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【なぜターボなし?】新型トヨタGR86/スバルBRZ開発思想 スープラ/WRXどう関係?

掲載 更新 97
【なぜターボなし?】新型トヨタGR86/スバルBRZ開発思想 スープラ/WRXどう関係?

期待どおりのパワーアップ しかし……

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)

【画像】明確なキャラ分け【新型GR86とスープラを比較】 全164枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

「86を発売したあと、あちこちで『86のターボは出ないのか? 』と尋ねられましてね。日本でも海外でも本当にみんなに質問されるんですよ。もう数百回どころじゃないほどきかれたんじゃないかな」

初代86のチーフエンジニアを勤め、その後90スープラの開発もまとめたトヨタの多田哲哉氏がスープラのデビュー時のインタビューでそう語っていたのをよく覚えている。

専用プラットフォームを持つ86やBRZは操縦性に高い評価を得ている一方で、パワー不足という声も少なくない。だから新型ではパワーアップが望まれていたのだ。

初のフルモデルチェンジを経て新型となった86とBRZの最高出力は235ps、最大トルクは25.5kg-m。それは先代の最終モデル(MT)に対して28ps/3.9kg-mのアップだから、多くのユーザーの希望どおりに出力向上はしっかりはかられている。

気になるのは、パワーアップを実現する手法として排気量アップを選んだことである。ターボではないのだ。

ドリフトにはターボの方が好都合

新型も水平対向の4気筒直噴エンジンを受け継ぎつつ、エンジンのボアを86.0mmから94.0mmへ拡大。86.0mmのストロークは変えることなく排気量を1998ccから2387ccへ増やしている。自然吸気ならではのリニアかつ高回転で盛り上がるフィーリングと高出力化を両立したというわけだ。

しかし、多田氏のコメントからもわかるように、多くのユーザーがターボを求めていることはスバルやトヨタも気がついているだろう。

そこには86の世界観の1つになっているドリフトとも大きな関連がある。

ドリフトでも、ブレーキングや慣性でテールを流すような超限界域のドリフトならターボでも自然吸気も関係ない。

しかし、ドリフトを楽しむ多くの人がきっかけとする、パワーをかけてテールスライドからドリフトに持ち込む方法だと、排気量2.4L程度の自然吸気エンジンよりも低回転域からしっかりトルクを出すターボのほうがマッチングはいい。そのほうがパワーをきっかけに使うだけでなく、ドリフトの維持だってしやすい。

排気量アップによるパワーアップよりも、ターボによるトルクアップのほうが気軽にドリフトして遊ぶには都合がいいのだ。

さらに、チューニングとの相性もある。自然吸気エンジンの気軽なパワーアップは難しいが、ターボであればブースト圧の設定を変えるだけで手軽にパワーアップが可能。そういった面からも、ターボを望む声が少なくなかった。

しかしながらターボは姿を現さず、86やBRZは新型になっても自然吸気を選んだのである。

果たしてその理由はどこにあるのだろうか。

基本設計がターボを想定していない

1つはメカニズム的な都合だ。

新型もプラットフォームの基本は先代から継承しているが、このプラットフォームはターボの装着を考えていない設計である。

スバルの他モデルに比べてエンジン搭載位置が後方かつ下げた設計で、それは前後重量バランスや重心高としては理想に近づいているのだが、弊害としてタービンの装着スペースがない。

だから物理的にターボ化できないのだ。

「このプラットフォームでターボを装着すると、エンジン搭載位置を上げないといけない。重心も上がるし、ボンネットも高くなってしまう」と開発者はいう。

社外品としてはターボキットが用意されているのだからそれは違うのでは? と考える人もいるかもしれないが、後付けキットとしてアフターマーケットで追加するのと市販車にはじめから搭載するのでは話が違う。

社外品は無理やりスペースを探すこともできるが、市販車では生産性や整備性、そして耐久性などが欠かせない設計要件となるのではそう簡単にはいかないのだ。熱対策も考えないといけない。

さらに、プラットフォーム自体の許容トルクの問題もある。

新型になってプラットフォームはフロント曲げ剛性で約60%、ねじり剛性で約50%という大幅な剛性アップを実現してはいる。

しかし、自然吸気エンジンの搭載を前提としてギリギリまで軽量設計としたプラットフォームは、ターボエンジンの大トルクを許容する強度や耐久性を持ちあわせていない。

ターボを許容するシャシーにしようと思うと、重量増に直結するのだ。

もちろんチューニングカーではターボによる大パワー化も可能だが、それはあくまで車体の耐久性を無視して成り立っている。一時的には持ちこたえるが、ターボの大トルクを長時間にわたって吸収することは車体にとって強い負担に他ならない。

負担をかけ続けることによってストレスとなり、劣化が早まり剛性ダウンを起こしやすいのだ。それはボディを消耗品として片づけられるチューニングカーなら許されても、メーカーが作る生産車としては不適格。

長期的な耐久性の基準を満たせないからだ。そんな基本設計もターボ化を難しくしている。

スープラ/WRXの領域もある

さらに、メカニズム的な理由に加えて商品展開上も86やBRZをターボ化しにくい事情がある。

冒頭の「86にターボを求める声が多い」という多田氏の話には続きがあって、それは「スープラの4気筒モデルはターボつきの86を求める声に応えるつもりで作った。だから86にターボを求める人はぜひこれに乗って欲しい。価格も、86からのステップアップで何とか手が届く範囲にしたつもりだ」というもの。

逆にいえば、もし86にターボ搭載車を用意したら(ターボ装着で価格も上がることもあり)スープラの4気筒モデルとカニバリゼーションが発生してしまう。食いあってしまうのだ。

それを防ぐためには、同じ4気筒の後輪駆動スポーツカーでも86は自然吸気、ターボはスープラと分けておくのがもっともシンプルである。

「でもスープラにはMTがない」という声もあるだろうが、筆者は将来的にスープラの4気筒にはMTが追加されると睨んでいる(基本設計をスープラと共用するBMW Z4にはMTがあるのだからメカニズム的な障害はない)。

それはトヨタ内の話であって、スバルのBRZにはまったく関係の無い話と思うかもしれない。

しかし、スバルにはスバルの事情がある。

スバルにおけるスポーツモデルのポジション関係を見たとき、速さのリーダーとなるのは「WRX」で、BRZはピュアスポーツの走りの喜びを象徴するモデルと位置づけられている。

そういった意味でもWRXはターボでBRZは自然吸気というのは明確にわかりやすいキャラ分けである。

だから両車の差別化として、BRZにターボをつけて大きなパワーを与えるのは商品戦略においては最適とはいえないのだ。

86/BRZの「正しい姿」追求

「バランスなんですよ。パッケージングも重量も。すべてのバランスを考えたうえでちょうどいいのが2.4Lの自然吸気エンジン。今どき珍しいショートストロークだからよく回ります。最高出力を7000rpmで発生するエンジンを楽しんでほしい」と開発者はいう。

実は新型の開発において、その初期にはターボも選択肢の1つだったという。しかしターボ化にはいくつものハードルが存在。

前述のようにターボ化するにはパッケージングの大幅変更やシャシーの更なる補強も必要だし、価格も高くなる。

「しかし、それは86やBRZの姿として正しいものなのか? 」というのが開発の根底にあるのだ。

結果として新型は、低い重心やボンネットと軽い車体をキープし、価格上昇を避けるためにターボではなく自然吸気による出力向上を選んだというわけである。

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みんなのコメント

97件
  • だって公道でドリフトなんかしないでしょ?
    だからそんな要望に答える必要性がそもそもないのよ。
  • この車にターボ求める人なんて、あまり車の事知らない人だと思う。
    1600〜2000ccで軽くて安いFRこそが86、BRZに求められてる。
    今回のも中途半端なので、子育てが終わった世代のオーナーさんが多くなりそうだね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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