2020年6月20日、トヨタハリアーは現行型である4代目にバトンタッチした。他車種はどんどん海外向けに設計した仕様と共通化されてしまうなか、日本国内向けに開発された貴重な存在だ。
4代目から改めて海外展開されるというが、あくまでも日本向けに開発したという点は、3代目からブレていないようだ。今回はこのハリアーについて、好調な理由と「いいポジション」に就いていることを解説する。
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文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ
■これぞ本当の日本車! ハリアーはいいポジションのクルマなのか?
今は日本国内、海外ともに、SUVの売れゆきが好調だ。国内の場合、小型/普通乗用車に占めるSUV比率は2010年頃に約10%だったが、2021年には30%に達した。ステーションワゴンやセダンの売れゆきが下がる代わりにSUVが増えた。そのために今の販売規模は、人気のカテゴリーとされるミニバンと同等だ。
そこで、SUVの販売ランキングを直近のデータで見ると、1位がヤリスクロス(ヤリスやGRヤリスを除く)、2位は2021年9月に登場した新型車のカローラクロス、3位はライズ、4位はハリアーであった。
いったん、レクサスRXとしてなくなりそうになったが、日本市場の熱い要望に応えて存続したハリアー。写真は4代目だ
SUVの1~3位は、売れ筋価格帯が300万円以下の比較的コンパクトな車種だが、4位のハリアーは、340~450万円が中心の上級車種だ。新型コロナウイルスの影響で生産が滞るなか、ハリアーは2021年に7万4575台(1カ月平均で約6200台)を登録した。価格が約半分のコンパクトなライズに迫る売れゆきだった。
そして現行ハリアーは、海外ではヴェンザの名称で売られ、2021年には北米で6万台以上を販売した。トヨタの北米販売1位は、2021年に40万台を上回ったRAV4で、ハリアーはそこまで多くないが、堅調に売られている。
■日本市場のために設計したから日本で人気に
国内でハリアーが好調なのは、内外装のデザイン、居住性、乗り心地などが、日本のユーザーの好みに合うからだ。外観はフロントマスクなどを緻密に仕上げて存在感を強めたが、過剰に誇示する印象はない。適度な抑制も利かせた。
内装はインパネなどの各部に合成皮革が使われ、ステッチ(縫い目)も施した。装飾にはサテンメッキなども用いられ、340~450万円という価格以上に質感が高い。
落ち着いた内装。センターコンソール表皮は乗馬の鞍をイメージしたとか。ハイブリッド仕様にはコンセント(AC100V/1500W)を設定し、車内で家庭用の電化製品が使用できる
乗り心地は、19インチタイヤ装着車は時速40km以下で少し硬いが、段差を通過した時の突き上げ感は小さい。今のSUVは、走行安定性を向上させて見栄えを重視する扁平率の低いタイヤを装着するため、乗り心地が全般的に硬い。その点でハリアーは、快適な部類に入る。
エンジンは直列4気筒2Lの動力性能が少し足りないが、遮音性能は高く、ノイズも耳障りに感じない。販売総数の45%を占めるハイブリッドは、モーター駆動の併用によって加速が滑らかで、ノイズはさらに小さい。WLTCモード燃費は22.3km/Lだから、ノーマルエンジンに比べて燃料代を31%節約できる。価格はノーマルエンジンに比べて59万円高いが、優れた質感と経済性を併せ持つ。
■「効率の高い」クルマ作り
ハリアーは上質な内外装と乗り心地に加えて実用性も高い。身長170cmの大人4名が乗車した時に、後席に座る同乗者の膝先には握りコブシがふたつ収まる。特別に広いわけではないが、各部が上質だから、4名で乗車して快適に移動できる。荷室面積は充分に広く、リアゲートの開口部もワイドだから、荷物を出し入れしやすい。
ハリアーのボディサイズは、全長が4740mm、全幅は1855mmだから、日本で売られるSUVでは中心的な大きさだ。世界的に見れば、コンパクトな部類に入る。
つまりハリアーは、運転しやすいサイズのボディに、上質なデザイン、快適な居住性と乗り心地、充分な積載性などを凝縮して人気を高めた。いい換えればハリアーは、さまざまな意味で効率が優れている。
運転のしやすいボディサイズと広い室内、充分な動力性能と低燃費を兼ね備えたハイブリッドなど、二律背反の要素を両立させる高効率が特徴だ。
そしてこの優れた効率は、ハリアーにかぎらず、日本車全般に通じる商品特性だ。最もわかりやすいのは軽自動車。代表的なN-BOXは、全長が3400mm、全幅は1480mmの小さなボディに、コンパクトカーを超える広い室内を備える。4名が快適に乗車できて、荷物も積みやすい。
しかもN-BOXは、インパネなどの内装もコンパクトカーと同等に上質で、ノイズは小さく乗り心地も快適だ。高効率だから「これで充分」と満足できる。
コンパクトカーのノートオーラも、ボディサイズのわりに車内が広く、上質なクルマ作りを行った。同様の流れがハリアーまで繋がっている。
■「日本らしい日本車」は海外でも人気
N-BOXとハリアーでは、商品自体は大きく異なるが、クルマ作りを支える根本的な考え方、「漠然とボディやメカニズムを大きくしないこと」では共通している。N-BOXもハリアーも、サイズを削り、密度の濃いクルマ作りを実践している。
だからこそハリアーでは「サイズや価格のわりにいいクルマに乗っている」という実感が湧く。知恵を絞って開発/生産された「頭のよさそうなクルマ」という印象も受ける。この特徴には、日本のユーザーに向けた思いが濃厚に込められ、ハリアーではそこが海外のユーザーからも共感を得た。
トヨタをはじめとする今の日本メーカーは、世界各国でクルマを販売しているから「日本で買えない日本車」も多い。しかし、それが本当の日本車と呼べるのか。国内市場に置き換えると、ドイツでは売っていない日本とアジア向けのメルセデスベンツやBMWが輸入されたとして、それを欲しいと思えるのか。
■開発の流れの変化が背景にある
日本車の過去を振り返ると、1970年代前半のオイルショックをきっかけに、北米で売れゆきを伸ばした。1980年代には貿易不均衡が問題になり、日本メーカーは貿易摩擦を解消するために、次々と現地生産の工場を立ち上げた。
ただし、この時点では、大半の北米仕様が日本向けの5ナンバー車をベースに開発され、日本国内向けのクルマ作りが高く評価されていた。
それが1990年代に入ると、日本メーカーの海外販売台数が、国内を上回るようになった。1989年の税制改訂で3ナンバー車の不利が撤廃され、日本メーカーが海外をターゲットに3ナンバー車を開発して、国内市場へ流用するようになった影響も大きい。
その結果、海外向けになったセダンは国内での売れゆきを急速に落とし、ほぼ同時に日本向けに開発されたミニバンが販売台数を増やした。1998年には軽自動車も今と同じ規格に変更されて売れゆきを伸ばす。そのために国内と海外では、完全に異なる車種体系ができ上がった。
■変わらないことで「いいポジションのクルマ」へ
この状況が進んだなかで現行ハリアーは、先代型と同様に国内市場を意識した開発をしながら、ヴェンザとして海外でも販売した。それが相応に成功したわけだ。
日本向けの車両を海外で売るのは、40年前なら当たり前の話だったが、現行ハリアーの開発者は「日本のモノ作りが果たして海外に通じるのか? 現行ハリアー/ヴェンザは、そのチャレンジだった」と振り返る。40年前の当たり前が、今はチャレンジに変わった。
自動車は日本の経済を支える世界的な基幹産業だから、本当の日本車は、日本と海外の両方で好調に売られるクルマだろう。国内で販売されるヴォクシー&ノアも、北米が圧倒的に多いカムリも、40年前とは違う日本車だ。その意味で現行ハリアーは、昔から変わらない日本車の伝統を受け継ぐ主役なのかもしれない。
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