マツダの大本命SUV「CX-30」の実力や如何に!?
2019年10月24日、マツダはCX-30を国内発売。マツダ3に続く新世代モデルの第二弾であり、全高を抑えたトレンドのクロスオーバーとあって、マツダ3より販売面では期待される存在。いや、昨今苦戦気味のマツダとしては大本命と位置付けるモデルと言っても過言ではない。
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ここ最近のマツダ車の例に漏れず、CX-30もスタイリッシュな外観を持つが、いっぽう中身はどうなのか? 前段として新世代モデル第一弾のマツダ3を振り返りつつ、乗ってわかったCX-30の実力を、自動車ジャーナリストの鈴木直也氏が解説する。
文:鈴木直也
写真:平野陽、編集部
ベストカー 2019年12月10日号
【画像ギャラリー】中も外も国産SUV随一の美しさ!? 新型CX-30を大解剖
CX-30は第二弾!新世代第一弾のマツダ3はそもそもどう評価されている?
新型CX-30。価格帯は239万2500(20S・2WD)~371万3600円(X L Package・4WD)
SKYACTIVの第2世代としてマツダ3が誕生して以来、デザインのことを語る人が増えた。
これは、われわれジャーナリストのみならず、一般のユーザーも同様。特にキャラクターラインを排した特徴的なボディサイド造形などは、クルマ好きが集まってマツダ3のデザインを語る時には必ず話題になるポイント。最近の言葉でいえば、マツダのデザインは「バズっている」のだ。
これは、基本的に凄くいいことだと思う。この流れに乗って、最近はメディアでも現役/OB問わず自動車デザイナーの発言も増えた。
かつてベストカーでは故・前澤義雄さんと清水草一さんの「デザイン水掛け論」が人気だったが、あの企画の先見性にようやく世間が追いついてきた感がある。
2019年5月発売のマツダ3。価格帯は222万1389(15S・2WD)~368万8463円(X Burgundy Selection・4WD)
で、最近よくメディアで語られるマツダ3のデザイン論だが、ボクの見るところデザインの“プロ”に評判がいい。
さまざまな制約と日々戦っている自動車メーカーのデザイナーにとって、マツダ3はデザイナーの思いがストレートに表現された会心作という評価。デザインに詳しい人ほど「よくやった!」とマツダ3のデザインに喝采を送っている。
デザイン関係の人はよく「クルマのデザインは都市の景観の一部となる公共物だ」なんてことを言うが、その言葉の裏には「売れるからという理由でアグリーなデザインを採用していいのか?」という不満がある。
そういう意味では、マツダ3は「営業や開発の干渉に負けず、デザイナーがよく頑張った」と納得できるクルマなのだ。
しかし、デザインについては大いにバズったし、専門家の評価も絶賛のマツダ3だが、販売面ではその高い評価が売れゆきに結びついていないのが現実だ。
直近では国内販売も7500台を超えて関係者も愁眉(しゅうび)を開いた感はあるが、北米市場では依然苦戦中。当のマツダにとってはまだ満足のゆく販売実績を上げているとは言い難い。
マツダ3とどう違う? CX-30の魅力はわかりやすいキャラと格好良さ
CX-30のサイズは全長4395×全幅1795×全高1540mm。一般的な立体駐車場にも収まる全高に抑えた“背の低いSUV”は、スバル XVを筆頭に人気の高いジャンルだ
さて、前置きが長くなって申し訳ないが、そこでCX-30の登場となるわけだ。
CX-30は一見してわかるとおり、マツダ3をベースとしたSUVバージョンだ。
ホイールベースがマツダ3より70mm短縮されて2655mmとなっているが、エンジン/トランスミッションやプラットフォーム/サスペンションなどは完全に共通。もちろん、デザインの流れについてもマツダ3と同様に、流麗な曲面美が売り物だ。
では何が違うのかといえば、ざっくりいえば「キャラクター」だと思う。
これにはふたつの意味があって、表面的にはSUVという「今の売れセン車種」というマーケティング上のキャラ。販売のテコ入れをするには、マツダ3よりCX-30のほうが明らかに売りやすい。
もうひとつ、これは筆者の個人的な見解なのだが、マツダ3(特にハッチバック)は、アート性が強すぎて息苦しいのに対して、CX-30はキャラがユーザー寄りでわかりやすい安心感がある。
下世話な表現だが、筆者が言いたいことをもっと的確にあらわす言葉を探すと、「デザイナーがイキってる」、あるいは「意識高い系」なのがマツダ3。デザインは素晴らしいものの、300万円クラスのクルマでそこまでデザインを攻めるのは、正直ちょっと気恥ずかしさを感じるのだ。
その点、CX-30のキャラはもっとシンプルで、流行のSUVのなかでも一番格好良いクルマ。依然として価格にやや割高感はあるものの、いろんな理屈抜きに「買ってみたい!」と思わせる魅力がある。筆者のヤマ勘だが、売れゆきはドカンと急上昇するんじゃないかと思う。
外見は抜群のCX-30だが中身は「良いけど普通」??
写真はSKYACTIV-G 2.0搭載車。CX-30のパワーユニットは、この2Lガソリンと1.8Lディーゼルターボエンジンの2タイプに加えて、SKYACTIV-Xも2020年1月以降に追加予定
ただし、デザインは素直に格好良いと評価できるCX-30だが、では「クルマとしてどうよ?」と問われると、マツダ3の時と同じ物足りなさを報告せざるを得ない。
今回は2Lガソリンと1.8Lディーゼル両方に試乗したが、どちらもよくできてはいるが、「スゲー!」という感動やクラストップといった勲章がない。
内外装デザインについては誰が見ても「渾身の傑作」というメッセージがビンビン伝わってくるのだが、それに比べると走りはいたって普通なのだ。
ちなみに、ライバルをRAV4と想定してスペックを比較すると、2Lガソリンのスペックは、CX-30が156ps/20.3kgm、WLTCモード燃費15.4km/Lに対して、RAV4は171ps/21.1kgm、同15.8km/L。
燃費勝負のディーゼルは116ps/27.5kgmで燃費19.2km/Lに対して、RAV4ハイブリッドは178ps/22.5kgmで同20.6km/L。
まぁ、このセグメントのなかではむしろRAV4がダントツで、CX-30もアベレージ超えの立派な数字ではあるのだが、惜しくもトップを捉えきれていないのだ。
マツダの救世主だからこそ「継続した進化」に期待
写真はディーゼルエンジンのSKYACTIV-D 1.8搭載車。WLTCモード燃費は2WD車で19.2km/L、4WD車で18.4km/Lとなる
シャシー性能についてもしかり。以前マツダ3のインプレッションで指摘したのと同様、操舵フィールや乗り心地の質感が今ひとつで、決して悪くはないのだが、デザインから期待されるほど「良い物感」がない。
マツダの開発陣が言う「トーションビームでもマルチリンク並みの性能が出せる」という主張には、現状のレベルでは、ちょっと賛同することはできない。
マツダファンを心配させた売れゆきについては、CX-30の登場によってさらなる上昇基調に乗るのは確実だが、中身(とりわけシャシー)は、さらに継続した進化を期待したい。
これが、今回CX-30に初試乗した筆者の率直なインプレッションでございます。
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