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バス業界、2025年は革命前夜? 「自動運転×電動化」で人手不足解消なるか? 運賃値上げ、AI導入――激動のバス業界の未来を徹底予測する

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バス業界、2025年は革命前夜? 「自動運転×電動化」で人手不足解消なるか?  運賃値上げ、AI導入――激動のバス業界の未来を徹底予測する

運転士不足と賃金上昇の現実

 2025年を迎えても、バス業界の厳しい経営状況は依然として続くと予測される。

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 モータリゼーションの進展や、Covid-19の影響で進んだテレワークにより定期券収入が減少し、2024年問題にともなうドライバー不足への対応として賃金引き上げが求められている。

 また、高速バスのドライバー確保も難航している。少子高齢化や外国人の流入など、国内の人口動態が業界に与える影響も今後注視すべき重要な課題である。

 その一方で、厳しい環境だからこそ新たな事業アイデアを模索する必要性が増しており、その兆しも見え始めている。現代の都市生活をより良くするためには、先端技術の活用が欠かせない。省人化の進展にともない、AIを中心とした自動運転技術や、オンデマンド交通を支えるAI技術、環境負荷軽減に貢献する電動車両技術など、注目すべき技術の進展が続いている。

 本稿では、2025年のバス業界がどのように変革していくのか、その展望を考察する。

2025年における主要トピック

 2025年に注目すべきバス業界の進展について、テーマごとに整理したい。

●新技術の導入と進展
 明るい兆しとして、自動運転技術の進展が挙げられる。2024年12月25日、愛媛の伊予鉄バスが、特定の条件下で完全自動運転が可能な「レベル4」の路線バス営業運行を開始した。

 具体的には、伊予鉄道の高浜駅から松山観光港までの約800m区間を、1日約60便の大半のバスがレベル4自動運転で運行する。この運行は、松山市の斎院営業所から遠隔監視され、万が一のために、大型2種免許を持つ保安員が車内に乗車する体制が取られている。この取り組みは全国初であり、2025年以降のバス業界にとって重要なマイルストーンとなるだろう。

 さらに、自動運転技術に適した電動バスが導入され、キャッシュレス決済も採用されている。自動運転システムはソフトバンク子会社のBOLDLY、電動車両はEVモーターズ・ジャパンとの連携だ。「電動バス」「自動運転」「キャッシュレス決済」という技術が融合し、実現に至ったことは、業界にとって画期的な進展だ。この取り組みが成功すれば、国内バス事業の経営効率向上に大きく貢献することが期待される。

●労働環境の改善と人手不足対策
 自動運転技術の普及が進むなか、すぐに人手不足が解消されるわけではない。2024年12月2日、横浜市は新たな人材確保策を発表し、市営バスや市営地下鉄の現場職員の給与を平均7.72%引き上げる方針を示した。この引き上げは、2023年12月の6.65%に続くもので、18歳の給与は月額約4万1千円、23歳では月額約5万6千円の増加が見込まれている。これにより、大卒の初任給も大幅に引き上げられ、若手人材の確保が進むと期待されている。

「公営だから可能」という声もあるが、民間企業でも予算見直しを通じて人件費を強化する動きが出ており、このトピックはメディアでも注目を集めている。また、女性や外国人の雇用を積極的に推進する企業も増えており、これらの取り組みが人手不足の解消に貢献することが期待されている。

観光と生活の動線分離

 続いて、次の2つのテーマについて説明する。

●サステナビリティと環境問題への対応
 サステナビリティは、バス業界にとって引き続き重要な課題であり、社会的な要請も高まっている。持続可能な社会の実現は世界的な目標であり、バス業界もその実現に貢献する必要がある。

 前述の愛媛の伊予鉄グループは、二酸化炭素を排出しない電動車の導入に積極的に取り組んでいる。特に注目すべきは、小型から大型まで多様な電動路線バスを導入し、リムジンバス用の車両も用意している点だ。この取り組みにより、静かで快適な乗り心地を提供し、スムーズな発進が可能な電動バスを実現。また、災害時には電源としても活用できる機能を備えている。

 今後も毎年10台の電動バス導入を目指し、2027年度までに合計50台の導入を予定している。この計画は、イニシャルコストとランニングコストを含めたトータルで見ると、電動車両はエンジン車両よりも優位性を持つことが予測される。伊予鉄グループに限らず、国内では電動車両の導入が進んでおり、いすゞエルガEVなどの国産車の登場がさらにその動きを加速させるだろう。

●利用者ニーズの多様化とサービス向上
 利用者ニーズは、観光地としての特徴を持つ京都のような都市では、観光目的と生活目的で大きく異なると予想される。観光都市と生活都市が共存する都市では、観光用と生活用の動線を分けるサービスが求められる。例えば、京都市の観光特急のように、観光専用路線を設けることで生活動線と切り分けることが必要だ。

 さらに、ドライバーのストレスを軽減するためには、キャッシュレスサービスの拡充が重要だ。熊本市のように、全国交通系ICカードの廃止に向けた動きが広がる可能性もあるが、QR決済やクレジットカードのタッチ決済など、新たな決済方法がスムーズに導入されれば、キャッシュレス化が進み、利便性の向上が期待される。

ドライバー不足解消への道

 最後のテーマについて説明する。

●業界が直面する課題とその解決策
 バス業界は依然としてドライバー不足という深刻な課題に直面している。給与の見直しや実際の給与額の引き上げが重要なテーマとなっており、2025年に向けてバス事業者の自助努力が続くと予測されている。

 特に、大型2種免許の取得条件が緩和され、全国的に10代でも免許を取得できるようになった。この変更を活かし、若手ドライバーの雇用と育成が進むことが期待されている。給与水準が比較的低いものの、安定した職を求める若手ドライバーの採用が増加し、さらに女性ドライバーや外国人ドライバーの雇用も拡大すると見込まれている。

 次に、財政面では依然として厳しい状況が続いている。モータリゼーションの拡大やテレワークの普及による定期券収入の減少、2024年問題にともなうドライバー不足の解消に向けた賃金捻出など、バス事業者の財政は大きな課題となっている。

 特に、高速バスのドライバー不足という問題に対しては、地域との合意形成が重要だ。事業の厳しさを理解してもらうための情報公開や運賃引き上げに関する議論、さらに滋賀県のように交通税を導入することや交通バリアを軽減するための政策が必要とされている。これらの課題解決に向けて、広い視野での政策議論が求められている。

 また、交通渋滞も大きな課題だ。違法駐車防止などの啓蒙活動は一定の効果が期待されるが、自動運転技術の普及が解決策となる可能性がある。自動運転技術を活用すれば、適切な車間距離を確保し、バス運行の円滑化が進むことが期待されている。そのため、自動運転技術の普及を促進する政策が必要とされている。

収益多角化で実現するドライバー確保

 2025年には、バス業界における最優先課題が

「バスドライバーの安定確保」

となるだろう。これを達成するためには、従来の「バス運行」モデルから脱却し、収益源の多角化が進むと予想される。

 具体的には、バス停からのアクセスとして自転車やマイクロモビリティのシェアリングサービス、貨客混載サービス、さらには買い物ができるバスなど、新しい事業形態の検討が進むだろう。また、マイクロトランジットの参入も視野に入ると考えられる。

 さらに、伊予鉄が進めている電動車・自動運転・キャッシュレスの融合が全国でどのように波及するかが注目される。

 これらの新技術は、無人化や環境負荷の低減において大きな効果をもたらすと期待されており、技術の普及には評価とフィードバックが重要となる。加速的に進めるべき交通政策にも期待が高まっている。

革新技術で挑む業界変革

 総括すると、2025年にはバス業界において大きな進化が見込まれる。2024年の厳しい状況を乗り越え、業界全体に「何とかしなければならない」という強い意識が広がりつつある。

 DX技術や環境技術が進展し、AIオンデマンドなどの新しいバスサービスが現実味を帯びてきている。従来の

「大きなバスを定時運行する」

という基本的な運営方針を捨て、革新的なアプローチを取り入れることで、業界は成功を収めるだろう。

 読者の皆さんも新年を迎え、さまざまな思いでバス事業を見守っていることだろう。新しい技術の進展と、業界が抱える課題解決への強い意識がどのように結びつくのか、注目したいところだ。

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みんなのコメント

15件
  • シーバル
    仮に運転自動化出来ても
    車椅子、ベビーカー等の対応は機械では出来ないでしょ?

    結局人は必要やと思う
  • san********
    飛行機も電車もほぼ自動運転になってるけど乗務員は乗ってるよ。あとバスの自動運転は色々ハードルが高いと思いますよ。運転士の待遇改善や法律を改善しないと間違いなく人手不足で公共交通は崩壊します。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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