国内自動車メーカーが自身の博物館を運営
第二次大戦に敗れた我が国の、戦後復興をけん引してきた自動車産業は、やがて世界に冠たる自動車王国を成し、トップメーカーのトヨタが販売台数でもトップを争うまでになり、業界全体も成長してきました。それに合わせるように、自動車文化を喧伝する風潮が高まっていき、現在では、国内の乗用車メーカー全社が、自身の自動車博物館を運営するまでになりました。そこで今回から4回に分け、国内にある、国産メーカーが運営している自動車博物館を紹介していきます。第1回目の今回は、トヨタ(グループ)が運営する博物館です。
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収蔵車両の質量ともに世界レベルのトヨタ博物館
トヨタ博物館は、運営するトヨタ自動車が創立50周年記念事業の一環として建設、1989年(平成元年)に開館した自動車博物館。欧文表記ではToyota Automobile Museumとしており、和文表記ではトヨタ自動車博物館となるところですが、トヨタではあえて自動車の3文字を抜き、トヨタ博物館となった経緯があるそうです。正確なところは分かりませんが、自動車だけでなく自動車文化を伝えたかった、という意気込みを感じます。
そして実際、他の国内メーカーが運営する自動車博物館は、その収蔵車両の多くが過去の自社製品(試作モデルも含めて)となっていますが、トヨタ博物館では自社のこれまでの製品だけでなく、自動車史上に残るエポックメイキングな1台1台を、ダイムラーやフォードといった海外メーカーだけでなく、国内他メーカーのものクルマまで展示しています。
さらに開館10周年を記念して併設された新館(現・文化館)にはクルマ文化資料室が整備され『移動は文化』をテーマに、ミニチュアカーやポスター、自動車玩具などを含めて20万点を超えるクルマの文化資料を展示し、クルマ文化を広く世に知らしめています。トップメーカーの矜持を見せている、と言ったら穿ちすぎでしょうか。ともかく、国内外の自動車博物館を数多く巡ってきましたが、トヨタ博物館は収蔵車両の質量ともに世界レベル。我が国が誇れる自動車博物館の一つであるのは間違いありません。
お薦めの展示車両は数多いのですが、個人的に“刺さった”のは1904年式の山羽式蒸気自動車。国内で初めて走った自動車ということで、スケールモデルですが、まだここでしか見たことのないクルマでした。 しかし何よりも、ともに1959年式のキャデラック・エルドラドのビアリッツ・コンバーティブルとダイハツのミゼットが同じフロアに展示されていることが印象に残っています。かたや自由と富の象徴ともいえるフルサイズの2ドアコンバーティブル、此方ミニマムトランスポーターの3輪軽トラック。戦勝国と敗戦国の違いだけでなく、おそらくは国民性の違いも感じられ、印象に残っているのだろうと思います。 キャデラックのデザインは、決して嫌いではありませんが、もしどちらか1台を選ぶ、となると迷わずミゼットを選んでしまうのですが……。
【トヨタ博物館/Toyota Automobile Museum】◆入館料:1200円◆開館時間:09:30~17:00◆休館日:月曜日・年末年始◆愛知県長久手市横道41-100◆tel:0561-63-5151https://toyota-automobile-museum.jp/
トヨタが整備した博物館のネットワーク
クルマと、その文化に関する収蔵展示では世界的にみても屈指のレベルにあるトヨタ博物館ですが、さらにトヨタは関連施設として様々な博物館を運営し、クルマ文化を知らしめる博物館のネットワークを築いています。続いてはそちらの3施設を紹介していきましょう。まずは名古屋市内にあるトヨタ産業技術記念館から。
トヨタ産業技術博物館は1994年、豊田自動織機製作所栄生工場を産業遺産として保存、後世に伝えることを目的に設立されたトヨタグループが運営する企業博物館で、当時のレンガ造りだった工場建屋を流用して整備されています。館内は自動車館と繊維機械館に分けられていて、自動車館では『自動車事業創業期』『時代を見据えた車両開発』など5つのゾーンで展示を構成。トヨタの自動車づくりを様々な角度から紹介しています。
また繊維機械館では、“紡ぐ”と“織る”の初期の道具から機械、さらには現代のメカトロ装置の繊維機械までを展示し、繊維産業の発展を感じられる展示となっています。 トヨダAA型乗用車(復元モデル)や初代クラウン、初代カローラといった懐かしいクルマだけでなくエントランスホールに動態展示された環状織機にも注目。豊田佐吉が1906年に発明し、“夢の織機”とまで評された環状織機の、ダイナミズムは圧倒的です。
またトヨタ会館やトヨタ鞍ヶ池記念館といった企業博物館も整備されています。
こちらのクルマ関連の展示内容はトヨタ車やレクサス車に限られていますが、最新モデルやモータースポーツ参加車両の展示もあり、クルマ好きはモチロン、お子様と一緒の家族連れでも充分に楽しめる内容となっています。入館無料となっているのもうれしいですね。
この3つの企業博物館以外にもトヨタの創業期に稼働していた、刈谷市の試作工場跡や、豊田佐吉翁が生まれた静岡県湖西市には豊田佐吉記念館が開設されています。いずれもクルマの展示はされてませんが、先人の情熱や志を偲んでみるのも、クルマファンならではの旅の楽しみ方かもしれません。刈谷市の試作工場跡も豊田佐吉記念館もともに入館無料です。
【トヨタ産業技術記念館/Toyota Commemorative Museum of Industry and Technology】◆入館料:500円◆開館時間:09:30~17:00◆休館日:月曜日・年末年始◆愛知県名古屋市西区則武新町4-1-35◆tel:052-551-6111◆http://www.tcmit.org/
【トヨタ会館】◆入館無料(団体は要予約)◆開館時間:09:30~17:00◆休館日:月曜日・年末年始・ゴールデンウィーク・夏期連休等◆愛知県豊田市トヨタ町1◆tel:0565-29-3345◆https://www.toyota.co.jp/jp/about_toyota/facility/toyota_kaikan/index.html
【トヨタ鞍ヶ池記念館】◆入館無料(団体は要予約)◆開館時間:09:30~17:00◆休館日:月曜日・年末年始◆愛知県豊田市池田町南250番地◆tel:0565-88-8811◆http://www.toyota.co.jp/jp/about_toyota/facility/kuragaike/
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