■センチュリーはなぜ究極のJDMと呼ばれるのか?
トヨタ「センチュリー」の開発が始まったのは1960年代前半。世界の豪華高級車と並ぶプレステージサルーンを目標にして開発されました。
【画像】極上のシャコタン「センチュリー」 ド派手カスタムのトヨタ車を見る!(21枚)
世界の高級車に匹敵する、といっても海外で販売される目的はなく、あくまでも日本のVIPを対象にした最上級セダンです。
日本独自の様式美に基づいて開発されており、皇室専用の「センチュリー・ロイヤル」という特別なモデルを含めて、内閣総理大臣専用車や官公庁や企業のトップが使う最高品質の車両として50年以上にわたって多くのVIPに愛されてきました。
実は「センチュリー」という車名にもそのこだわりが見えます。センチュリーの言葉の意味は「世紀」ではありますが、「21世紀まで続く高級車を目指した」といった意味ではなく、トヨタの創始者であり1867年生まれの豊田佐吉の生誕100周年(1967年)を記念して名付けられた車名なのです。
結果的に20世紀から21世紀まで世紀をまたぐ偉大なクルマになりましたが、車名の由来はドメスティックでした。
なお、センチュリーが海外市場で量販されたことはありませんが左ハンドルのセンチュリーは海外の日本大使館などに向けて少量台数作られたことはあります。
そのセンチュリーが近年、海外とくにアメリカでジワジワと人気が出始めています。
日本以外では販売されていないセンチュリーがなぜ、海外で人気となっているのでしょうか。
その理由は「25年ルール」と空前の日本車旧車ブームにありました。
25年ルールとは、「製造から25年経過したら右ハンドル車でもアメリカでの販売や登録が可能になる」という制度です。同様のルールでは、カナダで15年ルールが存在します。
日本車に限ったことではなく、全世界の車両が対象となり、右ハンドルであることはもちろん、アメリカNHTSA(National Highway Traffic Safety Administration米国運輸省道路交通安全局)が定めたFMVSSという「車両保安基準」の対象から外れるため、シートベルトやエアバッグがついていない車両も登録が可能になります。(排出ガス基準EPAは製造から21年で対象外となります)
なお、アメリカで合法的に輸入ができるのは1996年製までのセンチュリーとなるので、2021年現在は初代センチュリー(1967年-1997年)のみが合法となります。
日本の旧車に関する情報を発信している「japanesenostalgiccar.com」を運営するベン・シュー氏は以下のように話します。
「アメリカでは販売されたことがないトヨタ・センチュリーですが、トヨタ製高級車の頂点と称されるクルマとあって愛好家もいます。
私が初めてアメリカでセンチュリーを見たのは15年前のトヨタフェスト(トヨタ車のオーナーミーティング)で初代センチュリーが参加していました。
『ランドクルーザー』や『スープラ』、『カローラ』などに比べるとまだまだ少ないですが最近は少しずつ増えています。
日本製の高級車といえば日産『プレジデント』や三菱『デボネア』もありますが、日産や三菱のマニアは、『スカイラインGT-R』や『フェアレディZ』、『ランサーエボリューション』などのスポーティなクルマを好むようです。
アメリカでセンチュリーを維持するのは大変ですが、オーナーはとても機知に富んでいます。
15年前のトヨタフェストで見た初代センチュリーを所有していた友人は、フロントガラスにヒビが入ってしまいました。
代替品が見つからず苦労して探した結果、ランドローバーのフロントガラスが同じ形であることを発見しました。
少し幅が広いのでガラス屋さんにランドローバーのフロントガラスを切ってもらって取り付けました。
カットした部分にタテの線が入っていましたが何とか使用することができたそうです」
センチュリーとランドローバーの意外な共通点が見つかるのもアメリカならではなのかもしれません。
■実際のセンチュリーオーナーに聞いてみた! センチュリーの魅力と苦労
アメリカでは販売された歴史が一切ないために、部品の入手も大変なようですが、それでもセンチュリーに魅入られ、苦労しながらもセンチュリーのカスタムを楽しんでいるアメリカ人オーナーにその魅力を聞いてみました。
●Pete(ピート)さん(米国カリフォルニア州在住/1991年式センチュリー所有)
「センチュリーは6000ドル(約66万円)で2年前に購入しました。ボディのディテールやデザインは、当時としては素晴らしいものだと思います。手作りで丁寧に作られています。
また、背中をマッサージしてくれるシートやラジオのワイヤレスリモコンなど、インテリアのデザインや装備なども20年以上前のクルマでは考えらないほど先進的だと思います。
エンジンも素晴らしいですね。V8エンジンはスムーズに走ってくれます。そして、完全に話のタネになります。
カスタムエアサスペンションは完了し、これからワンオフのメタルリップを車両全体に、またフォグインサートとリアのデュアルエグゾーストも作るつもりです。
初代センチュリーの純正に近いホイールを探すのに2か月もかかりました。パーツ入手に関しては苦労も多いですがとてもユニークなクルマで気に入っています」
●Steve・Kopito(スティーブ・コピート)さん(米国カリフォルニア州在住/1991年式センチュリー所有)
「1990年代初頭に日本に住んでいたときにセンチュリーに魅了され、ずっと欲しいと思っていました。
それから30年後、友人が日本の中古車店で手頃な価格のセンチュリーを見つけてくれたので購入してもらい、カリフォルニアへの輸送を手配してくれました。ほかの部品と一緒にコンテナに入れてカリフォルニアに送ってくれたんです。
センチュリーの好きなところは色々ありますが、やはりV8エンジンですね。非常にスムーズで静かな走りを実現しています。
また、組み立てや塗装など細部へのこだわりが素晴らしい。センチュリーは基本的に手作りのクルマでロールスロイスのように組み立てられていると聞きました。トヨタの工場のなかでももっとも熟練した職人が担当しているとも。
ただ、年間生産台数が非常に少ないこと、またスペアパーツが一般に出回ることも少ないため苦労しているのはやはり部品の入手です。
日本以外の国では販売されていなかったので、世界中から部品を調達することもできません。
それでも私はセンチュリーに強い魅力を感じていますし、30年来の夢を実現できてとても幸せです」
※ ※ ※
アメリカの中古車情報を見てみると、センチュリーが意外と安価(1万ドル以下。日本円で70万円から120万円が主流)で販売されています。
今後、センチュリー人気が過熱すると価格が高騰する可能性もあります。
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みんなのコメント
ただ国内での中古は下品な方たちが乗っているのが目立つので残念で仕方がない。
願わくば日本では許されないセンチュリーベースのカスタム化、オープンモデルやロードスターモデル化を実施したら楽しいでしょうね。V12エンジンモデルが25年経過したらターボ化やら楽しいカスタム化がアメリカなら実現するかもね。日本人としてはアメリカのに対する規制の緩さが羨ましい限りです。