電気自動車(EV)に街中で遭遇する機会もなんだか増えてきた。静かで加速もいい、そして環境にも優しい。そんなクリーンなイメージのあるEVだが一番のネックはその航続距離だったりする。
充電設備も増えたもののまだ少なく、急速充電でも30分以上の時間を費やす必要があるなど、なかなか小難しい面もある。しかし!! ここにきて大型トラックにもEVが続々登場しているという。
トラックにEV、なんだか矛盾している気もするが、EVトラック登場の理由、そして今後に迫ります。
文:国沢光宏/写真:ベストカー編集部
ベストカー2018年6月10日号
■実は日本のトラックはEVがピッタリな環境が豊富だった!?
ここにきて、トラックメーカーが電気で走るEVトラックの開発に注力している。例えば日本で三菱ふそうと関係の深いメルセデスは、「2021年からアクトロスのEVトラック『eアクトロス』を販売する」と発表。
三菱ふそうも『eキャンター』という中型EVトラックを開発し、すでに発売している。テスラのEVトレーラーヘッド『セミ』についちゃ実現性を含めよくわからないけれど、売るといってます。そのほか、ボルボも中型のEVトラックを開発中と公表した。
eキャンターは世界初の量産EVトラックで、車両総重量は7.5トン、1時間(チャデモ方式急速充電)/11時間(交流200V)の充電で航続距離100km以上、最高速度80km/hを実現。モーター(最大出力175ps、最大トルク42.8kgm)と、360V・13.8kWhのメルセデスベンツ製リチウムイオン電池6個を車体下部に搭載している
大ざっぱなスペックを調べてみたら、大型トラックのeアクトロスは、170psのモーターを2つ搭載。480kWhという新型リーフ12台分の大容量リチウムイオン電池を搭載し、満充電時の航続距離200kmとなっている。
eアクトロスは車両総重量は18~25トンで、最大積載量は11.5トン。240kWhのリチウムイオン電池を2個搭載しており、航続距離は200km。アクスルは、アーバンeトラックと同様のものを採用
eキャンターは175psのモーターひとつ。新型リーフ2台分に相当する83kWhのリチウムイオン電池で航続距離100kmとのこと。前者は中距離の輸送業務を想定。後者が宅配便など短距離移動というコンセプトだ。
トラックといっても実際の運用には様々なタイプがある。一晩に1000kmも走るような長距離トラックだと航続距離200kmは厳しいと思う。480kWhの電池を20分や30分で急速充電することなど物理的に難しいからだ。
けれどコンテナヤードから物流センターまで運ぶような用途ならまったく問題なし。東京港の海上コンテナ運びなど、待っている時間の方が長いほど。まさしくEVトラックにピッタリな使い方だ。
■日本勢と海外勢との温度差、そして今後の変化とは?
日本と海外の温度差は結構大きいように思う。最大の違いが燃料電池の存在。日本の場合、EVトラックよりずっと用途の広い燃料電池トラックを考えることだろう。実際、燃料電池バスは今や普通に走ってます。
大型トラックだってミライのスタックを2つ積むだけで310ps。3つ積めば456ps。重いトラックだって余裕で運行可能。価格的にも電池よりリーズナブルだと思っていい。燃料補給にかかる時間の短さも燃料電池の特徴だ。
しかも数年すれば燃料電池本体がディーゼルエンジンより安価になる。水素ステーションを高速道路のSAに設置することでインフラは構築できてしまう。海外も将来は燃料電池のほうに移行していくんじゃなかろうか。
ただし現在開発中の全固体電池に代表される、寿命も急速充電時間も充電容量も圧倒的に進化した新世代電池が出てくれば、EVトラックの行動半径は広がる。新しい技術だけに予想難しいです。
EVトラックが普及するとどうなるだろう? 当たり前ながら私たちの生活はほとんど変わらないと思う。もちろん「トラックのエンジン音がうるさい!」という悩みを抱えているような環境にいる人もいるだろう。
されど大半のケースは、エンジン音よりタイヤから出る騒音です。ウチもエンジン音は気にならず、通過時のタイヤノイズのみ聞こえる状況。運行コストだってディーゼルと大差ないレベルになるだろうから、経済的な影響だって少なかろう。
一番の効果が排気ガスの臭さから解放されること。都市部はすでに厳しい排気ガス対策を施行しており、東京に住んでいてディーゼルの排気臭に悩まされることはなくなった。
されど地方に行くと臭い排気ガスを出して走っているトラックを多数見かける。静かでクリーンな乗り物になればトラックのイメージはググッとよくなるんじゃなかろうか。人手不足といわれている運送業界にとって一番明るい効果になると思う。さて、トラックの次は建設機械か?
■現役トラックドライバーはこう考える!!(長野潤一氏)
運送会社がEVトラックを導入するには、まず、電池容量と航続距離の問題がある。大型トラックだと日産リーフの10倍くらいの電池容量が必要になるだろう。
車両価格は相当高価なものになるが、運送会社は初期コストに敏感なので、当面はトップ企業の実証実験になるだろう。中距離以上になると航続距離500kmは必要で、回生ブレーキもあまり使えないため実現可能性はまだ低いが、近距離の決まったルートを走る用途には向いていると思う。
いすゞのエルフEVはリチウムイオン電池を搭載し、航続距離は100km以上。冷凍機などの架装物も、バッテリーの電力で作動させることができる
いっぽう、中小型の宅配車などでは実用化の可能性は高いといえる。夜は車庫で動かないので、充電も計画的に行える。
EVトラックのドライバーにとってのメリットは? 暖気も不要で、冬でもすぐに走り出せる。排ガス臭くない。振動も少ない。オイル交換も不要。しかし、電池残量が気が気でならないだろう……。
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