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【ヒットの法則89】5代目メルセデス・ベンツSクラス(W221型)の驚くべき先進性

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【ヒットの法則89】5代目メルセデス・ベンツSクラス(W221型)の驚くべき先進性

2005年のビッグニュースのひとつに5代目メルセデス・ベンツSクラス(W221型)のデビューがあげられる。少しずつその全貌が明らかになっていく中、Motor Magazine誌では、フランクフルトモーターショーでの正式発表直前情報を追っている。ラグジュアリーカーセグメントだけではなく、世界の自動車界に大きな影響を与える新型Sクラスはどんなクルマだったのか、振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年10月号より)

新しいV8エンジンは4バルブDOHC
「新しい皮袋には新しいワインを入れよ」ということわざが欧州にはある。ニューSクラスに搭載されるエンジンも、このことわざに従って新たに開発されたもの、あるいは従来のユニットを改良したものが採用されることになっている。

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これらニューエンジンの主眼はもちろんのことながら、まずはモアパワー、モアトルク、そしてレスコンサンプション(燃費)で、メルセデスの発表によればニューエンジンレンジは平均で26%のモアパワー、15%のモアトルク、そして9%の燃費低減に成功しているといわれる。

それではまずエントリーモデルとも言えるS350から見てみよう。このグレードに搭載されるのは、旧S350の3バルブ 3.7L V6ではなく、2004年半ばにすでにC350あるいはE350として投入されている3.5L4バルブV6エンジンである。

ボア×ストローク92.9×86.0mm、総排気量3498ccのショートストロークタイプで、10.7の高圧縮比を有しており、その最高出力は272ps/6000rpm。最大トルクは350Nmで、2400rpmから5000rpmと広い範囲内で発生する。組み合わされるトランスミッションは、標準で7Gトロニック(7速AT)で、期待される性能は0→100km/hが7.3秒、最高速度はリミッターの働く250km/hに達する。これは現行S350の7.6秒、246km/hと比べ確実に速くなっていることがわかる。

しかも、それにもかかわらず燃費は新しくなったNEDC(ニューヨーロピアンドライビングサイクル)モードで、100kmあたり1L近く消費燃料が少なくなっている。

続いてS500に用意されるV8エンジンだが、これまでの5L、シングルカム3バルブに代わる、ボア×ストローク98.0×90.5mm、総排気量5461ccのまったく新しい4バルブDOHCパワープラントだ。

このニューV8は、ボア×ストロークが前述のV6と異なるもののシリンダーピッチが106mmとS350に搭載されているV6エンジンと同一であることからモジュール製造をしていることがわかる。最高出力は388ps/6000rpm、そして最大トルク530Nmは、2800rpmから4800rpmの間で発生する。これは旧3バルブ5Lユニット(306ps、460Nm)と比べると、もちろん大幅なパワーアップである。

その結果、新しいS500は0→100km/hまでの加速が5.4秒と、旧モデルに比べておよそ1秒も短縮されている。さらにトルクの増加で追い越し加速にも優れており、3速で60km/hから120km/hまでをわずか5.6秒で加速する。また最高速度は250km/hで制限される。

また燃費に関しては旧5L V8に対して100kmあたり0.2増加し、11.9L/100kmとなったが、同排気量のV8と比べ燃費レベルは優れている。

このV8エンジンは、V6と違ってシリンダー挟角は90度で基本的にダイナミックバランスに優れるために、バランスシャフトは必要ない。もちろんオールアルミニウム製でアルミ/シリコン製のローフリクションシリンダーライナーを持っている。

また動体パーツの軽量化も見直した結果、非常にスムーズでピックアップに優れている。さらにドライバビリティ向上のための広域高トルクを得るために新たに開発された可変カムシャフトシステムも装備している。4本のカムシャフトは前部にレイアウトされたヴェーンタイプのアジャスターによってコントロールされ、インテークおよびエキゾーストバルブのタイミングをドライビングシチュエーションに最適化し、フラットで十分なトルクと強力なパワーの両立を目指している。

このカムシャフトアジャスターに加えて、新たに採用されたのが2ステージ型インテークモジュールで、エンジン負荷と回転数によって空気の流入量をコントロールする。3500rpm以上の時にはフラップが開き、エアはダイレクトに燃焼室に流入する。そして回転数の低い状態ではフラップは閉じ、エアはインテークダクトを遠回りするのでプレッシャーウエイブが起き、低回転時のトルクを増大させる。実測では1500rpmで、すでに最大トルクの81%にあたる435Nmを発生するといわれる。

こうしたハイテク装備によって、新しいV8エンジンは、これまでにない快適性とパフォーマンス、そして低燃費と低エミッションと相反する要素の両立に成功しているといわれる。

人間工学に基づいたパッケージングを実現
さて、こうしたニューエンジンの採用などは比較的予想できた古典的なニューモデルへのアプローチである。しかし、今度のSクラスは正式発表が近づくにつれて徐々に興味ある新機軸を明らかにしている。もっとも最近公表されたものが「フィジオロジカルセーフティ(生理学的安全性)」である。

メルセデス・ベンツではパッセンジャープロテクションなどのパッシブセーフティ、あるいは安全な操縦性などのアクティブセーフティと並んで、事故に備えての対策としてPRESAFE(プレセーフ)というシステムまで開発し、すでに実用化している。

さらに彼らはおよそ15年も前から生理学を応用した「ドライブフィットネスセーフティ」、すなわちドライバーのコンディションを生理学的に良好に保つことによって、事故を未然に防ぐための研究開発を行っており、今回その成果がニューSクラスに様々な形で現れた。

まず最初が「インテリジェンスなボディサイズ」で、33mm長くなった全長、70mm延長されたホイールベース、16mm広がった幅、そして29mm高くなったルーフで、特に前席のショルダールーム(+39mm)とヘッドルーム(+5mm)に余裕を与え人間工学に最適な空間を生み出している。

また「人間工学的なインテリア」では、大型のコマンドスクリーンとセンターコントロールダイアルによる集中的な操作を可能にしている。また、「ファーストクラス シーティングコンフォート」として、疲労の低減とドライバーを支えるための形状はもちろん、ヒーティング、ベンチレーション機能、そして進歩的なマッサージ機構が用意されている。

運転の負荷低減に役立つ数々のハイテク装備
これらに加えてこれまでにも紹介した以下のハイテクアシスタンスが、ストレス解消に役立っている。

○ディストロニック・プラス
ミリ波レーダーを使用したクルーズ・コントロール・システム。スピードレンジは0~200km/hまで有効。つまりストップ&ゴーから高速クルージングまでドライバーを補佐することができる。

○ブレーキアシストプラス
追突が起こりうる場合にレーダーシステムによって、たとえドライバーの踏力が不十分でもブレーキを効果的にアシストする。

○ナイトビューアシスト
いわゆる赤外線暗視装置、前方に組み込まれた赤外線カメラによって夜間の障害物や人間を感知し、ヘッドアップ・ディスプレイによってドライバーに示す。

○パークアシスト
フロントに4基、リアに2基のショートレンジセンサーによって、11m以内での障害物を検知する。もちろん狭い場所での駐車を容易にする。

○セルモトロニック
自動エアコンディショニングシステムで、一度セットすれば個々のシートにおける環境を適正化する。直射日光や外気の汚染状況も考慮して調整する。また足先から頭まで5段階に分けてセンシングしている。

○アクティブライトシステム
ドライバーのステアした方向にバイキセノンヘッドライトが照射する。

○コーナリングライト
40km/h以下でドライバーがターンシグナルを出すと、ヘッドライトの照射レンジが自動的に広がり、暗闇の死角を減らす

これらのシステムの採用によって、ドライバーは精神物理的に良好なコンディションを保つことができる。それによってドライバーはリラックスして、ストレスのない運転が可能にな理、ミスが減るというわけだ。

こうしたストレスや生理的な状況は、20人のドライバーが様々な条件を持つ500kmの行程をドライブし、心臓の鼓動で測定する。この方法でのメルセデス・ベンツの調査と実験分析では、ニューSクラスのドライバーの脈拍数はアウトバーンでの高速走行で79.6回、コンスタント走行で78.4回、そして一般道と市街地走行ではそれぞれ78.3回と78.5回であった。

これをあるコンペティターに当てはめると、それぞれ84.6回、82.9回、そして81回、83.1回と、平均値にすると1分間に5回も脈拍が多くなっている。メルセデス・ベンツは15年前からこの調査を行っており、1979年のSクラス(W126)とニューSクラスを同じ状況で比べると平均で6.8回も脈拍が低くなったと報告されている。

それ以上にフロントに燦然と輝くスリーポインテッドスターの「ご利益(正確には他への威圧!)」という「副作用」を考慮するかしないかは別にしても、メルセデス・ベンツにはリラックスして運転できるというアドバンテージがあることは確かで、それが今度のSクラスでより鮮明になったわけだ。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年10月号より)

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