらにここで彼は、我々に向かって「拓磨(佐藤拓磨)の活躍を祈っているよ」と、挨拶代わりの一言を残してプレスルームに消えていった、となれば、出来すぎだったのだが、さすがに無言で立ち去った。
それにしてもバブアーのジャケットである。使い込むほどに味わいを増していく独特の生地は雨風に強く、汚れも付着しにくい、まさにジャケットにとっては機能的で最適ともいえる素材。伝統のオリジナルデザインを踏襲しながら、時とともに素材やディテールに数々の改良を加え、多くの憧れに応えてきたモーターサイクルジャケットの存在感は、目の当たりにしたシーンの中で、間違いなく重要な構成要因だった。
当然だが、このジャケットに似合うのはモーターサイクルだけではない。目の前にあるランドローバー・ディフェンダーとのコンビネーションも、相当に決まるはずである。以前、徳大寺有恒さんが「ロールス乗るならレザーを傷めないためにもシルクのコートを羽織りたいね」と言っていたが、ディフェンダーの佇まいにはオイルドジャケットだ。
1948年、ローバー・モーター社(ランドローバーの前身)がオフロード向け車両として発売したランドローバー・シリーズI がルーツのディフェンダー。ランドローバーの中にあってはもっともオフロードイメージの強い、まさにクロスカントリーモデルだ。
「レンジローバー」が4WD界のロールスロイスとも呼ばれプレミアムなポジション、「ディスカバリー」は軽快で気軽なSUVというポジションと合わせ、これでランドローバーの3つのブランディングが、より明確になった。
そんなディフェンダーだが、最新モデルが伝統のイメージと歴史を強く感じさせてくれるデザインで日本デビューを果たしたのは2020年。このときは、当然のように多くのファン、そしてファッションにうるさいSUV乗りの心に響いた。
一方で当初はロングボディの110(ワンテン)に、最大出力は300馬力で最大トルク400N・m を発生する2Lの直列4気筒のガソリンターボエンジン、そして8速のATミッションと組み合わせた仕様のみ。その後、ショートホイールベースが加わり、今回の3Lの直列6気筒ディーゼルターボエンジンモデルの追加へと、五月雨式に登場してきた。2,4トンほどあるボディにもっともふさわしい、まさに待望のディーゼルモデルの登場である。最高出力は300馬力だが、最大トルクはガソリンよりも250N・m大きい650N・m。これがエンジン回転数1500rpmという低い回転から力強さを見せるのだから実に心強いのである。オフロードばかりか、一般道でもこのトルク感たっぷりの走りと、ストローク感たっぷりの極上の乗り心地は、ディフェンダーのワイルドな雰囲気に、エレガントさを与えてくれるのだ。
ワイルドとエレガンスのほどよい調和。やはりランドローバーも、Barbour(バブアー)同様にロイヤルワラントだけのことはある。ライフスタイルの中にピリッと英国風味を着かけたいとき、この組み合わせもいいと思う。
2灯式の丸目ヘッドランプとスクエアなボディは旧型からDNAを受け継ぎ、現代風にアレンジ。最大渡河水深は900mm (エアサスペンション)とオフロード性能も高い。
スペアタイヤを背負ったリアスタイルには、より旧型のイメージが強く香ってくる。最上級のXグレードは110のディーゼルのみに設定。
つや消し塗装のボディに光沢感のあるブラックの装飾を組み合わせるというカラーリング。
フロントマスクと共にワイルドな表情は押し出し感たっぷり。
外観から一気にモダンとなるインテリア。ウインザーレザーやウッドによる上質な作り込みが行われている。
ホールド感のいいシートはビンテージタンとエボニーのツートーン仕様。肌触り、座り心地ともにランドローバーのスタンダードを守っている。
48Vのベルト駆動型スタータージェネレーターが組み合わされたトルクたっぷりのディーゼルエンジンが、一般路では最高速191km/hの実力でゆったりとした走りを実現。
味つけのいい8速ATとディーゼルエンジンの組み合わせにより、9.9km/l(WLTCモード)という燃費を実現している。
(価格)
11,970,000円(D300/税込み)
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,945×1,995×1,970mm
車重:2,420kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
(エンジン)
排気量:1,997cc
最高出力:221kw(300PS)/4,000rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/1,500~2,500rpm
問い合わせ先:ランドローバーコール 0120-18-5568
撮影/尾形和美
TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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ハイオクガソリンで、燃費がリッター7kmはきついですね!