この記事をまとめると
■トヨタから5代目となる新型プリウスが登場
大径なのに幅が狭い! クラウンやプリウスが「謎のサイズ」のタイヤを装着するワケ
■ハイブリッドとPHEVをラインアップする
■どちらを買うべきか迷っている人に向けて選び方を解説
先代からガラリと変わった新型プリウス!
新型プリウスのカッコ良さにぞっこん、購入を考えている人も多いはず。ところで、5代目となる国産ハイブリッドカーの代表格とも言えるプリウスは、4代目以前の燃費スペシャルカーから一転、燃費性能を確保しつつ、スポーティなモデルへと大変身。まるで4ドアスポーツクーペのような、乗降性よりデザインを優先した流麗なスタイリング、スポーティカーのような走行性能がウリとなっている。
そんなプリウスのラインアップには、ハイブリッドモデルをメインに、今回、”新型プリウスのトップエンド、ハイパフォーマンスモデル”として位置づけられるPHEVも用意されている。ハイブリッドモデルが2WDとE-Fourと呼ばれる電気式4WDを揃えているのに対し、PHEVは2WD、プリウスの最上級グレードとなるZグレードのみの設定となる。
見た目のハイブリッドとPHEVの違いは、先代と違い(とくにリヤビューとセンターディスプレイでデザイン分けされていた)、一目で判別するのが難しい。エクステリアではバンパー下の加飾、19インチのホイールデザイン、リヤの横一直線に走るテールランプの色使い(PHEVはグレースモーク×ホワイトレンズでめちゃカッコイイ)、そしてエンブレムぐらいということになる(エンブレムもHEVとPHEVの一文字違い)。
インテリアにしても、メーターの一部の表示、HV/EVモード切替スイッチ、AUTO EV/HVモードスイッチがあるかないかぐらいの差で、最大12.3インチのセンターディスプレイなどもハイブリッド、PHEVともに共通である。
使い勝手面ではラゲッジスペースの容量が異なり、後席下の大容量バッテリー積載、燃料タンクレイアウトの違いなどによって、ハイブリットの410リットル(G/Zグレード。1.8リッターのLのKINTO専用Uグレードは422リットル)に対してPHEVは345リットルへと減少。理由はラゲッジスペースのフロアが高まっているためだが、先代PHEVのように、開口部からフロアが不自然に持ち上げられたようにはなっていない。開口部から約70mm(ハイブリッドは約160mm)下がったところにフロアがあり、むしろ開口部とフロアの段差が縮まったことで重い荷物の出し入れ性ではむしろPHEVに荷物の持ち上げ量の少なさ、荷物と開口部のキズ付きにくさという点でメリットがある。
ただし、あたりまえだが、パワートレインは別物。2リッターエンジンに大容量バッテリー、モーターを組み合わせたPHEVのスペックは、エンジン151馬力(ハイブリット152馬力)、19.2kg-m(ハイブリッド19.2kg-m)。フロントモーター163馬力、21.2kg-m(ハイブリット113馬力、21.0kg-m)と、モーター出力でPHEVがハイブリッドを大きく上まわり、さらにシステム出力は先代の122馬力に対してなんと倍近い223馬力を発生するのだ!!
なお、PHEVのWLTCモード燃費(ハイブリッドモード)は26.0km/L。ハイブリッドは同グレード、駆動方式で28.6km/Lとハイブリッド優勢(主に車重差による)。PHEVの車重はハイブリッド比+150kg(1420kg→1570kgにとなる。EV走行可能距離は、標準仕様の19インチタイヤで87km。それでも日常的には十二分だが、ダウンサイズオプションの17インチタイヤ装着ではWLTCモード燃費が30.1km/Lになるとともに、EV走行可能距離も105kmに伸びるのだ。
走りやラゲッジの使い勝手を確認したい
そして大いに気になる価格は、2WD、Zグレードで揃えると、ハイブリッドが370万円、PHEVが460万円と、PHEVのほうが90万円高い設定だ。が、国からの補助金上限55万円が適用されたとすれば、差額は一気に35万円に縮まる。こうなると、ハイブリッドとBEVの中間に位置する、充電が可能な電動車としての魅力、専用スポーツサスペンション、バランサーシャフトを加えた高回転で快音を控え目に発する2リッターエンジン、さらなる静粛性の高さの優位性から、予算的にもハイブリッドか、PHEVかを悩ませてくれそうだ。もっと言えば、地域によってさらに補助金が上乗せされることもあり、たとえば東京都の場合は都からの補助金45万円が加わり、結果、PHEVがハイブリッドより10万円安く手に入れることができたりする(東京都で補助金が適用された場合)。こうなると、なにも考えずに!? PHEV一択……と決断しそうな人も少なくないかもしれない。
が、ちょっと待てよ、である。先代までの燃費性能に特化したプリウスを望む人にとって、そもそも新型プリウスのハイブリッドモデルでさえ、デザイン、乗降性、後席居住性で異次元のクルマになっている。PHEVの2リッター級スポーツカーに匹敵する走行性能、操縦性、胸のすく加速性能は果たして必要だろうか。
もちろん、PHEVは充電ができるところにハイブリッドとの違いがあり、もし自宅に充電設備がない、あるいは近所に充電設備がないとしたら、PHEVを十分に使いこなせないことになる。充電しないPHEVは、ほぼ”150kg重い” 2リッターエンジンに頼るプリウスになってしまうのだ。
さらに忘れてはならないのは、補助金を受けた場合、4年間の保有義務が発生すること。もしそれまでに手放せば、補助金の返還が必要になってしまう。クルマは2、3年で乗り換える……という人にとっては、補助金によるハイブリッドとPHEVの価格差が35万円~縮む話は、ないということだ(補助金を申請しないケース)。
たしかに、走り好きな人にとって、速さ、走りの気持ち良さ、巡行時のさらなる静かさ、エンジンを高回転まで回した時の快音、スポーティ度に関してはPHEVが圧倒し、魅力的なのは確か。PHEVがハイブリットとの補助金なしの価格差90万円に見合う内容を備えていることはもちろんだ。が、補助金によってPHEVとハイブリットの価格差が縮まる”美味しさ”だけで、深く考えずにPHEVを選択するのは、自宅(周辺)の充電環境の有無、ラゲッジ容量差を含め、クルマ選びとして正解とは言い難い。
PHEVを買って正解なのは、4代目以前のプリウスとは違う、実用性よりもハイパフォーマンスなクルマを望み、なおかつ自宅に充電設備がある人ということになるだろう。一方、自宅(周辺)に充電設備がないとすれば、一転、ハイブリッドの価格対満足度、燃費性能にメリットが生まれ、PHEVにない、リヤモーターも加わる動力性能と安定感、ロングドライブでの快適度で2WDを上まわる4WDモデル(342~392万円)の選択も可能となるのである。
新型プリウス選びの理想としては、ハイブリッドの2WD、4WD、PHEVを乗り比べ、ラゲッジの使い勝手までを比較した上で、納得できる1台を選ぶことではないだろうか。
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