実働状態で残ってる個体に巡り合えたのが奇跡!
素のデボネアVを楽しめるなんて贅沢すぎる!!
「現行クラウンに不変のVIPスポーツ魂を注入」エイムゲイン渾身の大人に似合うエアロ誕生
1986年8月、22年間に及ぶ生産の末、時代遅れも甚だしくなった初代デボネアに代わって2代目デボネアVが登場した。初代から大きく変わったのは、駆動方式がFRからFFになったこととV6エンジンの搭載だ。
それにしても、デボネアVはなかなか厳しい立ち位置にあった。本来、トヨタならセンチュリー、ニッサンならプレジデントに匹敵するミツビシのフラッグシップセダンでありながら、販売面ではクラウンやセドリック/グロリアも相手にしなければならなかったからだ。
そのため、後期型では6G72型を載せる3.0Lモデルだけで10グレードも用意されていた。上級グレードは210psを発揮するDOHC版、下級グレードは155psのSOHC版を搭載。今回は絶対に3.0Lのベンコラ6人乗りを取材してやろうと意気込み、おそらくロイヤル系が見つかるだろうと踏んでたのに、実はその存在を知らず、カタログを見てあとから知った最低グレードのLGが現れたので思わずひっくり返りそうになった。
てか、これを新車で買った人も凄ければ、今まで実働状態で残ってたことも凄い! ともあれ、最上級ロイヤルエクストラでなく、凝った内装のアクアスキュータムでもなく、ましてやAMGでもなく、まさかのLGに巡り合ったのは運命に違いない。
そんなLGは10グレード中、唯一のベンコラ6人乗り(セパレートシート5人乗りは受注生産)仕様。フロントベンチシートは1:2分割でスライド&リクライニングが可能となっている。運転席にはシートリフター機能が付き、助手席側にはセンターアームレストを装備。純正ハーフシートカバーが泣かせるアイテムだ。
後席はヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。センターアームレストこそ装備されるけど、リクライニング機構などは付かない。
インパネ周りはオーソドックスなデザイン。ステアリングはチルト機構もテレスコピック機構も付かない固定式となる。コラムシフトだからかと思ったら、2Lの中間グレード、スーパーサルーンのベンコラ仕様にはチルト機能が備わるから、廉価グレードゆえの装備簡略化だ。
ベンコラと並ぶ室内での見どころがメーターパネル。昔の廉価グレード車にありがちだった伝統の手法を踏襲し、タコメーターの代わりに大型アナログ式時計が構える。当時のミツビシのフラッグシップセダンなのに簡潔なメーター周り。そのギャップに興奮しないわけがない。右端に水温計と燃料計、左端にエアコンインジケーターが確認できる。
上部に2段構えのエアコン吹き出し口を備え、その下にエアコン操作パネル、シガーライター&灰皿、1DIN分のオーディオスペースが配されたセンターコンソール。廉価グレードでもフルオートエアコン(上級グレードではデュアルフルオート)を装備するのが旗艦モデルらしい。また、運転席以外のドアには灰皿も用意される。
続いて外装。実車を前にして思ったのは外装デザインがやたらと直線的で、しかも無機質なこと。個性的と言えばたしかにそうだけど、フラッグシップセダンでこりゃナシだ。さらに、真横から見た時、フロントノーズ、キャビン、テールエンドのバランスがどことなくヘンなのも、好きモノにはたまらないポイントだ。
ホイールはデボネアVパーソナルシリーズのスーパーエクシード、アクアスキュータムに標準装備される14インチアルミに交換。タイヤは標準195/70R14サイズのDNAエコスES300が組み合わされる。純正マッドガードはボディ同色とされ、リヤ用には車名ロゴが入る。
不思議なレイアウトのマフラー。右側にあるメインサイレンサーからそのままエンドパイプを出せばいいのに、前方を大きく迂回させてわざわざ左側にリヤエンドを持ってきている。なにか理由があるんだろうか?
内外装をひと通りチェックしたら試乗へと向かう。運転席に座り、ドアを閉めたところでまずボディのしっかり感に気付く。ほぼ30年落ちで走行14万kmなのに、当時はちゃんと手間暇お金をかけて設計されてたようだ。ポジションを合わせるために各部を調整すると、以前取材したクラウンスーパーデラックスのベンコラとは違い、運転席だけが単独で前後スライドすることに安堵。クラウンは座面一体でしか動かなかったもんなぁ。
思いっきりフロントオーバーハングに載った6G72。LGのエンジンルームに収まるのはSOHC 2バルブでレギュラーガソリン仕様だけど、上級グレードにはDOHC 4バルブでハイオクガソリン仕様(210ps/27.5kgm)が搭載された。6G72はボア径φ91.0に対してストローク量76.0mmと、実はスバルEJ20(φ92.0×75.0mm)に匹敵するほどの超ショートストローク型だったりする。
コラムレバーをDレンジに入れて発進。6G72はショートストローク型にも関わらず2000rpm以下でもトルク感があって、上り坂でもアクセルを踏む右足にちょっと力を入れるだけでスーッと前に出る。官能性とはまるで無縁だけど、実用エンジンとして黙々と仕事に徹するあたりがLGの性格にマッチしてるではないか!
乗り心地はあたりが柔らかく、マイルドのひとこと。でもって、フロントヘビー感が強いハンドリングは予想通りだった。装着タイヤが195幅の70扁平ってことでフロントタイヤをよじらせながら曲がっていく。もちろん、まるで攻める気にはならなかった。
後期型では2Lモデルが受注生産になったため、実質的なボトムエンドを担ったLG。素のデボネアVを楽しめるなんて、こんなに贅沢なことはない。
■SPECIFICATIONS
車両型式:S12A
全長×全幅×全高:4865×1725×1440mm
ホイールベース:2735mm
トレッド(F/R):1455/1420mm
車両重量:1480kg
エンジン型式:6G72
エンジン形式:V6SOHC
ボア×ストローク:φ91.1×76.0mm
排気量:2972cc 圧縮比:8.9:1
最高出力:155ps/5000rpm
最大トルク:24.0kgm/4000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/トーションアクスル
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(F/R):195/70R14
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