フルモデルチェンジしたトヨタ「プリウス」のPHEV(プラグイン・ハイブリッド)の“走り”とは? 発売前のプロトタイプに試乗したサトータケシがレポートした。
圧倒的に静か!
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わが耳を疑ったのは、新型トヨタ・プリウスの製品企画の担当者が、「PHEVは、プリウスのハイパフォーマンスモデルです」と、おっしゃったことだ。ちょっと待ってください! 外部電源にプラグインして充電することで、ハイブリッド車より長距離のEV走行ができるPHEVとは、ハイパフォーマンスモデルではなくエコ重視モデルではないのでしょうか……。
2022年に発表されたハイブリッド(HEV)版の新型プリウスに続いて、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)版がデビューを控えている。このタイミングで、プリウスPHEVのプロトタイプの試乗会がクローズドのサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)で開かれた。
「PHEVはハイパフォーマンスモデルなのか?」というギモンを解くために、従来型と新型のプリウスPHEVを比較試乗する。
ちなみに、従来型は「プリウスPHV」という表記で、HEVとは異なるオリジナルデザインが与えられていた。対する新型はプリウスPHEVと表記され、デザインはHEVと共通になった。
まずはEVモードを選び、EV走行でのパフォーマンスの違いをチェック。で、たまげた。発進加速の力強さがケタ違いだ。どれくらい違うかというと、従来型は「環境にやさしいわけだし、まぁこれくらいで我慢するか」という程度の加速であるのに対して、新型は「これめっちゃ楽しくない?」と、助手席の人に話しかけたくなるくらいパワフルだ。タイトなコーナーからの立ち上がりでは、アクセル操作に俊敏に反応して前輪がぐいぐい引っ張る。
モーターのスペックを見ると、最高出力は従来型の72psに対して新型が163ps、最大トルクが従来型の163Nmに対して新型が208Nm。なるほど、大幅に強化されている。
強化されているのはモーターだけでなく、リチウムイオン電池の容量もほぼ倍増。プロトタイプなので、EV走行ができる距離は「従来型比50%以上向上」とだけ記されている。
資料によると従来型は15インチタイヤが60km、17インチタイヤが50kmとあるから、新型PHEVは75km~90kmのEV走行が可能になる計算だ。
買い物や家族の送迎などの普段使いであればエンジンの出番はなし、EV走行だけでまかなえるだろう。
EV走行の比較で、もうひとつわかったことがある。それは、新型プリウスPHEVのほうが圧倒的に静かだということだ。EV走行中はパワートレーンが無音なので、タイヤと路面が接して発するロードノイズと、ボディと風の摩擦で生まれる風切り音が目立つことになるけれど、従来型と新型では大きな違いがあった。その差は車格が異なると思えるほどで、しかも1クラスではなく2クラス、前頭筆頭と関脇ぐらい違う。
高性能かつプレミアムモーターとエンジンが連携して走るハイブリッドモードを比べると、新型と従来型の差はさらに大きく広がった。というのも、実に興味深いことに新型プリウスPHEVはモーターとバッテリーだけでなく、エンジンもよくなっているからだ。
新型のPHEVが積むエンジンは、すでに発表されているのHEVにも積まれる2.0リッターの直列4気筒。HEVには1.8リッターエンジン仕様も設定されるけれど、PHEVは2.0リッターエンジンのみとなる。
従来型プリウスPHVの1.8リッターエンジンの最高出力が98psだったのに対して、こちらは151psと大幅に強化されているから、パワーアップしたモーターとのあわせ技で、加速感はやはり2クラス違う。
うれしいのは、ただ速いだけではなくて、エンジンが回転を上げるフィーリングや音の高まりが心地いいことだった。
従来型よりモーターが関わる頻度や割合が高まっていて、加速時のモーター特有の浮遊感がより濃くなるから、「未来のクルマだな」と、しみじみ感じる。
でも未来を感じつつも、違和感は感じない。たとえば、エンジンの音だけが先に高まって、後から加速が付いてくるというような、ちぐはぐさがない。クルマを愛する腕利きたちが、徹底的にチューニングしていることが伝わってくる。
おなじことを、コーナリングでも感じた。従来型よりはるかに速いペースで新型PHEVは走るけれど、安定した姿勢を保ったまま、思ったとおりに曲がる。ハンドルの手応えは良好で、いまタイヤがどんな仕事をしているのかがしっかりと伝わってくる。
ハードブレーキングを敢行しても、前につんのめって速度を落とすというより、水平な姿勢を保ったまま沈み込むようにスピードが落ちる。パワートレーン同様、足まわりも丁寧にしつけられている。
たしかに、“プリウスのハイパフォーマンスモデル”という言葉に嘘はない。
従来型プリウスPHVと比べて静かだと書いたけれど、速度を上げてコーナーを曲がるにつれ、ボディのしっかり感、いわゆる剛性も段違いであるように感じた。従来型PHVのボディが少しバラつく様子を見せる場所でも、新型PHEVは削り出しの金属のようにソリッドだ。静粛性の高さとボディ剛性の高さから、プリウスのハイパフォーマンスモデルであると同時に、プレミアムモデルでもあるとも感じた。
それにしても、プリウスでサーキットを走って楽しいと思える日が来るとは思わなかった。初代プリウスがデビューした1997年当時の自分に、「26年後のプリウスはスポーツカーみたいに走るぞ」と、言っても、絶対に信用しないだろう。
1日も早くプロトタイプではない市販バージョンを、首都高速やワインディングロード、市街地で乗ってみたい。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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