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“まじめ”な力作だけにもったいない!? なぜ三菱はコルトをやめてミラージュを復活させた??

掲載 更新 32
“まじめ”な力作だけにもったいない!? なぜ三菱はコルトをやめてミラージュを復活させた??

 「まじめ まじめ まじめ COLT」という宣伝文句のとおり、車作りも質実剛健! 三菱はミラージュを復活させ、なぜ佳作「コルト」をやめてしまった?

◆  ◆  ◆

今ならもっと売れていた?? 時代の先を行き過ぎた挑戦車たち

 今は以前に比べてクルマの価格が全般的に高まり、コンパクトカーの販売比率が従来以上に増えた。2000年代中盤頃のコンパクトカー比率は小型/普通乗用車の約30%だったが、今は40%に達する。

 そして2020年には、ヤリス、フィット、ノート、ソリオという具合に、新型コンパクトカーが豊富に登場した。衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能も刷新され、各車とも売れ行きは好調だ。

 そのなかでいまひとつ伸び悩むのが三菱 ミラージュ。2020年の登録台数は、コロナ禍の影響を受けたとはいえ、月平均で185台に留まった。ヤリスは1万台少々(SUVのヤリスクロスを除く)に達してフィットも8000台を超えたから、ミラージュは圧倒的に少ない。

文/渡辺陽一郎 写真/MITSUBISHI

【画像ギャラリー】惜しまれて生産終了した三菱コルトと後継モデル 現行型ミラージュ厳選写真20点

SUV推しのブランドイメージに合わず? 苦戦するミラージュ

2020年にマイナーチェンジした三菱ミラージュ。フロントマスクにダイナミックシールドを採用

 ミラージュは、2020年4月に比較的規模の大きなマイナーチェンジを実施して、フロントマスクに新しいダイナミックシールドのデザインを採用した。衝突被害軽減ブレーキも歩行者の検知が可能になったが、依然として売れ行きは伸びない。この点について三菱販売店に尋ねると、以下のような返答だった。

 「ミラージュは2020年にマイナーチェンジを行って、フロントマスクや安全装備を刷新しましたが、売れ行きは乏しいです。今の三菱の売れ筋は、ミニバンのデリカD:5やSUVのエクリプスクロスになっているからです」

 「三菱のブランドイメージも変わり、SUV感覚を強めました。またコンパクトカーには、ヤリスやノートなどの強敵も多いです。三菱にもライズやキックスのようなコンパクトSUVが用意されると、好調に売れると思います」

 たしかに三菱の小型/普通乗用車で最も多く売れているのは、今は月に約1000台のデリカD:5だ。2位は月500台前後のエクリプスクロスになる。

 ミラージュは今の三菱のブランドイメージに合わず、発売も2012年8月だから8年以上を経過するため売れ行きも伸び悩む。

ヴィッツやフィットにも見劣りしなかった力作「コルト」

三菱コルト(販売期間:2002年~2013年/全長3885mm×全幅1680mm×全高1550mm)

 ちなみに三菱は、2002年にコンパクトカーのコルトを発売した。コルトは2003年には6万2453台、月平均で約5200台を登録しており、同年のヴィッツ(1か月平均で約5900台)に迫る売れ行きだった。三菱の販売店舗数が少ないことも考えれば、当時のコルトは人気車だった。

 コルトがミラージュに比べて多く売られた背景には、当然ながら商品力の違いがある。初代コルトは、当時のライバル車だったヴィッツやフィットの初代モデル、2代目デミオ、3代目マーチなどと比べても見劣りしなかった。

 全長は3870mmとコンパクトだが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2500mmと長く、後席の足元空間にも余裕があった。

 内装ではインパネ周辺の造りが上質で、前席が座り心地の快適なベンチシートになるグレードも用意している。コンパクトカーでありながら、ミドルサイズセダンのような質感を味わえた。

 助手席の座面を持ち上げると、買い物袋を引っ掛けるフックが備わり、走行中に荷物が倒れにくい配慮も見られた。

コルトには、標準装備以外の装備を自由に選択できるカスタマーフリーチョイスというサービスがあった

 さらにコルトは、カスタマーフリーチョイスという新しい装備の選び方も生み出した。推奨パッケージはあるが、全車に標準装着される装備以外は、基本的に自由に選べる方式だ。

 従って上級の1.5Lエンジンを搭載しながら、電動格納式ドアミラー、オーディオ&スピーカー、タコメーターなどを省く選び方も可能だ。カスタマーフリーチョイスを成立させるため、三菱は社内の受注システムを大幅に刷新した。

 ただしカスタマーフリーチョイスを実践すると、人気の装備を標準装着しながら、価格を割安に抑えた特別仕様車は設定できない。コンパクトカーとは相性が悪く、ミニバンのグランディスにも採用されながら定着しなかった。

 それでもポルシェなどは、細かな装備まで自由に選べる。高価格車から実践すれば、成功した可能性もある。後年になって三菱の開発者は「パジェロなどで始めるべきだったかもしれない」と振り返った。価値のあるシステムだっただけに残念だ。

廃止されたコルトと復活したミラージュの“ジレンマ”

6代目ミラージュ(販売期間:2012年~/全長3885mm×全幅1680mm×全高1550mm)※写真は2016年マイナーチェンジ版

 このように力の入ったコルトに比べて、ミラージュは2012年の発売時点から魅力がいまひとつであった。

 この時点ではコルトがモデル末期ながらもラインナップされ、ミラージュは後継車種とされながら、ボディはひとまわり小さい。現行ミラージュの全長は3855mmだが、発売時点では3710mmだ。全幅は今でも1665mmと狭く、ホイールベースも2450mmと短い。

 それならミラージュのセールスポイントは何かといえば、新興国でも販売しやすい低価格、低燃費、コンパクトな扱いやすさを挙げている。

 エンジンはコルトが直列4気筒の1.3Lと1.5Lだったのに対して、発売当初のミラージュは直列3気筒1Lだ(今は直列3気筒1.2L)。車両重量は870kgと軽く、JC08モード燃費は27.2km/Lを誇ったが、燃費数値は時間が経過すればいつかは追い抜かれてしまう。

 運転すると乗り心地の硬さに驚いた。ブリヂストン・エコピアEP150など低燃費を追求したタイヤを装着して、指定空気圧は270kPaと際立って高い。サスペンションもコスト低減を強いられ、乗り心地に不利な条件が重なっていた。

 ボディは軽いものの、直列3気筒1Lエンジンの最大トルクは8.8kgm(5000回転)だったから、実用回転域の駆動力は乏しい。

 登坂路ではアクセルペダルを深く踏むことになり、ノイズも高まった。内装の質感にも不満があり、ホイールベースが短いために後席の足元空間も狭い。

 その結果、発売の翌年に当たる2013年の登録台数は月平均で1000台に達したが、2014年には466台と半減した。改良を受けながらも、2017年は326台、2020年は先ほどの185台まで下がった。

上質なコルト存続なら三菱のイメージは変わっていた?

 以上のように振り返ると、ミラージュとコルトはランクの違うクルマであった。そのために三菱も、コルトの名称は使わずに、コンパクトカーの印象が特に強いミラージュを名乗った。

 それにしても上質なコルトの進化が今でも続いていたら、三菱のブランドイメージは変わっていただろう。

コルトRALLIART Version-Rは、コルトをベースとしたスポーツモデル(販売期間:2006年~2012年/全長3925mm×全幅1695mm×全高1535mm)

 特にコルトに追加されたラリーアートバージョンRは、カッコ良くて楽しいホットハッチだった。今なら最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)に少し余裕を持たせたSUV風のモデルも成り立つ。

 コルトからミラージュへの転換は残念な方向に作用したが、今後はアウトランダーのフルモデルチェンジをきっかけに、新たな進化を開始して欲しい。

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みんなのコメント

32件
  • 一度レンタカーでヴィッツクラスの車を選んでコルトが出てきた事があって乗ってみた。力強いキビキビとした走りで予想外に良かった事を覚えている。
    しかし 会社はクソ。未だに存続している事が不思議でならない。
  • なぜ売れない?って
    三菱だからじゃん。笑笑
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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