第2世代GT-Rに流用可能なR35純正部品とは
第2世代GT-Rの最終モデルであるBNR34の生産終了から18年。BNR32の鮮烈なデビューからはすでに32年が経過している。それほど時間が経っているのに第2世代の人気は少しも衰えず、ますます勢いを加速させる。当時、久々に復活したGT-Rはモータースポーツを強烈に意識した硬派な作り込みであり、そこに多くのクルマ好きが魅了されて現在に至る。 魅力に大きく貢献しているのはRB26DETTの存在だ。「名機」と呼ぶのに相応しいエンジンであり、その素性の良さからモータースポーツばかりでなく、チューニングの分野でも大活躍してきた。 とは言えエンジンの開発は30年以上も前に行われているので、いくら名機と言えども現在の目まぐるしい技術の進歩には追いつけない。最新のエンジンと比較するとどうしても見劣りする部分が目につく。 そんな状況を打破するために今でもアフターパーツが充実しているが、より信頼性が高く、性能的にも優れたR35用の純正部品の流用という手法がGT-Rを愛してやまないユーザーに注目されている。 純正品と言えども対応馬力の高いR35パーツは第2世代のGT-Rにしてみれば、高性能なチューニングパーツ的存在だ。
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R35から流用可能な純正部品:エアフロメーター
まずはエアフロメーター。RB26DETTの純正エアフロのパイプ径は70φで、それがふたつ使われていて400psを超えたぐらいまでの吸入空気量しか測れない。当時、それ以上の馬力に対応させるためにはZ32用の80φエアフロを使うことが主流だった。もともとZ32にはエアフロがひとつしか使われておらず、それを2基掛けしてより多くの空気量が測れるようにしていった。 こうすることで700ps近くまではエンジンを壊さずに制御できるが、きめ細かく快適にコントロールするには600psあたりが最適。より多くの空気量を稼ぐために大きなターボに換えた場合、アクセルをオフにすると途端にエンジンが調子を損ねてしまうのだ。アクセル全開からハーフに戻しただけでも不調が起こり、とても気になる。原因はターボからの吹き返しにエアフロのセンサーが反応してしまうことだ。最悪はエンジンストールを引き起こす。 それを嫌ってコンピュータをフルコンに換えてエアフロを取り除いたDジェトロ制御にするアプローチが人気を集めた。こうすればターボからの吹返しの影響を受けずに済む。そればかりかエアフロを使わないので、理論的には何馬力でも対応できるといったメリットもある。 しかしDジェトロは圧力で空気量を予測するので、エアフロを使って実際の吸入空気量を測定しているいるLジェトロよりもセッティングの難易度が高く時間を要する。 そんなときに注目されたのがR35のエアフロだ。新しいだけあって空気量の測定精度が高く、反応速度も機敏。それでいて耐久性も高まっている。 最大のポイントはエアクリーナー側から流れてくる空気だけを感知するように開発されていること。センサー部分にワンウエイ方式が採用されているのだ。これでDジェトロと同様にアクセルオフによるターボの吹き返しには反応しなくなった。 さらにセンサーとパイプが分割になっていることもポイントといえる。ノーマルと同等の70φのパイプにセットすれば約600psに対応。80φでは約800psで、90φにすれば1000psぐらいの空気量が測れてしまう。そんな大パワーでもLジェトロだからセッティングの時間が短縮できる。 注意点もある。分割式のセンサーをパイプの真ん中にセットしないと正しく測定できないことだ。パイプ内の流速はどこでも同じではなく外側にいくほど速くなる。それで中心部分で計測するようにしている。 しかし90φで使う場合は中心までの距離が伸びるので位置合わせが難しくなってしまう。ふたつのエアフロセンサーの装着した位置がズレてしまうと正確な空気量が測定できず、セッティングに支障をきたしてしまう。
R35から流用可能な純正部品:インジェクター
そしてインジェクター。パワーアップを図るためにターボを交換して、増えた風量に対応させるためにR35用のエアフロを使ってもそれだけでは力不足。インジェクターがノーマルのままでは容量が足りないので狙ったパワーは得られない。ノーマルインジェクターは440cc。これだと400psを超えたぐらいでフル噴射になる。R35のインジェクターは570ccで550psオーバーでも難なく対応できる。 もちろん昔から大容量のインジェクターはあった。しかし燃料が上手く霧状にならないものも少なくない。容量が増えるほどその傾向が顕著に現れてカブりやすくなってしまう。 一方、R35用は霧化が断然綺麗に行われる。その効果で燃料がすこぶる燃えやすくなり燃焼効率が上がり、レスポンスや燃費が向上。さらには低速域でのトルクアップまでが実現できる。燃料の噴射口を12も設定したことは伊達じゃない。 ちなみにRB26用のインジェクターは低抵抗タイプでR35用は高抵抗タイプ。だからR35のインジェクターからは抵抗を取り除く加工が必要になる。 さらにRB26用と比べてR35用は、指示を受けて実際に燃料が出るまでの無効噴射時間が長いので、その特性に合わせてコンピュータでセッティングしないとメリットは生かしきれない。 形状的にRB26用と比べると、とてもスマートになったR35用インジェクターは装着には専用のカラーが必要になる。
R35から流用可能な純正部品:イグニッションコイル
さらにイグニッションコイル。ハイパワー化に伴い、空気も燃料もたっぷりと取り込んだ状態はとても火が付きにくい。そんな失火しやすい混合気には強い火花で挑むのが一番。R35用のイグニッションコイルはRB26用に比べてより強力な火花が供給できる。 電流の量を決める通電時間をクルマの仕様に合わせて変えれば、さらに点火の頼もしさが倍増する。 R35コイルの流用も裏技だが、点火系にはさらなる裏技も存在する。かなりハードなチューニングを施してR35用よりも、もっと強力な火花が欲しいというような少数派ユーザー向けの情報だ。 使うイグニッションコイルはBNR32からBCNR33前期に採用されていたもの。このタイプはイグナイターがイグニッションコイル本体には装着していなくて外付けされている。本来は外付けされた大きなイグナイターひとつが各気筒の6個のイグニッションコイルを担当しているが、そうせずに負担を減らして効率を上げるためにRB20DE用の外付けタイプながら小ぶりなイグナイターを贅沢にも各イグニッションコイルにそれぞれセットして使う。こうすれば手間はかかるが効果は絶大だ。R35用はイグニッションコイルとイグナイターが一体なのでこの手法は使えない。
R35から流用可能な純正部品:ブレーキ
エンジン系以外では、ブレーキシステムの流用がある。BNR32の純正はフロント側が4ポットキャリパーでローターは296φ。リヤは2ポットキャリパーでローターは297φ。第2世代のブレンボだとフロントが4ポットで324φ。リヤは2ポッドで300φ。 それに対してR35用は前期モデルでフロントは6ポッドで380φ。リヤは4ポッドで380φ。その差は歴然だ。 しかし気にすべきポイントもある。R32やR33に装着した場合はサイズアップしたキャリパーにマスターシリンダーの容量が追いつかずにブレーキング時にペダルがイメージ以上に奥に行ってからキャリパーが反応する。このフィーリングはいただけない。小気味良いタッチを味わうには容量の大きなR34用の純正マスターシリンダーに交換することが大前提だ。 それとリヤ側に設けられているサイドブレーキ用のドラム部分も大き過ぎて、サイドブレーキのレバーを目一杯引いても効きにくくなってしまう。だからドラムを小さくする加工も必要になる。 頭に入れておきたいのがブレーキ流用後のホイール選びだ。大きくなったブレーキには18インチが最低条件でありであり、それでも履けないホイールも出てきてしまう。ビッグキャリパーに合わせて内側の逃げを考えた形状のものでないとクリアランスが確保できずに入らない。
まとめ:単純に装着すればOKではないがメリットは十分ある
というようにR35流用はどれも単純に付け換えて終了、とはいかないものばかりだ。しかし工夫しなければいけないからこそ効果も高いという考え方もある。作業はGT-Rのチューニングに精通しているプロショップで行なって、メリットを存分に引き出してほしい。
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