この記事をまとめると
■「ウニモグ」はハンドルを左右に移動することで運転席自体を移動できる
【世界の名車】登坂性能45度! 線路まで走れるメルセデス・ベンツ「ウニモグ」とは
■運転席位置を入れ替えるというアイディアは作業効率を高めるための機能として導入された
■1946年に誕生したウニモグはいまなお最強の働くクルマとして進化を続けている
運転席が左右入れ替わるのには理論的な理由があった!
マンボミュージシャンのパラダイス山元さんが愛好していることでも知られる「ウニモグ」は、ご承知のとおりドイツのダイムラートラック社が製造販売している多目的作業用トラック。1000種類以上の豊富なアタッチメントのなかから必要な作業機を選択し、別の作業にはまた別の作業機を装着することで、高所作業や除雪から鉄道線路上でのけん引や架線点検、トンネル内清掃まで、何通りもの仕事を1台で行えるユニークなトラックであることは、多くの人がすでにご存じだろう。
そんなウニモグに「右ハンドルと左ハンドルとを自在に切り替えられる機能」があることはご存じだっただろうか?
多目的作業型のウニモグであるU219/U319/U423シリーズにオプション装備の「バリオパイロット」を装着すれば、ハンドル位置を任意に左右へスライドすることができる。つまり、「1台のウニモグが右ハンドル車にもなるし、左ハンドル車にもなる」ということだ。
なぜこのように不思議な(?)オプション装備が用意されているのかといえば、もちろん「やっぱりドイツ車は左ハンドルに限るから」とかそういう理由ではなく、あくまでも働くクルマとしての機能を突き詰めた結果である。
たとえば高速道路上で作業を行う場合、バリオパイロットで左ハンドルに切り替えれば、路肩側(車両左側)の広範囲な作業視界を確保することができ、よりアグレッシブで正確な作業が可能になる。そしてもちろん、ウニモグへの乗り降りも、より安全に行える。
そして、中央分離帯(車両右側)の作業を行う際や、車両を回送する際には右ハンドルへ切り替えることで、同様に広範囲な作業視界を確保でき、さらには回送運転も格段にラクになるという仕組みなのだ。
「多目的動力装置」としての実用性が年々向上している
ウニモグの正規輸入元であるワイ・エンジニアリングが公式サイト内で公開している動画を見てみたが、左から右、あるいは右から左へのハンドル位置の変更手順は、超カンタンというほどでもないが、けっこうラクではある模様。
ドイツ語の動画であるため、動画内でいわれていることは何ひとつわからなかったが、動画を見る限りでは「ダッシュパネルをパカッと外す→ペダル類を含むステアリングユニット全体を左または右にスライドさせ、レバーで固定する→再びダッシュパネルをパカッとはめる」というだけでOKのようだ。
そして動画を見る限り、確かにウニモグで行う作業というのは「車両を微速で動かしながら行うもの」が多いため、右サイドに付けたアタッチメントで作業をするなら「右ハンドル」のほうが圧倒的に便利であり、左サイドにアタッチメントを付けて作業する際には左ハンドルであったほうが、緻密な作業をドライバー1人で行うことができる。
ちなみにウニモグの最初の図面は1945年の秋、ダイムラー・ベンツ社の航空エンジン開発責任者だったアルベルト・フリードリッヒによって書かれたのだという。当初、周囲は彼が開発し始めた車両を「単なる農業用車両」と見なしていたが、フリードリッヒが目指していたのは「これまでのものとはまったく異なるクルマ」だった。
初期のスケッチには「Motorized Universal Working Machine for Agriculture (農業用の原動機付き多目的作業機械)」と記されていて、「UNIMOG」という名前はまだなかった。だが「比較的高速で走ることができて」「コイルスプリングを装備した柔軟なサスペンション構造をもっていて」「トラックや乗用車に引けを取らない堅固なシャシーとフレームを擁し」「さまざまな作業機を前部、中央部、後部へ架装できる」というフリードリッヒの基本コンセプトは、今日の最新版ウニモグの趣旨とも完全に一致している。
1946年にはUniversal Motor Gerät(多目的動力装置)というドイツ語の頭文字をとった「UNIMOG」という車名が与えられ、1948年には、工作機械メーカーのボーリンガー社で本格的な生産が始まったウニモグ。そして1950年からは、ダイムラー・ベンツ社がその生産に関するすべてを引き継いだ「多目的動力装置」は、いまもなお「最強の働くクルマ」としての進化を続けているようだ。
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