クルマ、とくにスポーツカーは一般道路の試乗だけで本質の魅力を語ることは難しい。今回スパ西浦モーターパークへ持ち込んだ6台を、腕利きな2人のドライバーがハンドルを握った。スポーツカーの魅力とは彼らにとって、いったいどんなものなのだろうか。ここでは実際に試乗をした印象を対談してもらいながら、スポーツカーに乗る理由を再考した。(Motor Magazine2023年10月号より)
スポーツカーはそれぞれのクルマに運転するファンがある
── 今回は2日間にわたって、4気筒モデルと6気筒モデル合わせて6台を、一般道路、高速道路、スパ西浦モーターパーク(以下西浦)のサーキットでおふたりに乗っていただきました。ここではその6台について語ってください。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
まずはこもださんから6気筒に乗った全体的な印象をお願いします。
こもだ この西浦までは、東名・新東名高速道路や一般道路で乗り換えながら走りました。さらにワインディングロード、最後はこのサーキットを走りましたが、それぞれの舞台を分けて考えてみると、クルマがまったく違う顔(個性)を見せてくれるというのがとても面白いと感じました。
たとえばワインディングロードでは、ロータスエミーラ(以下エミーラ)、その後ポルシェ718ケイマンGTS 4.0(以下ケイマン)、BMW M4(以下M4)の順に乗りましたが、ケイマンはワインディングロードで走っていると、ちょっと足が硬すぎるなと思っていましたが、サーキットではまったくそういう感じがしません。
むしろしっとり感すらありました。一般道路で走っている時は当然タイヤのグリップも限界を超えない中で走っていますが、サーキットで限界をちょっと超えたところまで試してみると、そこでクルマの挙動と扱い方が全然違ってくるのがとても興味深かったです。
── 久実さんはどうでしょう。6台を乗った印象はどうでしたか。
佐藤 6気筒車と4気筒車を全体的な視点で見ると、エミーラとアルピーヌ A110 S(以下A110 S)は一般道路やワインディングロードで走るとソリッドで、路面と近いところにいるような感じがしました。
一般道路とサーキットで印象が変わるクルマは?
佐藤 両モデルともミッドシップで似た印象を持っていましたが、サーキットを走ると、エミーラはまったく印象が変わりました。サーキットでは、足がそれほど硬くないというか、その先に懐の深さがあるような感じがしました。
逆にA110 Sは、どちらで走っていてもとても楽しいという印象でした。一般道路とサーキットで印象がものすごく変わるクルマと、変わらないけど両方楽しいクルマがあるのが興味深かったです。
── 般道路とサーキットで印象が変わるクルマは他にありましたか。
佐藤 メルセデスAMG C43(以下C43))は、サーキットよりはワインディングロードの方が気持ちいいと思いました。つまり限界まで踏み切らない方が良くて、ワインディングロードで走るとちょうど気持ちいいセッティングにしているんだろうなということが、サーキットの限界領域で走ってみたことでわかりました。
また、M4はサーキットで走ると、直線番長のような印象でした。6台のどのクルマよりも速かったけれど、西浦のようなミニサーキットだと少し下のクラスのM2くらいがいいかもしれませんね。
── サーキットとの相性もあるかもしれません。富士スピードウェイみたいな長く広いところだと、M4はもっと楽しめるかもしれないですね。
こもだ M4はニュルブルクリンクでセッティングしているので、そこを走るのが一番楽しいですね。M2は逆に、日本のミニサーキット向きですよね。
── 次はM2で西浦を走ってみたいですね。久実さん、今回の西浦の試乗で1番楽しかったクルマは何ですか。
佐藤 ぶっちぎりで、A110 Sです。
── その理由を教えてください。
佐藤 すごく楽しいけど、ちゃんと運転する難しさがあるからです。乗りやすいけれど、運転がイージーというわけではないので飽きません。
簡単に乗りこなせてしまうと、運転してもつまらないと思いますが、その点A110 Sには難しさはありますがトリッキーさはなくて、タイヤがズルっと滑りそうなところで、ちゃんと受け止めてくれるという楽しさがありました。
1120kgしかない車両重量の軽さから来ている気がします
── ケイマンも似た印象で、クルマの懐がとても深いと感じましたね。こもだそうした意味ではエミーラは安定していましたね。3.5L V6エンジンでハイパワーなのに、結構踏んでもリアが出てこなかったです。
佐藤 エミーラは、サーキットでのハンドリングはとても良く好印象だったのですが、シートが私の身体には合わなかったため、ホールド性がもっと良いとエミーラのパフォーマンスをさらに引き出すことができたと思います。
── トヨタ由来のエンジンを積んでいても、ちゃんとロータス味になっていて、チューニングの上手さを感じました。こもださんはA110 Sにどのような印象を持ちましたか。
こもだ A110 Sはやはり一般道路、高速道路でも良かったし、そしてサーキットでも良かったです。なかなか良くできたクルマだなと思いました。(2017年の)登場から結構経つけれど、基本構造が良いのだと思います。
ほとんどリアアクスルの上にエンジンが乗っていて、そのバランスがすごい良いですね。でもやっぱりA110 Sの面白さは、1120kgしかない車両重量の軽さから来ている気がします。
── A110は、モーターマガジン(9月号)の企画「モーストファン」という、本誌の筆者たちが選ぶもっとも楽しいクルマの順位でも前回に引き続き2回連続1位でした。連覇です。
佐藤 だって、めちゃくちゃ良いから当然ですよね。
── 他の4気筒車はどうでしたか。
佐藤 C43とフォルクスワーゲン ゴルフR(以下ゴルフR)はちゃんと居住性があって、快適性が高くて日常使いができて、それでサーキットに持ち込んでこんなに走れるところが凄いと思いました。
── ゴルフRについて詳しく聞かせてください。サーキットとワインディングロードと一般道路、それぞれ走ってどのような印象でしたか。まずはこもださんお願いします。
こもだ ゴルフRは、一般道路やワインディングロードを走ると、本当に100点満点でした。何の文句もなく普通に走って快適ですが、少しインパクトが薄く感じました。
しかし、サーキットを走ると、結構オーバースピードで突っ込んじゃいそうになった時でも、ブレーキを戻すとクルマの姿勢を乱しながらも中に入ってくれたりと、リカバリーができるので操縦安定性の高さを感じました。ちゃんと限界領域まで見据えた開発をしていることがよくわかりました。
ー そう考えると、ゴルフRの677万2000円という価格は格安ではないですか。320ps、420Nmと高性能で、あの速さを見せるという意味でこれ以上のバリューフォーマネーなクルマはありませんね。久実さんはいかがですか。
佐藤 私も同感でとても安いと思います。サーキットでゴルフRを走らせるとハンドリングがいいんです。しかも、ものすごく平和です。一般道路でもサーキットでも、安心安全快適という印象でした。
けれど、そこにはちゃんと運転するファンもあります。すごく安定していて、A110 Sのようなミッドシップ車の操る楽しさとはまた違って、普通に走らせてもちゃんとコーナーも曲がってくれるので、運転していてとても楽しいクルマです。
どこで乗っても楽しいクルマと舞台によって個性輝くクルマ
── サーキットでの走行で、とくにどういう点が印象的でしたか。
こもだ スポーツモードやトラックモードのように走行モードを切り替えていくと、サーキットだとその良し悪しがすごくわかりますね。
一般道路だとただ単に足が硬くなったなとか、柔らかくなったなとか、ハンドルが重くなったなぐらいでしか違いがわからないけど、サーキットだと味付けがまったく変わるから、やっぱりこういうところで使えるようにちゃんと作っているんだなと、よくわかりました。とくにM4は変化が大きかった印象です。
── 久実さんはどうですか。
佐藤 もちろん個々に違いはあるけれど、全体としてESPとかの電子制御の入り方が、どのクルマもとても良くなったと感じました。
これだけパワーのあるクルマたちでも、タイトコーナーでリアを抑えながらもトラクションがかかっていくような制御が見事で、制御が入っているのか入っていないのかがわからない、という仕上がりに驚きました。
これは6台のどのクルマでも感じました。ひと昔前のハイパワー車だったら、各コーナーで制御によって抑え込まれながら走るような感じでしたが、それがなくて、すごく賢くなっているんだなと思いました。
── それではまとめに入ります。各々のシチュエーションでベストな車を1台選んでいただきます。まず始めに、久実さんお願いします。
佐藤 ワインディングロードとサーキットはA110 Sです。A110 Sは守備範囲の広さという意味で、改めて見直しました。サーキットとワインディングロードで印象が変わるのは悪いことではありませんが、A110 Sはどちらも変わらず楽しめました。
ワインディングロードでは軽い感じでひらひらと走ってくれます。ワインディングロードや一般道路は、サーキットと違って限界まで攻めないですよね。そういう時に、A110 Sのハンドルにあるスポーツボタンを押すと、パンパンパンと鳴るバブリング音の演出が他のクルマよりもハッキリ感じられて楽しかったです。
ノーマルモードとスポーツモードの変化が一番わかりやすく感じられました。ワインディングロードでは、運転が上手くなった気分にさせてくれます。ところがサーキットでは難しさがあって、「お前まだまだだぞ」ってA110 Sに言われている気がしました。そういう守備範囲の広さがA110 Sの魅力ですね。
一般道路はC43が良かったです。高速道路はACCのおかげで快適、乗り心地も快適。安心安全、疲れ知らずに移動できるというのは強みだと感じました。
── こもださんはいかがですか。
こもだ 一般道はゴルフRが一番安楽で良かったです。ワインディングロードはエミーラで、最高に楽しかった。けれど、サーキットに来たらケイマンが一番良くなりました。久しぶりの西浦は、とても楽しかったです。
やっぱりスポーツカーはエンジンを回して走りたい
佐藤 ケイマンの走りは本当に素晴らしいけど、全体的に古さを感じました。
こもだ 確かにね。でも、ケイマンは今後BEVになりますよね。
── そうですね、次は電気自動車になる予定です。
こもだ 電気自動車は加速力が強いから、クルマによってはアクセルペダルを踏んだ途端に、後ろから大型車に追突されたかと思うような時があります。
佐藤 そうそう、その表現すごく良いですね。初めてBEVに乗った時はエンジン音がしないのにスピードを感じるという違和感がありました。
── BEVの世界は凄いですね。エンジンは可愛いと感じてしまいます。
佐藤 確かにそうですね。BEVはトルクの強さや滑らかな走行フィールとか良いところがいっぱいあります。それでも、やはり今回こうして楽しいエンジン車に乗ってみると、みんなそれぞれに「味」があっていいじゃないですか。
だから今後どうしようかなって思ってしまいます。理性ではわかっていても、身体はどうしてもエンジン車を欲してしまいます。
── ケイマン、A110、エミーラというかロータスも次はBEVです。
佐藤 え~、エンジン車なくして欲しくない!
── 本格的な電動化の時代なので、次の西浦テストは全部BEVで走ってもらうかもしれませんね。
こもだ けど充電は大丈夫なのかな。
── 西浦には、普通充電器がいくつも用意されていますので大丈夫でしょう。次は何で走りましょうか?
こもだ でも、そのうちeフューエルができて、電気なんか使わなくてもよくなるかもしれないですね。
佐藤 私もそうなってほしいです。
(聞き手&まとめ:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:永元秀和、井上雅行、根本貴正)
[ アルバム : 【こもだきよし×佐藤久実】 最新6気筒&4気筒モデル はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
A110が褒められてるけど昔はトヨタだってMR2を2世代作ってた
でも初代はとりあえず FFコンポーネントでMR作ってみました的なファッションカーだし2代目はエンジンパワー上げたせいでトリッキーなじゃじゃ馬
とてもハンドリングがどうとかいうレベルでは無かったし
当時の車の性能もそうだしテスターのレベル差もあるんだろうとは思う
もう一台GTが欲しいけど70代年金生活者には無理です。
足車にBEVを物色中です。