■EVをリードする日産が作った新型軽EV「サクラ」
2010年に5人乗り量産EVの「リーフ」を発売して以来、EVを世界で広めてきた日産。今回、長年培ったノウハウをギュッと凝縮したのは、今や新車販売の約40%を占めている軽自動車でした。
【画像】シートがまるでソファ!? 内外装がオシャレすぎる新型「サクラ」実車をチェック(20枚)
「気軽に日常使いできる軽と、EVの相性はとても良いと考えました」と商品企画本部の鈴木さん。
というのは、コンパクトで取り回しがよく、ランニングコストも抑えられることで支持を得ている軽自動車にも、実はユーザーにとって不満や弱点があり、EVにすることでそれらを改善できると考えたからです。
確かに、軽自動車は高速道路の追い越しや合流、坂道、多人数乗車時などに加速力が足りないと感じる場面があったり、エンジン音がうるさく、長時間走行が疲れやすいこと、デザインやインテリアが安っぽいといったところに不満を感じるユーザーも多いのが現状。
モーター走行となるEVなら、いつどんなシーンでも思い通りの加速力が得られ、静粛性の高い走りが実現できます。
軽EVとして新たに登場した日産新型「サクラ」が三菱自動車との共同開発で、新型「ekクロスEV」と兄弟車となるのは周知されていますが、三菱があくまで軽自動車のトップグレードとして設定しているのに対し、日産はサクラにまったく新しいデザインを与え、上質感の高い内外装を実現。
それも、これまでの軽ユーザーの不満を打破し、生活の質を高めてくれるような軽EVにしようという、日産の意気込みを感じる部分です。
さらに、ベースとなっている「デイズ」の名ではなく、サクラというまったく新しい名前も用意。これは社内公募で集まった1200件余りの候補のうち、9名が挙げていた名前で、日本人にもっとも親しまれている花のひとつであることから、「日本のNew Normal モデルに育てたい」という日産の想いと合致したのだといいます。
そしてもうひとつ、軽自動車とEVの掛け合わせで実現したことは、どうしても割高になってしまう価格を引き下げること。
現状では補助金頼みではあるものの、軽のガソリンターボ車と同等程度の価格になったことは大きな進歩です。
たとえ補助金ナシでも、車両価格が300万円を切るEVがようやく登場したことで、一気にEVが身近な存在となったと感じます。
また、EVになかなか踏み込めないもうひとつの要素が、航続距離の問題。リーフや「アリア」のように、ファーストカーとしての需要が高く、「遠くへ行きたくなる」タイプのEVでは、やはり400km、500kmの航続距離が求められてしまうのは仕方のないことです。
その一方で、ご近所のチョイ乗りや通勤のアシなどで使う人が多い軽なら、それほど航続距離が長くなくてもいいや、と思えるから不思議です。
新型サクラは20kWhのバッテリー容量で、航続距離は180km(WLTCモード)となっていますが、日産がガソリン車に乗る人が1日に走る距離を調査したデータによると、30km以下が53%と半数以上を占め、次いで100km以下が31%、180km以下が10%と、じつに94%の人たちをカバーできるという根拠によるもの。
充電の不安を持つ人にも、1日30km以下の走行なら、5日に1回のおうち充電でOKという、実用性の高さも大きな魅力としています。
もちろん、普通充電と急速充電の両方に対応しており、目安となる充電時間は2.9kWの普通充電で約8時間。出力30kW以上の急速充電で80%までが約40分。
バッテリー冷却システムの採用により、高速道路でちょこちょこ急速充電を繰り返しながら遠出をするといった、一般的にはバッテリーの劣化を早めてしまうような使い方をしても、安定した充電性能を保持できるというのも画期的です。
ルート案内においても、Nissan Connectサービスがバッテリー残量や道路状況を考慮した最適な案内をしてくれるため、EVビギナーでも「余裕だと思っていたのに途中で電欠した」というような失敗が少ないのではないかと思います。
■まるで高級セダンのような静粛性
軽とEVの長所をしっかり抽出して誕生した、日産初の軽EVであるサクラは、アリアやリーフと並ぶ日産の「EV三兄弟」として見劣りしない、堂々たる完成度となっています。
フロントマスクは、アリアとイメージを共にする新世代Vモーショングリルをはじめ、軽初となるプロジェクタータイプの3眼ヘッドライトで、薄く鋭い眼光の先進性もアピール。
サイドビューで目を惹くのは、日本の伝統美を感じさせる「水引」にインスパイアされた、アルミホイールのデザイン。
リアビューにも、格子をヒントにしたワイドなLEDリヤコンビネーションランプなど、どことなく和の雰囲気を感じさせる、とても上質でセンスいい佇まいとなっています。
インテリアもかつて軽では見たこともないほど洗練されていて、手触りの良いファブリックがインパネやドアインナーなど広範囲に張られ、シートはふっくらとしたクッション性を感じさせるソファデザインです。
インパネはカッパー色のフィニッシャーが水平に広がり、ドアのスイッチ類やステッチまでコーディネートされて大人っぽい雰囲気。デイズよりもインパネの張り出しを抑え、広々とした空間と相まって、座っているだけで豊かな気持ちになれるインテリアとなっています。
また、サクラの室内はガソリンモデルのデイズと同等の広さを確保しているのが立派。EVは大量のバッテリーを搭載するため、室内空間や荷室を犠牲にしてしまう可能性もあるものの、日産が開発したバッテリー「ユニバーサルスタック」は自由に高さが変えられるため、フロア下トンネルスペースに合わせて搭載したことで、広い室内空間が確保できています。
荷室容量が、床下の収納スペースがやや浅いのですが、床上のスペースはガソリン2WDモデル同等。後席は左右一体式の前後スライドと、左右独立式の前倒し機構があるのも同じで、使い勝手の良さも健在です。
さて、運転席に座ってみると、目の前には7インチのアドバンスドドライブアシストディスプレイと9インチの統合型インターフェースディスプレイ(モノリス)が並んで置かれており、未来のクルマ感でいっぱい。スタートボタンを押せば、パッと鮮やかな画面表示が現れます。
音や振動がまったくなく、小ぶりな電制シフトを操作するところは、早くもEVを実感するポイントです。
初めての一般道での試乗なので、少し控えめにアクセルを踏んで発進すると、スルスルっとなめらかで質感の高い加速フィールが惜しげもなく引き出されます。
地下駐車場から地上への上り坂も、大人3人+重いカメラ機材を乗せているとは思えない、余裕たっぷりの走りにすでに感心。
デイズのターボモデルの約2倍となる195Nmの強大なトルクを、日産ならではの高度な制御技術で賢く適切に引き出せるというだけあって、右足がまったく頑張ることもなく、ただ普通にペダルに足をのせているような感覚で、信号待ちからの発進も車線変更もスイスイと快適に走れると実感しました。
そして驚くのは、市街地でも十分に実感できる静粛性です。試乗した環境がちがうため、一概に比較はできないものの、なぜかekクロスEVよりさらに静かなような……と思い開発者に聞いてみると、サクラはアルミホイールを標準装備することにこだわり、それによって足もとからしっかりと剛性をアップし、ロードノイズの抑制を狙ったとのこと。
また、サクラはゼロからデザインをやり直したため、ドアミラーのベース部分などを作り直すことができ、風切り音も抑えられているといいます。
これらは高速道路に入るとさらに感じるところで、どこまでも気持ちのいい加速フィールと、振動の少なさ、会話がまったく邪魔されることのない静かさは、高級セダンに乗っているといわれても信じてしまいそうなほど。
後席は、前席ほど振動が抑えきれていないシーンもややありましたが、それでも長距離走行がイヤになることはなさそうな快適性を感じました。
さらに、サクラには「Eco」「Standard」「Sport」の3つの走行モードと、アクセルペダルのみで減速操作ができる「e-Pedal Step」のオン/オフ、シフトで操作するBモードがあります。
これらを自在に組み合わせれば、まったくキャラクターの異なる走り味になり、走るシーンに寄って変えるのも良し、いろいろ試してお気に入りを見つけるのも良し。
たとえば市街地では、Ecoモードでe-Pedal Stepをオフで走れば、まるでコースティングしているような軽やかな加速フィールで、ストップ&ゴーもラクに走れます。
カーブの多い道では、Sportモードでe-Pedal Stepをオンにすると、キュッキュッと機敏な加減速のコントロールがアクセルペダルのみで可能となり、スポーティなハンドリングに気分もアップ。背中をドンと蹴飛ばされるような、怒涛の加速フィールも味わえます。
このモード切り替えスイッチが、インパネ右下のわかりにくい場所にあるというのは開発者も認めているところですが、ユーザーの多くは一度お気に入りを見つけると、あまり頻繁に変えることがないと想定し、サクラではスイッチをオフにしても、次回オンにしたときに前回のモードを引き継ぐ設定としてあるといいます。
※ ※ ※
こうして一般道で試乗してみて、サクラは大きさが軽規格というだけで、乗ってみればEV三兄弟として十分な実力の持ち主であると、あらためて実感。
やはりそこには、“軽のEVを作るのではなく、日本の新しい定番を作る”という日産の気概がしっかり注がれているからだと感じます。
EVのなかでは価格が安いからといって、日産がこれまでリーフやアリアのユーザーに提供してきたサービスが何ひとつ削られていないのも、その表れではないでしょうか。
軽やコンパクトからの乗り換え、2台目、3台目の増車としてサクラが魅力的なのはもちろん、これまでEVに興味があったけれども、価格・航続距離・充電・走りの質感といったさまざまな理由で手が出せなかったユーザー予備軍を「これなら」と納得させたのが、サクラのいちばんの功績でしょう。
すでに受注は絶好調のようですが、まだまだサクラ前線は日本中に広がっていきそうな予感です。
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日産として久々に明るい話題だから、そっとして置いて欲しい。