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マジメな全面改良──新型ホンダN-BOX試乗記

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マジメな全面改良──新型ホンダN-BOX試乗記

モデルチェンしたホンダの「N-BOX」の走りはいかに? テストコースでひと足はやく試乗した今尾直樹がリポートする。

堅実にして着実な改良

新しいロードスターには、マツダの夢と理想が詰まっている!

ホンダのベスト・セラー、N-BOXが現行型の登場から約6年を経て、2023年上半期の国内販売台数No.1(全国軽自動車協会連合会調べ)の座を維持したまま、モデルチェンジを受けた。現行型のプラットフォームを継承しつつ、守るべきコア価値は守り、長所はのばす。ライバルに較べて足らざるところは足す。不評なところは改善する。というマジメな全面改良である。

側面衝突やサイバーセキュリティの新しい法規にも対応している。側面衝突は速度が26km/hから32km/hに上がっている。物体の運動エネルギーは速度の2乗に比例する。これに対応するために新型N-BOXでは、「1180」という軽くて丈夫なハイテン(高張力鋼板)材を用いたBピラーのつけ根の面積がグッと広がっている。車重を増やすことなくボディ剛性を上げるために、ハイテン材の使用する率は変わっていないけれど、ハイテン材を使う部位や構成を工夫しているという。

先進安全装備のホンダ・センシングも、ホンダ初の踏み間違い衝突軽減システム(近距離衝突軽減ブレーキ)を採用。現行型では駆動を抑制するのみだったのが、新型ではブレーキをかける。

その新型N-BOXのプレス向け先行試乗会がホンダの栃木プルービンググラウンド(栃木県)で、9月初旬に開かれた。試乗時間は30分しかなく、試験路限定ながら、周回路で100km/hまで試せた。なにより現行モデルも用意されていて、新旧の2タイプの比較もできた。標準モデルのNA(自然吸気)と、カスタムのターボである。

3代目となる新型N-BOXにも、親しみやすい穏やかな丸型ヘッドライトの標準モデルと、フロントの全幅いっぱいに横一文字で広がるライトの、ダークヒーローっぽいカスタム、ふたつのラインがある。

開発スタッフが助手席に乗っていて、あれこれ質問もでき、堅実にして着実な改良が図られていることが確認できた。N-BOXの進撃はさらに続く。というのが筆者の個人的な感想である。

雑味がない試乗した順から印象を記すと、まずはフツウの新型N-BOXのNAで、テスト車は「ファッションスタイル」という名前の新仕様で、「オータムイエロー・パール」という秋っぽい新色をまとっていた。ホントはその前に現行型のEXで決められたコースを走った。現行型でも、N-BOXはとてもよくできていると思った。そして、新型はそれよりさらに直進安定性がよく、静かで、乗り心地が明らかに、よりしなやかで、より快適になっている。

足まわりの改善点は、フロントのアラインメントをトーイン方向に変更している。バネ、ダンパー、ブッシュは基本的に現行とおなじ部品だけれど、前後ブッシュの締結の仕方を適正化している。現行型ではひとが乗る前の状態、新型ではひとが乗っている状態を想定して取り付けているそうで、そうすることでサスペンションが乗り心地方面でより動きやすくなるという。詳細はともかく、とりわけ低速時の乗り心地に違いを感じた。

静粛性も、新型は車内に入ってくる音が澄んでいる。エンジン音は660ccの小排気量NAだから100km/hで、CVTを介し3200rpmまわす必要がある。派手にまわすとエンジン音はけっこう大きくなる。でも、雑味がない。秘密はフロアカーペットに遮音フィルムを追加していることと、ルーフライニング基材の構成を変更していることにある。

視界の改善を意図して、水平方向にシンプルになったダッシュボードのデザインも好感がもてる。ホンダの軽自動車初の7インチ画面の液晶メーターは、サイバーセキュリティの対応もあって、シビック用を流用しているという。軽にシビック用! と、聞いて、買ってもいないのに得した気がした。

ちなみにサイバーセキュリティとは通信系に侵入されて乗っ取られることを防ぐことを意味する。クルマも電子化されれば、コンピューター同様の対策が必要になるのは当然で、それが法規で定めてられているのだ。

ニッポンの真の国民車へ続いて、カスタムのこれまた新しい仕様の「コーディネートスタイル」で、「ストレートグレー・パール」というダークなカラーをまとっている。ルーフがブラックの2トーンで、内装はブラック基調の「プライムスムースシート」という、ステップワゴン等にも使われている合皮が用いられていて、軽とは思えぬ雰囲気がある。

カスタムにはNAもあるけれど、テスト車はターボである。標準型のターボは現行型にはあるのに、新型では設定がない。NAとターボの違いは、ホイールが標準型の14インチから15インチに格上げされること。そしてダンパーの減衰力が変更されている。

でも、乗り心地はさほど硬くない。タイヤのサイズは現行型と同じ165/55R15で、標準型より適度に締まっている、という感じ。現行型のカスタムも、これでいいじゃないか、というくらいよいと思ったけれど、新型はもっとよかった。より静かで、より直進性がよくて、より乗り心地が微妙によくなっている。全域にわたって洗練されている。

エンジンは現行型とおなじS07型で、NAは最高出力58ps/7300rpm、最大トルク65Nm/4800rpmなのに対し、ターボは64ps/6000rpmと104Nm/2600rpmと、NAの1.6倍ものトルクをより低回転で発揮する。100km/h巡航は2800rpmで、NAより400rpm低い。

おまけにカスタムのみ、ルーフライニングの内側に吸音材が仕込まれている。だから、標準型N-BOXよりとっても静かなのだ。というか、20万円ほど高いカスタムの存在理由をつくるために差別化が図られている。個人的には標準型にもターボがあってもいいし、吸音材を増やしたのがあってもいいと思うのですけれど、標準型はそれより価格を重視している。それはそれで大切なことである。

新型はCVTの制御もより緻密になっていて、いわゆるCVTっぽさが薄まっている。エンジン回転が先に上がって、後から車速がついてくる、というCVTの違和感を消すために、回転はあまあげず、回転の上昇にともなって車速があがる、というセッティングにして自然なフィールに仕立てている。

ステアリングのEPS(電動パワーステアリング)も、よりリニアなフィーリングになっている。これまではドライバーがステアリングを切った舵角に対して推定値で制御していたのを今回、実際の舵角を感知する「舵角速度フィードバック制御」に切り替えた効果という。

助手席の開発エンジニアの方とおしゃべりしていたら、その方がこんなことをいわれた。N-BOXのユーザーはN-BOXからの乗り換えが多い。乗り換えてガッカリされてはいけない。だから、新型ではよくなった! と、思われるようにがんばった、と。

もうひとつ、軽自動車の使われ方が変わってきている。ファーストカーとして高速道路を走ることがふつうにおこなわれているのだ。じつは私も、我が家にある初代「N-ONE」でよく高速道路を走っています。ウチのN-ONEはNAで、高速安定性は非常に悪い。それに較べたら新型N-BOXは夢のようである。

軽自動車は高速道路も安心して走れる、ニッポンの真の国民車になりつつあるのだ。

文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

4件
  • 新しくするのに金のかかるプラットフォームやエンジン・ミッションはもちろん、フロントガラスや前席サイドガラスまで使い回しではないか?
    ソフトの更新や内装の変更だけで「フルモデルチェンジ」といっていいのか?
  • ちょっと気味悪い。
    フィットRSもそう、なんか薄ら笑い
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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