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ワゴンではない古いボルボの魅力とは?──ボルボ 122S試乗記

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ワゴンではない古いボルボの魅力とは?──ボルボ 122S試乗記

2016年8月、ボルボ・カー・ジャパンは、古いボルボのレストアおよび販売をおこなう「クラシックガレージ」を発足させた。直営店舗であるボルボ・カー東名横浜内にガレージを置き、熟練メカニックを常駐させている。

クラシックガレージには2016年に38台、2017年に81台、2018年に95台が入庫し、レストアを受け、その多くは販売された。今回、同ガレージが手がけたヒストリックボルボを試す機会を得た。

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まず試乗したのは1970年製の「122S」だ。2ドア・セダンである。1956年より販売開始された120シリーズは当初「アマゾン」という車名だったが、商標の関係から途中で120シリーズという車名に変わり、1970年まで販売された。

スペックシートによれば、2.0リッター直列4気筒OHVツインキャブエンジンを搭載し、最高出力118ps/5800rpm、最大トルク17.0kgm/3500rpmを発揮する。トランスミッションは4段MTだ。

すでに他媒体が試乗を済ませ、すっかり暖まったエンジンの122Sを始動する。軽やかに吹け上がるのではなく、可動パーツのマスを感じさせる音と振動を伴いながら、それでも実直にまわるといった感じだ。

1960年代のクルマの回転計は針がカクカクとした動きをするケースもあるが、ダッシュボード上に独立して設置された122 Sのスミス製回転計の白い針はなめらかに動いた。

クラッチペダルを踏み、センタートンネルから生えた長いギアレバーを動かして1速に入れ、徐々にクラッチペダルを戻すとともに少しずつアクセルペダルを踏む。トルクの細さを感じずに、あっさりと発進する。まったく気を使わない。

ステアリングリムはその径の大きさが若干のアシストの役目を果たすが、まぁ重い。が、それもスピードが上がれば気にならない。気になるのはむしろリムの細さだ。運転するうちに現代のクルマのように握ろうとしてはいけないと気づく。スポーク部分をうまく使って引っ掛けるように持つとしっくりきた。

エンジンは思っていたよりもずっとトルキーだ。街中でも、首都高にのってからも、交通の流れをリードするくらいの力強さを見せる。ビートを感じさせる低いエンジン音もいい。ヒストリックカー用に昔のトレッドパターンでミシュランがつくり続け、容易に入手可能な15インチ「XZX」が装着されていた。あたりがソフトで、マイルドな乗り心地に貢献している。グリップ力は低いが、クルマの性能にはマッチしている。

試乗中、不安な挙動は一切なかった。現代のクルマを運転する場合よりも注意しなくてはならない点があるとすれば、はやめのブレーキングくらいか。タイヤとブレーキの性能は低いし、ABSもない。

とはいえ、丁寧な操作に気を配っていれば、特別な操作もコツも不要で、フツーに運転できた。フツーなのに楽しいのはなぜか。きっと普段よりも運転という行為に深く関わり、注意深く認知、判断、操作をするからだろう。僕がいなければ……と、思えるのがよいのではないだろうか。仕事柄、僕がいなくても目的地に着いてしまいそうな現代のクルマに接する機会が多いからよけいにそう思えるのかもしれない。

ただし所有となれば、やや事情も変わってくる。ステアリングやウインドウにアシストがなく、マニュアル・トランスミッションで、キーレスエントリーなんかもないと、たまに乗るのはよいが、年中こればっかりとなると不便だ。

ETCは装着されていたし、カーナビについてもiPhoneをどこかに固定すればよいが、アシスト系装備は後付けできないから辛い。ボルボといえども衝突時の安全性も気になる。そうなるとできればもう1台別に現代の車両を持っていたほうがよさそうだ。

くわえて、こういうクルマを所有して楽しむには、まず素性のよいベース車両を見つけ、信頼できるショップを見つけ、コストと時間をかけてレストアし、受け取ってからもメインテナンスに気を配り続けなくてはならない。約70年前に設計され、約50年前に製造された個体を万全な状態に保とうというのだから当然だ。

いちばん苦労するのは、あれこれ相談できる “詳しい人”と知り合いになることかもしれない。

その点、ボルボのクラシックガレージがあれば、ベースを探してレストアするという部分に関してはワンストップですむ。またガレージがあらかじめベースを見つけてレストアし、商品化もするので、仕上がった個体を入手するところから始めてもよい。ヒストリックカーを楽しむハードルを下げるよい取り組みだ。

クラシックガレージの責任者を務める阿部昭男氏によると、本国のボルボが過去製品の再生パーツをつくり続けているおかげで、主要パーツの入手に困らないという。また、何が何でもオリジナルにこだわるというのではなく、著しく雰囲気を壊すものでない限り、注文した人の望みに柔軟に応じ、新車当時にはなかった仕様に仕立てるのもいとわないのがガレージの方針という。

ちなみにクラシックガレージは、本国の指示で始まった取り組みではなく、トヨタ、ファーストリテイリング、日産を経てボルボ・カー・ジャパンに入社した木村隆之社長のオリジナル施策だ。

社長就任以来、同社の販売台数を順調に伸ばすだけでなく、輸入車として初めて2年連続で日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、やることなすこと大当たりのイケイケ木村社長であるが、ヒストリック・ボルボを愛し、自ら「P1800」を乗りまわすカーガイでもある。設立の理由は案外自分がヒストリックボルボを次々と楽しみたいから? 今度取材してみよう。

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